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2.独白と実力行使


出る杭は打たれる。あるいは異質なものは排除される。


でも、怪物を止める事はできない……そう、誰にも。



 物心ついた頃から私は何でもできた。


 勉強に運動、芸事や魔法でさえも、同世代はおろか、大人相手だろうと私には敵わない。


 けれど、それは私個人が凄いというではなかった。


 優秀な血統、最高の教育と環境、ここまで恵まれていれば結果を出せないわけないだろう。


 もちろん、才能は私に依存するものだ。


 けれど、それだって優秀な血統=才能があると捉えられる以上、私が凄いとは間違っても言えない。


 全てが与えられたもので自分が勝ち取ったものは一つもない……だから私にとってそれらは等しく価値のないものだ。


 なまじ聡いばかりに幼いながらそれを理解してしまった私は絶望し、周囲が持て囃す中、退屈で色味のない日々を送っていた。


 そんな私の転機はとある施設を訪れた時だ。


 魔法を研究するその施設で私は()と出会い、初めて自分の価値を認められた。


 私個人を見て欲しいという願望を抱える中でそんな出会いをしたのだから彼に恋をしてしまうのも当然の帰結だろう。


 彼との出会い、貰った言葉は乙女の秘密という事で詳しくは語らないけれど、私にとって大切で愛おしい思い出だったのは言うまでもない。



 そして、ここに至るまでの紆余曲折があり、私は彼を追ってこの場所……高度魔法育成学園へとやってきたのだ。


 まあ、再会という目的だけならわざわざクラスの代表に立つ理由はないのだが――――



「――――おや、どうしました皆さん。そんなに怖い顔をして」



 あの宣言の後、気付けば物思いに耽る私を囲うように数人の生徒が立っています。


 まあ、要件は十中八九、私の代表就任に納得いっていないという事でしょう。


 あの場で反論しなかったのは赤城くんの魔法を消した力の正体が分からない以上、徒党を組んだ方が良いと判断したのでしょうね。



「……私達はアンタが代表だなんて納得してない。あの馬鹿が代表なんてまっぴらごめんだけど、アンタみたいに得体が知れない奴は論外だもの」


「……僕も同意見だよ。もし、姫ノ宮さんがもう少し胸襟を開いてくれるのなら別だけどね?」


「その言い方気持ち悪いな……まあ、概ね俺も同じだ。代表っつうんなら目に見える強さを示してもらわねぇとな」


「数人で囲んで……というのは趣味じゃないけど、貴女みたいなのを代表として担ぐくらいならそこも曲げさせてもらうわ」



 ご丁寧に一人ずつ、気に入らない理由を述べる彼、彼女達。ふむ、どうやら赤城くんの心を圧し折った一幕では力の示し具合が足らなかったみたいですね。


 確かに見方によっては赤城くんが勝手に自信喪失しただけに見えますし、この展開も予測の範囲内。


 少し面倒ですが、仕方ありません。


 いちいち反発されては私の目的に支障が出かねませんから。



「――――得体の知れないなんてひどいですね。私はみなさんと仲良くしたいのですけど……そうですね。親睦を深めるという意味でも、少しだけ遊びましょうか、ね?」


「ッ調子に乗るな!この――――」



 私を囲む生徒の中で一番、気の強そうな彼女……沖久保さんが声を荒げて攻撃を仕掛けてくると同時に他のせいとも動き出しました。


 いくら私が何でもできる天才といっても、流石に彼、彼女らの魔法がどのようなものかは把握してませんし、正面から全て受ければ無事では済まないかもしれません。



――――まあ、受ける前に全て潰してしまえば関係ないのですけどね。



 どんな魔法を持っていようと、彼、彼女らはそれを使い慣れていない。生まれた時から持っていたとしても、それを人に向けて使った事なんてまずないでしょう。


 まず最初に狙ったのは一番隙だらけな私の事を嫌うもう一人の彼女。一息で距離を詰め、首元に手刀を打ち、続けて隣にいたナルシスト風な彼の鳩尾へ掌底を放ちました。



「なっ……!?」



 一瞬の内に声を上げる間もなく崩れ去る二人を目にして驚き固まる沖久保さんともう一人の彼。仮にも私を本気で打ち倒すつもりなら、構わず魔法を使うべきなのですが……その判断を彼女らにしろというのは難しい話でしょうね。


 動揺する彼女に向かって一歩踏み込み、足を引っかけ、肩へ軽く手を当ててそのまま押し倒し、最後の一人である彼の眼前へ拳を突き出します。



「――――わっ、ちょ、降参、降参だ。殴るのは勘弁してくれ」



 まさかの降参宣言に突き出した拳が当たる直前で止め、両手を上げた彼へ視線を向けました。


 手加減していたとはいえ、私の拳が届くよりも前に降参宣言ができたという事は彼の反応速度は中々のようですね……覚えておきましょう。



「――――さて、改めて伺いますが、私が貴方達のクラスの代表という事で異論はないですね?」



 襲撃してきたクラスメイトを返り討ちにした後、困惑と驚愕の入り混じった表情を浮かべる彼、彼女達に私はその問いを投げ掛けました。



「なんで……私は確かに投げ飛ばされて……」


「僕も一撃で気絶させられたはず……」


「私も何が何だか……」



 私の問いをそっちのけで、倒された自分達の傷が消えた事に疑問符を浮かべる三人。まあ、軽傷だったとはいえ、痛みすらすっかりなくなったとなればその反応は至極当然なのですが、無視されるのは流石に困りますね。



「……俺は異論ないぜ。降参した以上、四の五の喚くのはだせぇし、今のやりとりで強さは分かったからな。おまけに炎を消したり、傷を消したりする正体不明な魔法まであるなら担ぎ神輿として何の文句もねぇよ」



 そんな三人の代わりに答えたのは唯一、倒される前に降参した彼……そうそう、確か名前は木匠(きしょう)(けん)くんでしたか、やはり彼は使えそうな人材という事でしょう。



「ふふ、ありがとうございます。木匠くんは私の認めるとの事ですが、他のみなさんはどうですか?」


「っ……認めるわよ。気に入らないけど、実力は本物だって分かったしね……でも、少しでも相応しくないって思ったら見限るから」


「……美しさだけでなく強さも兼ね備えた貴女は僕の上に立つに相応しい。異論はないさ」


「まあ、沖久保さんが認めるというなら私もそれに従うわ……嫌悪感はあるけどね」



 木匠くんの言葉、そして一番私を敵視していた沖久保さんが折れたことにより、他の二人も賛同してくれました。


 おそらく、こうして実力行使にきた彼女達の他にも私をよく思わないクラスメイトはまだいるでしょう。


 元より、赤城くんを利用したアレで全員の人心を掌握できるなんて思ってませんでしたから別段、困るという事もありません。


 それに今回の件でクラスの中心人物となりそうな人材は手に入りました。


 これで数日もすれば表面上、クラスをまとめ上げる事はできる……捻くれ者の()()でもいない限りは、ですが。



「……それではみなさんも認めてくれたようなので、次のお話をしましょう……今後の展望についてを」



――――私は人の心を掴むのにカリスマなんて不確かなものを利用しようとは思わない。


 だから私は提示する。


 彼、彼女らに対するメリットと可能性……そして私という存在が示す絶対性を。




面白そうと思われたなら下の方から評価や感想をお待ちしております。


期待に応えられるよう頑張ります。



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