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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
104/317

第104話 衝撃のDM

 バレンタイン以降ものんびりと過ごす満だったが、その週の金曜日、SNSのダイレクトメッセー時に新しいメッセージがあることに気が付いた。


「あれ、なんだろうかな、これ」


 気になった満は、ダイレクトメッセージを開く。

 表示されたメッセージを見た満は驚いていた。


「えっ、Vブロードキャスト社?! なんであそこから連絡が来るの?!」


 あまりの衝撃に、満は混乱してしまっていた。


(落ち着け、落ち着くんだ僕。何かの見間違いだ。僕になんて声がかかるわけないんだよ)


 満は目を閉じて呼吸を整える。

 思い切って目を開けてみるが、やっぱりそこにはメッセージが表示されていた。

 見間違いじゃないことを確認した満は、送られてきた内容を確認してみる。


「えっとなになに……」


 内容を確認した満は再度驚く。


「えっ、僕をVブロードキャストに招いて一緒に配信? いや、これは名誉ではあるけど、いいのかなぁ、部外者を入れちゃって……」


 書いてあった内容を確認した満は、強く疑ってしまう。

 なにせ、ど素人である自分を会社に招くと書いてあったのだから。しかも、一緒に配信をしたいとかどういうつもりなのか。

 満はその真意をつかみあぐねていた。

 とはいえ、自分だけでは決められない。ここは両親にも相談してみるべきだろう。

 満は早速、夕ご飯の際に両親に聞いてみることにした。


「お父さん、お母さん。ちょっと相談が……」


「どうしたのよ、満」


 満は食堂にやって来るなり、両親に向けて声をかける。食卓の準備をしていた母親がきょとんとした目で満を見ている。


「これを見てほしいんだ、これ」


「なになに」


 満がスマートフォンを見せると、母親が覗き込んでくる。


「あら、何かしらこれ」


「アバター配信者を抱える会社だよ。そんな会社からこんなDMが来たんだ」


「あらあら、それはすごいわね」


 慌てる満に対して、母親はまったく何が何だか分からないらしくて、反応に困っているようだった。


「ほう、すごいじゃないか、満。それで受けるのかい?」


「お父さん、それがそうもいかないんだよね」


 ひょっこりとお風呂から出てきた父親が顔を覗かせる。気楽そうな反応を見せる父親に、満は悩んでいるような返事をする。


「どうしてだい?」


「いや、アバター配信者っていうのは、中の人が分からないものなんだ。だから、こういう時は慎重になるものなんだよ。ましてや僕は中学一年生なんだ。向こうも知ればいろいろと問題が出ると思うんだよね」


「ああ、そういうことか。確かにそうだな……」


 満の訴えで、父親はようやく納得がいったようだった。


「それだったら、なんだっけか、満が好きなアバター配信者。一緒に配信したっていってだろ。その人の時のように遠隔参加っていうことはできないのかい?」


「う~ん、それは一応聞いてみるつもり。向こうの都合もあるだろうから、ダメっていわれたら断ろうかと思うよ」


「うむ、それの方が無難だな」


 話を終えた満は、食事を済ませると部屋に戻る。

 早速Vブロードキャストへと返信を送る。


『拝啓 Vブロードキャスト様

 お誘いは誠にありがとうございます

 せっかくのお誘いなのですが、そちらにお伺いしての配信をするのは厳しいかと思います

 つきましては、この度のお誘いは丁重にお断りさせて頂きたく思います

 貴社のご活躍をお祈りしております』


「これでよしっと」


 満は慣れない文章を打ち込んで、両親にも見てもらいながら何度も確認した上で送った。


「企業からのお誘いというのは嬉しいけれど、やっぱり満が高校生になるまではやめておいた方がいいわよね」


「まぁそうだな。早いというよりは、満の身の安全の方が優先だからな」


「ありがとう、お父さん、お母さん」


「なあに、親として当然のことだよ」


 父親はそういってきらりと歯を見せながら笑っていた。

 その姿には、つい満と母親は面白くて吹き出してしまっていた。


「さて、そろそろレニちゃんの配信だ。今日はどんな配信なんだろうな」


 両親が部屋を出ていき、一人になった満は背伸びをしながらパソコンを操作する。

 PASSTREAMERのページを開いて、真家レニのチャンネルを表示させる。

 これはある意味満のとってのルーティンである。どんなに落ち込んだ日でも、真家レニの配信を見ると元気になれるのだ。

 だからこそ、満にとっての憧れなのである。

 夜9時を迎えて、満は真家レニの配信をたっぷりと楽しんでいた。


「そうそう、前回の配信では伝え損ねたけど、パパにチョコを贈ったんだよ。そしたら、パパってば泣いて喜んでくれたんだ。へへっ、パパったらぐずっちゃって落ち着かせるの大変だったよ」


『親子仲がよくていいのう』


『うう、レニちゃんのパパになりたい・・・』


「というわけで、遅くなっちゃったけど、レニちゃんからのチョコを受け取るのだ!」


 そう言い放った真家レニは、満面の笑みでチョコレートを差し出す自分のイラストを描き始めた。

 相変わらず変なところから描き始める真家レニである。


「はいはい、こちらのイラストもいつも通りPAICHATに掲載しておきますね。SNSにも上げておきますので、お持ち帰りはそちらからどうぞ」


『チョコレートの供給助かる』


『家宝にするぞ』


「それじゃ、今日はここまで。おつれに~」


 真家レニの配信を見た満は、気持ちが軽くなった気がしたのだった。

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