第101話 ブイキャス恒例配信・中編
「こんばんは、みなさん。ブイキャス一期生の華樹ミミでございます」
「よう、待たせたな。同じく二期生の蒼龍タクミだ。今日はバレンタイン恒例の『ドキドキ☆クイズマッチ』をお送りするぜ」
『あれって恒例やったんか!』
『ああ、どれだけ全員が答えを合わせられるかっていうあれか』
『たとえ正解でなくても、回答者の正解が一致していればポイントになるってやつだ』
ブイキャスをよく知るリスナーたちが、今日のイベントの説明をしてくれる。
『このイベント、リスナーにも恩恵あるから、それなりに楽しみにしてる奴いるんだよな』
『公式SNSのポストをRPすれば、電子マネーが合計で5名様に当たるってやつだな』
『金額は各アバ信の獲得ポイントで変わるがな』
どうやら今日の配信は、リスナーたちへのチョコ代わりのバレンタインプレゼントになるらしい。
ミミたちが五名からといっていたのは、どうやらこのあたりも理由のようだ。
なるほど、五名を下回れば著しく一致率が悪くなる可能性があるので、つらいと言っていたのがよく分かる話だった。
「さあ、今夜俺たちと一緒にこのゲームに参加してくれるのは、次の三名だ!」
タクミが発言すると、バーンとシルエットが浮かび上がる。
『ちょっ、パピヨン様分かりやすすぎ』
『小さいのがよく分からんな』
『新人じゃね?』
『マイカちゃん?』
『でかいのは腐乱ケンだな』
リスナーたちのコメントがどんどんと流れていく。
「すごいですね。シルエットだけでみんな誰か当てていっちゃいますね」
「だな。これは三人ともポイント加算しなきゃいけないな。50点くらい足せばいいか?」
「そのくらいはいいハンデですね。そうしましょう」
『ぶっ、当てられたからって加算とは』
『さすがは一期生、二期生のトップやな』
『強者の余裕』
本番が始まる前から、すでにかなり盛り上がっている。
「おほん、では答え合わせです」
華樹ミミの声が響き渡ると、シルエットが解かれて姿が露わになる。
『やっぱりか』
『四期生がいきなり登場とはすごいな』
『マイカちゃんはお披露目配信直後にも参加しとったから、ずいぶんと積極的やな』
「が、頑張ります」
コメントを見ていたマイカは、つい言葉を発してしまう。
アドリブとはいえ、けなげな姿がリスナーたちの心を打っていた。
『かわええのう』
『さすがは春の妖精、ほんわか落ち着いた気持ちになる』
「おほん、改めて紹介するぜ」
コメントを見ていたタクミは、その流れを止めるように発言をする。
「まずは一期生から夜風パピヨンだ」
『パピ姉だぁ!』
『ミミたそとはまた違った魅惑的なお姉様!』
「ふふっ、ありがとうございます」
リスナーたちの反応に、素直にお礼を言うパピヨンである。
「続けて、二期生から腐乱ケン。見た目とは裏腹に知的で素敵な兄貴分です」
「今夜はどうぞ、よろしく」
フランケンシュタインがベースなのだろうが、ものすごく丁寧な物腰で挨拶をする。
『見た目とのギャップが素敵』
『これでキャラはクリーチャーなんだぜwwwww』
『ほんっとアバ信ってなんでもありだなwwww』
相変わらずリスナー受けがかなりいい腐乱ケンである。
「そして、ラストは期待の新人、四期生の黄花マイカだ」
『積極的に参加する姿勢は推せる』
『事前告知だと三期生だったはずなんだが、直前告知で変わってたよな』
リスナーの一部の声に、ちょっと雰囲気がおかしくなる。
そう、配信について、数日前に事前告知を出しておいたのだ。ご丁寧にも参加予定者の名前をタグ付で。
その数日前のポストと、配信開始1時間前のポストでは、参加者の名前が一人変更になっていたのだ。
数名のリスナーが、コメントでそれを指摘したのである。
「ああ、公式ポストを覚えてたのがいたか。悪いな、のどの調子が悪いみたいでな、無理っぽいって連絡があったんだ」
「ええ。私たちとしては残念でしたね。みなさまもまだまだ寒くて乾燥する時期が続いていますので、十分お気を付け下さいね」
『りょ』
『さすがミミたそとタクミ様だわ』
『一期、二期のトップはやっぱ違うなあ』
『手洗いうがいは基本ぜよ』
さすがトップアバター配信者たちは違う。微妙になった空気もうまく切り返して盛り返してしまうのである。
「それでは参加メンバーの発表も終わりましたので、早速ゲームに移りましょう」
華樹ミミが番組を進行させる。
ミミはそのまま司会者席に残り、残りのメンバーは回答者席に移動する。
全員が席に着いたところで、この日のブイキャスバレンタイン配信である『ドキドキ☆クイズマッチ』が始まったのだ。
配信終了予定時間である夜9時までの間に、時間の許す限りのクイズが行われる。
答えを一致させることができると、一致させた人数に応じて点数が入る。
通常は回答を一致させた人物に点数が入るのだが、全員がバラバラ、もしくは一致した場合は、出題者に点数が入る仕組みになっている。
要は駆け引きが大事になってくるのだ。
ルールの説明を終えると、いよいよ配信の本題へと入っていく。
第一問目は、華樹ミミの出題だ。
問題はシャッフルルーレットによる自動選択。ここでどんな問題を引くかも、勝負となってくる。
参加者もリスナーもドキドキのクイズ大会がここに始まったのだ。