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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
137/315

第137話 締切過ぎて

 それから五日後のこと。

 今日も満と風斗は一緒に登校をしている。


「締め切りすぎちゃったなぁ」


 学校に向かい始めてしばらくすると、満はこう切り出した。


「ああ、そうか。今日は4月11日でアバ信コンテストの締め切りすぎちまったんだよな」


「うん、昨夜の23時59分で締め切られたよ。ちなみに僕は動画一本を出したよ」


「そうか、無事に出せたんだな。で、結局どんな動画を出したんだ、満」


 アバター配信者コンテストの応募締切が昨夜だったことを、風斗は今さらながらに満の言葉で思い出していた。

 満に確認すれば動画を一本出したとのことだっただが、その内容までは答えてくれない。

 満はそっと唇にピンと立てた人差し指を当てていた。


「内緒。こういうのは内緒にしておくものでしょ?」


「まあ、確かにそうだな。一次選考突破できるといいな、満」


「うん、そうだね。ただ、僕が通ったとしてもそれはほとんど世貴兄さんの力だからなぁ。その時は僕が喜んでいいのかちょっと考えちゃうな」


 風斗に言われた満は、実に遠慮気味に答えている。

 アバター配信者をしているとはいっても、満の素の性格はどちらかといえば控えめなのだ。


「まあいいんじゃねえのかな。世貴にぃにしても羽美ねぇにしても、いとこの俺より満の方を弟のようにかわいがってんだからよ。まったく、血縁関係のある俺よりってどういうことなんだよな」


 風斗は笑ってはいるものの、どこか満に嫉妬しているようだった。


「うう、ごめんね、風斗」


「うわっばかっ、謝んじゃねえよ。俺はまったくそんな気はないからな」


 上目遣いで謝ってくる満に対して、風斗は慌てた反応を見せている。その風斗の慌て具合に、満はびっくりである。


「とりあえず、応募は締め切られたんだから、結果待ちだな」


「うん、そうだね。結構長く待たされるけど、ゆったりとした気持ちで構えることにしておくよ」


 アバター配信者コンテストの話を打ち切った二人は、残りは適当に話をしながら学校にたどり着いた。

 上履きに履き替えたのはいいものの、二年生になって二人は別々のクラスだ。

 ルナの状態であるならクラスは一緒なのだが、今日の満は男のまま。つまり、香織と同じクラスというわけである。


「それじゃ、また昼休みにでもな」


「うん、それじゃね、風斗」


 二人は別れて、自分のクラスの中へと入っていったのだった。


 ―――


 その日の放課後、家に戻った満はいつものようにメールのチェックを始める。

 今日は火曜日なので満の配信はない。久々にゆっくりできる夜なのである。


(あっ、メールが来てる)


 チェックを始めた満は、早速とあるメールを発見する。それは世貴が用意してくれたサイトのメールだった。

 当然ながら早速中身を確認する。


『満くんへ


 アバター配信コンテストの締切は過ぎたね。満足のいく動画は撮れたかな?

 俺と羽美の二人で用意した渾身のアバターなんだ。一次くらいはわけないだろうけれど、世の中は広い。

 正直俺でも突破できるか分からない。なにせこういうコンテスト自体は初めてだからな。

 まあもし、無事に一次選考を抜けられたのなら、すぐにでも声を掛けてくれ、全力でやらせてもらう。

 それじゃ、楽しみに待ってる。


 世貴』


「もう、世貴兄さんってば……」


 あまりにも予想通りなことが書いてあったので、満はつい笑ってしまう。

 でも、そのおかげか満はちょっとばかり元気が出たようだった。


 いろいろとチェックをしていると、一階から満を呼ぶ声がする。

 最初は気のせいかなと思った満だったが、どうやら気のせいではなかった。


「なにー、お母さん」


 母親の呼ぶ声に反応して、部屋を出て尋ねる。


「買い物付き合ってちょうだい。今日はないんでしょ?」


 階段の下の母親からはそのように返ってきた。

 確かに配信日ではないし、新学期も始まったばかりで宿題もろくにない。ついでにいえばアバター配信コンテストの締切も過ぎて、精神的にも一度落ち着いたところだ。


「分かった。すぐに準備するよ」


 断る理由もなかったので、満は買い物に付き合うことにした。

 母親との買い物は、ちょうどいい気分転換になった。


「いや、付き合ってくれてありがとうね。今日は特売日だし、数に制限がたくさんあったからね」


「このくらいならお安い御用だよ。それに、僕自身にもメリットがあるし」


 満はにこにこと笑っている。

 それもそうだ。常日頃の買い物であり、大抵こういう時の購入品は食料品。育ち盛りでよく食べる満にとっては、恩恵が大きすぎるのだ。


「ふふっ、そうね。それじゃ、ついでだし夕食の準備も手伝ってちょうだい」


「ええ~。お母さん、実はそれが本命だったんじゃ?」


「ふふっ、バレたわね」


「やっぱりなんだ……」


 カマをかけてみたらやっぱりだったので、満は呆れたように笑っていた。

 まったくもうと思いながらも、満は母親といろいろと話しながら買い物を楽しんでいた。


 夕食の時間には父親も帰宅しており、今日の夕食も家族が揃っている。

 いろいろと特殊な状況に置かれている満ではあるものの、ごくごく普通な家族の時間に笑顔は絶えないのだった。

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