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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
134/318

第134話 配信前からお祭り騒ぎ

「はあ、疲れたぁ……」


 満は家に帰ってきていた。

 新年度を迎えたせいか、新入生に間違われてあちこちの部活から勧誘をされたのだ。

 一緒にいた風斗のおかげで全部断ることはできたものの、その際にもみくちゃにされかけたので疲れ切っているのである。


「三年生って、僕のこと意外と知らなかったんだな。ルナの姿の僕って、それなりに目立ってたと思うのにな」


 机に突っ伏して、盛大なため息をこぼす満であった。


 しばらくして気持ちの落ち着いた満は、制服から私服に着替える。

 さすがに今日は出かけるつもりもないので、母親に念押しされたスカートは遠慮してショートパンツに穿き替えた。そもそもは男の子なんだからという、ささやかな抵抗である。

 とはいえ、オーバーニーソックスを履いている時点でなんだかなというところはあるだろう。

 着替えて落ち着いたところで、パソコンを起動してあれこれチェックだ。

 相変わらず光月ルナの再生数は多い。週三回というペースを守っているからだろう。

 真家レニの目に留まって登録者数が爆発してからというもの、再生数が6ケタ余裕である。

 そのかいもあってか、母親が購入してきた女性用の服の代金はもとより、世貴と羽美が用意したパソコンを含めた一式装備の代金も余裕でペイできるまでになっていた。

 一度人気が爆発すると、どうにかして維持しようとうろたえるものだ。ところが、世貴が持てる技術でバックアップしてくるものだから、満はそっちに困惑するというもの。満は世貴に対して頭が上がらないといったところだ。

 ちなみに、女性用の服もどんどんと増えている。満はどうもそっちも成長しているらしいので、体形の変化に合わせて服をそろえ直さないといけない模様。

 こうなると満はますます困惑して、母親はやる気を出していた。


「はあ、こんなに買ってどうするんだろうとは思うけど、これだけ女性の時間が増えるとなんとなく分かってくるのが怖いなぁ……」


 ふと目を向けた自分のタンスの状況に、満は困った顔で笑っていた。

 タンスから視線をパソコンへと戻した満は、今度はSNSのチェックを始める。

 今日は曜日を考えると真家レニの配信はない。自分の配信の予定があるけれど、告知をするにはまだ早い。

 ひとまず、何か面白い情報がないかと流し見るようにしながらチェックをしていく。

 その最中、満は比較的新しい時間の投稿に目が留まる。


「あっ、これはVブロードキャストの投稿だ。えっとなになに……?」


 Vブロードキャスト社は、多くのアバター配信者を抱える配信会社だ。

 満もアバター配信者をしているので、気になる団体というわけである。風斗からもいわれているので、アカウントをフォローしているのだ。


『本日16時より、所属アバ信による合同配信を行います。

 時間は1時間を予定していますので、みなさまぜひともご覧になって下さい。

 #ブイキャス #アバ信』


 どうやら、所属しているアバター配信者が揃っての配信が行われるらしい。

 合同配信とはまた大きな話だ。

 ものすごく気になった満は、その1時間前にアラームをセットしたのだった。


 昼の3時になると、アラームよりも前に満はモニタの前に座っていた。相変わらずこういう配信になると早くから身構えてしまうものである。

 Vブロードキャストの配信は既に部屋がオープンしていて、満以外にもすでに20名ほどが待機していた。

 みんな気が早すぎませんかね。


『アバ信勢ぞろいってなんじゃろな』


『分からん。四期生がデビューしたばかりだけに、想像がまったくつかんぞ』


『おまいらはやすぎwwwww』


『オマエモナー』


 1時間前だというのに、コメント欄は既に少人数ながらお祭り状態だった。

 時間が経つにつれて、どんどんと同接の人数が増えていく。

 開始まで20分となった頃には、同接53万まで増えていた。

 さすがは最近勢いのあるVブロードキャストの配信といったところだろう。

 これだけ人数がいれば、コメント欄を目で追うのは不可能である。


『【真家レニ】にししし、ブイキャスの配信と聞いてレニちゃんも来たぞ』


『レニちゃんだ』


『アバ信あるところにレニちゃんだ!』


 真家レニの発言が見えるや否や、コメントのお祭り具合が一気に加速していた。

 さすがは人気の個人勢だ。その存在が現れた瞬間に、同接数とコメントの量が一気に増えていく。これがレニちゃん効果なのだ。


(レニちゃんも来ちゃったか。ここで僕までコメントしたら、もっとお祭りになっちゃうよね。うん、自重しよう)


 満はものすごい勢いで流れるコメント欄を眺めながら、悟ってしまっていた。

 そもそも、光月ルナの設定上はまだ活動できない時間なので、おとなしくしているつもりなのだが。

 そんなお祭りムードが最高潮に達する中、いよいよVブロードキャストによる配信が始まる時間を迎えた。

 所属するアバター配信者の多くが揃うという今回の配信、一体何が語られるのだろうか。

 満はもちろんだが、全視聴者が固唾をのむ中、その配信がいよいよ始まったのである。

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