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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
108/316

第108話 悩める日曜日

 配信の終わった翌日の日曜日。満は部屋でゆっくりしていた。

 気分転換に出かけようと思ったのだが、風斗が用事で誘えず、一人では出かける気になれなかったからだ。


(う~ん、どうしよう。何もする気になれないし、……アバ信コンテスト用の動画のネタでも考えようかな)


 部屋の中で転がっていても気分が沈むだけなので、満は体を起こしてパソコンを起動する。

 今は明るい時間なので、光月ルナとしては活動できない。自然と動画漁りになってしまう。

 PASSTREAMERの動画を漁っていた満だったが、突然スマートフォンが震える。


(うん、なんだろう……)


 スマートフォンの振動に気が付いた満は、動画を見る手を止めてスマートフォンに手を伸ばす。

 画面を確認すると、メール着信があったようだ。


「あっ、世貴兄さんからだ」


 差出人の名前を見て、ぴょんと背筋を伸ばす満。早速メールを確認する。


『満くんへ

 昨日の配信を見ていたよ

 アバ信コンテストへの参加は本気のようだな

 俺でよければ多少なりと協力しよう

 なんといっても、そのアバ信を作り上げたのは、俺と羽美の二人だからな

 困った時にはいつでもメールを送ってくれ、相談には乗るぞ

 健闘を祈る

 世貴』


 どうやら、配信を受けての内容を今頃になってメールを送ってきたらしい。

 とはいえ、実に心強い味方だ。世貴の心遣いに、満はつい笑顔を浮かべていた。

 このメールで俄然やる気が出た満は、どういうネタで勝負するのか改めて考え始めた。


「ダメだぁ~……。なにも出てこない」


 ところが、昼ご飯の時間を迎えてもまったく何のアイディアも出てこない。

 すっかり参ってしまったのか、満は机の上に突っ伏してしまっていた。


「はあ、もうお昼の時間か。ご飯にしようっと」


 モニタに表示された時間を確認した満は、大きなため息をつくと立ち上がって部屋を出ていった。


 食事を終えて戻ってきた満は、再びモニタの前で必死に考え始める。

 今日は配信のない日だし、月曜日提出予定の宿題はすべて済ませている。

 つまり何もやることはないので、真家レニの配信までの間はずっと考え込んでいられるのだ。

 考え詰まったところで、満はふとスマートフォンを手に取ってSNSに目をやる。何かアイディアが転がってないかと見てみることにしたのだ。

 そこで、気になるポストを見つける。


『Vブロードキャスト@公式

 鈴峰ぴょこらと黄花マイカの配信を16時より行います

 四期生の初々しい配信をお楽しみください

 #ブイキャス #アバ信 #鈴峰ぴょこら #黄花マイカ』


 Vブロードキャストの新人である四期生の配信だった。

 何気に今回は鈴峰ぴょこらはお披露目の日以来の配信だ。

 煮詰まっているので、気分転換に見てみようと満は考えた。

 迎えた16時。

 ヘッドギアをつけて、満は二人の配信を見るために準備をしている。

 さすがに黄花マイカの人気が出ているとあって、すでに6万人ほどが接続している。光月ルナの配信より人が多かった。


「みなさん、こんにちは。黄花マイカです」


「すごく久しぶり。鈴峰ぴょこらだよ」


 無難な挨拶を決める二人である。


『四期生のみの配信か』


『後の二人は先輩についてもらいながらの配信だったのにな』


『マイカちゃんがいるからかな』


 次々とコメントが流れていく。


『スパチャできねえっ!』


『まだデビュー一か月以内やぞwww』


『お前は俺かwww』


 どうやら二人に対してスパチャを投げようとしたリスナーがいたらしい。

 しかし、まだデビューからギリギリ一か月が経っていない。これまでは先輩たちがいたから投げられたのだが、新人同士では無理のようだった。


『くぅ・・・、ミミたそがいれば・・・』


『諦メロン』


 悔しがるリスナーに対して、配信する二人は苦笑いである。

 終始二人は何気ないトークを交わして配信は進行していく。デビューして間もないので、この進行は仕方ないだろう。

 ところが、特技の話になったところで様子が一変する。


「特技かぁ。それじゃ、あたしの特技、見てもらおうかな。えっと、大丈夫かな?」


『なんだなんだ』


『大丈夫って、何をする気だ?』


 リスナーたちが興味を持ったのか騒めき始める。


「許可が出たので、やってみる」


 次の瞬間だった。


『うおっ!』


『マジか?!』


 リスナーたちのどよめきのコメントが流れていく。

 それというのも、ぴょこらが突然バク宙を決めたのだ。バク転ならまだしも、バク宙である。

 配信を行うスタジオ内にはいろいろ機材があるだろうに、よく許可が下りたものである。


「運動神経はあるようなのよ」


『ウサギと猫の悪魔合体ならではやな』


『スパチャさせろおおおおっ!!!』


 どうやらリスナー受けはよかったようだ。

 しかし、こんなすごい特技を見せられた後では、マイカにすごい負担がのしかかる。


『マイカちゃんの趣味ってなんだろ』


『楽しみ』


 リスナーたちからの期待が膨らんでいく。


「ありゃ、やりすぎちゃったかな?」


 ぴょこらが心配するような声を出しながらも、表情は笑っていた。さすが小悪魔系である。

 しばらく沈黙が続いていたものの、マイカはきゅっと手を握りしめて前を見る。


「わ、私の趣味は、りょ、料理です」


「わおっ、意外。今度食べさせて~」


 料理と聞いた瞬間、ぴょこらは積極的にマイカに絡んでいく。


「ま、また今度ね。ほら、今日はちょっと時間が……ね?」


「しょうがないなぁ。貸し一回だよっ」


「えええっ?!」


『草』


『てえてえけど、さすがに草』


 笑っているリスナーが多いものの、ほんわかした雰囲気にリスナーたちは総じて満足しているようだった。

 こうしてぴょこらとマイカの配信は終わりを迎えたのだが、満は何かヒントをつかめたのだろうか。

 配信を見終わった満は、しばらくそのままモニタを眺め続けていたのだった。

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