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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
139/315

第139話 それでもいつも通り

 日曜の夜。


「こんばんれに~」


『こんばんれに~』


『おおお、レニちゃんだーっ!』


 小麦は真家レニとしていつもの配信を始める。

 普段の小麦もそこそこ軽い感じのギャルとして振る舞ってはいるものの、真家レニだとそれがさらにパワーアップしている。


『あれ、レニちゃん、ちょっと固くね?』


 だが、今日は少し違和感があったようだ。

 鋭いリスナーからは早速指摘が飛んでいる。


『挨拶だけで分かるとか怖い』


『どこで分かるんだよwwww』


 リスナーたちからもこの反応である。


「なにを言ってるのかなー? レニちゃんはいつもの通りだぞ、ぷんぷん」


 真家レニは怒ってみせている。


『ごめん、レニちゃん』


『謝れて偉い』


 先程疑問を呈していたリスナーが謝っていた。

 他のリスナーたちもノリがいいものだ。

 だが、この指摘は実はまったくもって的外れではなかった。

 実はこの時、真家レニこと芝山小麦はものすごく緊張していた。

 その理由は彼女の後ろで待機する母親のグラッサの存在だった。アバター配信者がどういうものか知りたいというので、いつもの配信風景を見せることになったのだ。


(ふえーん、さすがに今回は恨むよ、ルナち!)


 内心、泣きそうになっている小麦であった。


「本日の配信は、 『SILVER BULLET SOLDIER』、シルバレの実況プレイだよ」


『おっ、レニちゃんの十八番だ』


『レニちゃんといえばこれだよな』


 リスナーたちの食いつきがいい。

 実はこれを今日配信することになったきっかけも、母親であるグラッサだった。

 グラッサは異形を倒す退治屋として知られている人物だ。なので、その娘として得意とするゲームである『SILVER BULLET SOLDIER』の腕前を見せないわけにはいかなかったのだ。


「最近アップデートが来て、新しいクエストが追加されたみたいですね。それをやってみますよー?」


『初見プレイwww』


『これは楽しみでしかないぞww』


 真家レニが今回挑戦するのは、直近の三月末のアップデートで追加されたタイムアタッククエストだ。

 そこに表示されたクエストの内容を見て衝撃が広がっている。


『推 奨 人 数 : 3 名 以 上』


『マルチプレイ前提をソロでやるつもりかwww』


『レニちゃんならやってしまいそう』


 リスナーたちの反応は様々だが、総じてレニちゃん頭おかしいという感じだった。

 そう、これが真家レニなのだ。


 いざクエストを開始すると、ストーリーが展開される。


「あっちゃー、これ、初回飛ばせない会話だねぇ」


『これ、ネタバレ大丈夫なん?』


『でもなぁ、このゲーム、会話キャンセルして画面戻れないんよな』


『レニちゃん、とりあえず画面切り替えるといいよ』


 落ち着いていたリスナーからのアドバイスで、真家レニは一度画面を自分のアバターが映っている画面に戻す。


「いやー、びっくりしましたね。会話が終わったら、画面戻しますね」


『りょ』


『ネタバレ配慮できてえらい!』


 ゲーム画面から元に戻して5分後、ようやく画面が切り替わる。


「会話長い! じっくり読む派だから待たせちゃってごめんね!」


『5分て、結構たっぷりあったな』


『この程度、レニちゃんのプレイを見るためなら余裕で待てる!』


 どうにかこうにか、クエストが始まる。

 このクエストのBGMはいつもと違ってかなり緊張感の漂うものだった。

 クリーチャーの構成はいつもと変わらない雑魚99体とボス1体。推奨人数3名以上というのはだてではなく、出現場所やタイミングがかなりシビアなものになっていた。


『結構えげつない登場の仕方するな』


『数は変わらないのに、出現パターンや硬さがずいぶんと厳しく設定されてるよな』


『さすが3人以上って感じよな』


『それを難なく対処していくレニちゃんよwwwww』


 リスナーたちも驚く雑魚敵の猛攻にも、真家レニはまったく動じていなかった。むしろ、そういう戦いだからこそ燃えているのかもしれない。

 さすが退治屋の娘といった対応力の高さである。


『うっそだろ。これ初見とか信じられないぞ』


『さすがにノーミスとはいかなかったが、それでもほぼノーミスじゃん』


『【悲報】マルチプレイクエスト、レニちゃんにソロ突破される』


 リスナーたちからは驚愕と称賛の嵐だった。

 なにせ、マルチプレイ推奨クエストを初見ほぼノーミスクリアしてしまったのだから。

 さすがは『SILVER BULLET SOLDIER』の廃人プレイヤー真家レニなのである。


「うん、いい感じの緊張が保てた。このくらいの難易度ならいくらでもどんと来いって感じだよ」


『う~ん、これはあたおかだ』


『平常運転』


『高難易度ほど燃えるアバ信、真家レニ』


 リスナーたちからの反応も上々。

 これを見て、真家レニは後ろにいる自分の母親であるグラッサに向けて親指を立てて笑う。

 娘の満足そうな姿に、グラッサも親指を立てていた。


「それではみなさん、今日もレニちゃんの配信を見てくれてありがとう。また次の配信を楽しみにしててね。おつれに~」


『おつれにー』


『おつれに~』


 いつもの挨拶をして、この日の真家レニの配信は無事に終わったのだった。

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