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VAMPIRE STREAMING  作者: 未羊
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第10話 反省点しかない

「はあ、どうにか配信を無事終えたぁ……」


 満はヘッドセットとモーションキャプチャを外すと、そのままベッドへとダイブする。


「くぅぅぅ……、かっこいい吸血鬼を演出しようと思って『私』を使ったのに、以前ミスった『僕』の支持者ばかりだなんて、予想外が過ぎるよ」


 ベッドでじたばたと暴れる満。しばらくして落ち着くと、くるりと仰向けになって天井を見上げる。


「チャンネル登録者が増えたけど、ウォリーンさんのおかげというのが納得がいかない……」


 体を起こしてパソコンの画面をじっと見る。先程の配信で一気に登録者数が41まで増えた。しかし、それはウォリーンの発言直後からだった。

 しかし、マイナーな新人アバター配信者では、増えたとはいっても人気者に比べれば雀の涙。思わずため息が出てしまう。


「一応増えたは増えたんだ。うん、これからも頑張るぞ。まずはレニちゃんクラスまで!」


 満はえいやっと気合いを入れる。そして、ひとまずさっきの配信をアーカイブ化する作業をして、その日はぐっすりと眠ることにしたのだった。


 翌朝、大きなあくびをしながら起き上がる満。時計を確認すると朝の4時15分。昨日も早く寝すぎてしまったようで、その分早く起きてしまっていた。


「ふわぁ……、朝かぁ。宿題しておこうっと」


 目を覚ました満は、手洗い洗顔を済ませると、いつものように机に向かって勉強を始める。

 そして、時折自分のチャンネルやSNSのチェックもする。

 チャンネル登録やSNSのフォロワーが昨日の配信前に比べて増えているので、ちょっとにやついてしまう満である。

 数字が増えていくことに喜びを感じてしまった満は、宿題をとりあえず済ませると学校に行くまでの間、次の配信のネタを考え始めたのだった。


 普段通りに登校した満は、教室に着くなり風斗から話しかけられる。


「よっ、昨日の配信見たぞ」


「だよな。一つも発言してなかっただろ、風斗」


「まぁな、何言っていいのか分からんから黙って見てるんだ」


 自信満々に言い放つ風斗。どういうわけかイラッときてしまう満である。


「まぁでもよかったじゃないか、登録者数増えてさ」


「それはどうも」


 ぶっすーとした顔で反応する満。それを見て面白そうに笑っている風斗である。


「それで、次の配信は何をするのか決めたのか?」


「いや、特に決まっていないよ。僕は何が得意なのかも分からないし、かといって、アバターのキャラの得意なことといっても何も思いつかないからね」


「まあそうだよな」


 満の言い分に、風斗は激しく同意している。


「そういう時は何かゲームの実況プレイでもすればいいんじゃないかな。一部認められていないゲームもあるけど、大抵のものなら問題ないだろうしさ」


「うーん、ゲームかぁ。考えておくよ」


 首を捻り出す満。その姿を見て、風斗は何かを思いついたらしく、満に更なる提案をしてくる。


「知名度がない間はコラボなんてのは無謀だしな。SNSのフォロワーが居るんだったら、質問の募集でもすればいいんじゃないかな。そうすれば、配信の内容は悩まなくて済むと思うぞ」


「なるほどなぁ。こういう時は頼りになるね、風斗」


「こういう時だけかよ」


 お互いに笑い合う満と風斗だった。


「それで満」


「なに、風斗」


「いや、ちょっと顔が赤い気がしてな。無理してないだろうな」


「そう? 僕自身なんともないんだけど」


 風斗に言われた満だが、特に体調が悪いとかそういうことはない。でも、顔が赤いというの地味に気になるものだ。


「やばそうだったら保健室に行くよ。とりあえず大丈夫だからさ」


「まあ、満がそういうんならな」


 満が元気な様子を見せるので、風斗も一応納得したようだった。

 そうは言った満ではあるものの、ここ数日はアバター配信者を始めるにあたって、ずっとそのことにかかりっきりだった。もしかしたら無茶をしたかもしれないなと、心の中でそっと反省するのだった。


 ところが、風斗の不安は実現してしまう。

 時間は給食前の四時間目だった。この時も普通に授業を受けていた満だったのだが、突如としてふらついたかと思うと椅子から転げ落ちそうになっていた。

 たまたま隣の席だった風斗がすぐさま反応したので、大事には至らなかったのだが、もしそのままこけていたら大惨事だっただろう。


「お前な、やっぱり無茶してるだろ。保健室に行って休んでろよ」


「だ、大丈夫だよ。ちょっとふらついただけじゃないか」


「どこがちょっとだ。俺がすぐ助けたからいいようなものの、頭でも打ってたらどうなってたか考えてみろ」


 風斗に強く言われると、満は何も反論できなかった。

 結局、授業が終わるより前に、風斗に肩を貸してもらって保健室に向かって休むことになった満なのであった。


「ごめん、風斗」


「親友だから当然だ。とにかく放課後までしっかり寝てろ」


「うん……」


 保健の先生に断りを入れて、満は保健室のベッドに横になる。そして、そのまますぐにすーすーと寝息を立てて眠ってしまったのだった。

 その姿を見て安心した風斗は、保健の先生に満のことを任せて教室へと戻っていったのだった。

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