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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
120/316

第120話 真家レニショック

「みなさま、おはようですわ。光月ルナでございます」


『おはよるな~』


『おはよるなー』


 満の配信が始まる。

 日中に不思議な女性には出会ったものの、その後は平和に香織とお出かけを済ませてきた。

 香織とのお出かけは思ったより楽しかったので、今日の満はすこぶる機嫌がいいようだ。ただひとつを除いて。


「そういえば、真家レニ様の活動休止は驚きましたわね」


『それは確かに』


『なになに、なにかあったのか?』


 満が話せば、リスナーたちが騒めいているのか、コメントに事情を聞こうとする文言が打ち込まれる。


「ええ。家庭の事情でしばらく配信をお休みなさるそうでして。僕はかなり落ち込んでおりますわ」


『はうあっ?!』


『家庭の事情ってなんだろな』


『家族に内緒とかそういう類じゃないかな』


『ああ、いるいる。家族に隠れてこそこそと配信しているのは、なにもアバ信に限ったことじゃないがな』


『家族に知られたか、知られたくなくて自粛か』


『どちらにしても俺らはショックに違いない』


 満と同じように、リスナーたちにも衝撃が走っているようだ。

 真家レニの配信は毎週水、金、日の夜9時からと決まって行われていた。それがすっぽりとなくなったのだから、それはもうショックが大きいというものだった。


「とはいえ、家庭の事情であるのならば、僕たちは受け入れるしかありませんわね。僕たちができることは、戻ってくることを信じて待つことだけですわ」


『せやな』


『これはルナちの言う通り』


 満がそう話せば、リスナーたちも一斉に賛同していた。

 本人の近くにいるわけではないので、経過を見守ることしかできないのである。


「では、しんみりした話題を引きずるわけにはいきませんので、アバ信コンテストのお話をしましょう」


『おお、待ってました』


『出す動画決まったん?』


「はい、結局先日撮った動画で挑戦することにしました。時間もファイルサイズもしっかり規定に収まっていますので、あとはサイトから申し込むだけですね」


『おお、楽しみだ』


『ルナちならきっといいところまでいけるはず』


 リスナーたちから応援の声がどんどんとコメントされる。


『まあ、俺が作った環境だからな』


『出たよ、ルナちのパパ』


『パパというのは確かにそうだけど、なんともむずがゆい響きだな』


 世貴が画面の向こうで笑っている姿が目に浮かんでくる。

 必ず満の配信を見ているのは、やっぱりモデラーとしてのプライドがあるからなのだろうか。


「ふふっ、ふふふっ」


『あ、ルナちが笑っとる』


『ルナちのツボに入ったか』


『これは拝み倒す ¥2,525』


『隙あらばスパチャwww』


 満が笑っただけでこれだ。まったくどれだけなのだろうか。


『おいおい、光月ルナに貢ぐのはいいが、俺のクロワとサンも忘れないでくれよな』


「はっ、そうでした。おいで、クロワ! サン!」


 世貴がいうやっかみで思い出した満は、ペットであるクロワとサンを召喚する。

 画面上に黒い光の円が現れて、そこから黒いもやが立ち上っていくとクロワとサンが出現する。


『相変わらずの変態技術や』


『召喚陣、初めて見たぞ』


『これもこだわったぞ。これでこそ、吸血鬼っていう演出だろう?』


『こだわりすぎだろwwww』


 まったくというものだ。吸血鬼のイメージ通りの召喚で、満もびっくりしている。


『しかし、クロワとサンは違和感がすごいけれど可愛いよなあ』


『なんで柴犬と三毛猫なのか分からん』


『仕方ないだろう、絵師の趣味だ』


『趣味なら仕方ないな!』


 あまりにもはっきりと言い切ってしまうため、リスナーたちは世貴の言い分を受け入れるしかなかった。

 この説得力、さすがは光月ルナのパパである。


「ええ、気にすることはありませんわ。可愛ければヨシです」


『ルナちがそういうのなら・・・』


『ルナちのいう通り』


 満が援護射撃をすれば、リスナーたちはあっさりと受け入れてしまっていた。なんというか、可愛いは正義なのである。

 真家レニのこと、アバター配信者コンテストのこと、クロワとサンのこと。あれこれと話し込んでいるとあっという間に時間が過ぎていってしまう。


「あら、もう10時になりそうですわね」


『おわ、ホンマや』


『はっや』


『時間溶けるの早くね?』


 時計を確認したリスナーたちの驚きのコメントが大量に流れていく。

 ただくっちゃべっていただけなのに一時間が経ってしまっていたのだから、本当に恐ろしいものだ。


「ちょうど話題も途切れましたので、今日はここで終わりと致しましょう」


 画面に向けてにこりと微笑むルナ。画面の奥ではクロワとサンがぐるぐると走り回っている。地味に情報量の多い画面である。


「それではみなさん、ごきげんよう」


『おつるな~』


『おつるなー』


 いつもの挨拶で、満は配信を終える。

 配信を終えた満は、椅子に座ったまま大きく背伸びをする。

 アバター配信者コンテストの話題を出したのは、正直失敗だったと思う満である。なにせ、どんな動画を撮ったのか喋りそうになってしまったのだから。

 おそらく世貴のスパチャがなければ喋っていただろう。実にうかつだった。


「はあ、疲れた。お昼は出かけていたし、今日はもう寝ようっと」


 今日はやけに疲れを感じているせいで、満はアーカイブは翌日に回してもう寝ることにしたのだった。

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