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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
115/315

第115話 春休みに入って

「おはようですわ、みなさま。光月ルナですわ」


 春休みに入り、満は予定通りに配信を始める。


『おはよるな~』


『おはよるなー』


 リスナーもいつものように挨拶を返してくれる。

 最近は女になる頻度が増えて困っているものの、こうやって配信をしてリスナーたちとやり取りをしていると、その悩みも忘れていられるというものだ。

 ちなみに、今日の満は男に戻っている。


「すっかり暖かくなりましたね。部屋の中をひんやりと保つのに苦労していますわ」


『分かるなぁ』


『おい、吸血鬼がおるぞ』


「あらあら、お仲間がいまして?」


『じょ、冗談っす ¥1,000』


 満が問い掛けると、リスナーから詫び銭が飛んでくる。


「まったく、そう気軽に投げないで頂けませんこと? 別に責めているわけではないのですから」


『ご、ごもっともっす』


『いいなぁ、ルナちに叱られて』


『うらやむことか?わかるけど』


『おまいらwww』


 リスナーは相変わらずの様子である。


『ルナち、アバ信コンテストの進捗はどう?』


 ふと、とあるリスナーからこんな質問が飛んできた。満はその質問をすかさず拾う。


「そうですわね。難しくて動画作成に難航しておりますわね。特に募集テーマがないということもありまして、どんな動画を作ればいいのか迷っていますわ」


『そうやろうなあ』


『テーマがないから簡単やろと思ったアバ信をことごとく返り討ちにしてきたからなぁ、あのコンテスト』


『俺のとこも、親せきが挑戦して挫折してたな』


 満が悩んでいる様子を見せると、リスナーたちからも同情する声や経験談が流れてきていた。

 知る人ぞ知るコンテストといった感じのようだった。


『そういえばルナち』


「なんでしょうか」


 ちらりと見えたコメントに満は反応する。


『なんだかいつもと感じが違う気がするけど、何かあった?』


 このコメントに満はドキリとする。

 今日の満は、というか昨日からか、少し気持ちが高揚していた。


「な、なんでもございませんわよ。僕はいつもの通りですわ。第一コンテストに向けて根を詰めておりますのに、どこに浮かれる要素なんてありますでしょうか」


『ルナち、それ墓穴wwww』


『浮かれてるなんて言ってないだろwww』


『自爆ktkr』


 満がうっかり喋った内容に、リスナーたちが一斉に反応している。

 確かにリスナーの指摘通りだ。様子が変だぞといっただけで、どういう内容かは言っていないのだから。


「むぅ、してやられましたわね。白状いたしますわ」


『wwww』


『ルナちは可愛いなあ』


 頭を押さえて首を左右に振る姿を見て、リスナーたち歓喜しているようである。なにわろてんねんである。


「実は、昨日は友人と一緒に出掛けてまいりましたの。その友人とは久しぶりでしたし、喜ぶ顔を見て僕もついつられてしましたのですわ」


『なるほ』


『友だちと楽しんできたのなら分かる』


 満の話に、リスナーたちは同意をするようなコメントを次々と打ち込んでいる。


『ルナちも友人がいて、ワイらも安心やで』


『親目線やめいwww』


『なんだろう、なんか目の前がぼやけてくる』


『っ目薬』


 なんだかよく分からないものの、リスナーたちが勝手に盛り上がっている。これには満も苦笑いをするしかなかった。


「とりあえず、昨日はそのような気分転換ができましたので、ひとまずお試しとしてひとつ動画を作ってみたのですわ。ただ、応募はまだしておりませんけれど」


『あー、分かる』


『そうそう、せっかく作ってもこれでいいのかって迷うもんな』


『お一人様一点限りの応募だから、慎重になるのはしゃーない』


 満の応募をしていないという話に、リスナーたちがものすごく共感している。

 こうして、アバター配信者コンテストについての話で、あっという間に40分が経ってしまっていた。


「さて、本日はそろそろお開きと致しましょうか」


『えらく時間経つの早いな』


『まだ10分くらいの感覚やで』


「あと二週間ですので、もう1本くらい動画を作って、知り合いの方にでも見て頂きますわ。僕としましては、一般の方にどれだけ受け入れられるのか試してみたいと思いますのでね」


 満がこのように言い切ると、コメントがぴたりとやんだ。


『ルナち、たとえ選考落ちしたとしてもワイらがおるで』


『そうそう』


『当たって砕けろだぞ、ルナち』


『レニちゃんも落ちとるんや、思い切っていったれ』


 すぐに励ましのコメントが流れていく。


『【真家レニ】最後にレニちゃんをダシに使うなーっ!』


『げげっ、レニちゃん?!』


『【真家レニ】せっかく最後まで黙ってようと思ってたのにー、激おこだぞ☆』


 真家レニの登場で、配信の雰囲気が一気に変わってしまった。

 満もリスナーたちも大笑いで、どこかどんよりとしかけた空気はどこかに吹き飛んでしまっていた。


「みなさま、本日はご視聴ありがとうございましたわ。では、ごきげんよう」


『おつるな~』


『おつるなー』


『【真家レニ】ルナち、ファイト☆』


『おつるな~』


 春休み一発目の配信は、どうにかこうにか和やかな雰囲気で終わることができた。


 締め切りまで二週間となったアバター配信コンテスト。

 どのような動画を審査に提出するか、時間の許す限り模索をしてみようと思う満なのであった。

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