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16.明かされた手札

 

 眼前には目で追えない速度で攻撃を仕掛けてくるスペードの絵札と連携に凄まじい威力の遠距離攻撃を仕掛けてくるクラブの絵札。


 おまけにまだエースという札が控えている状況は控えめにいって絶体絶命でしょう。


 加えて彼女の魔法は本人曰く、アリスっぽい事なら何でもできるというものですから、当然、トランプ兵以外の手札もあるはず。


 反対に私は結界という手札を切り、肉弾戦も数の暴力で押され、体力を削られています。



「…………これだけボコボコにされてまだやる気なんだ。もう貴女の魔法も攻撃も通じないのは分かったでしょ?」



 呆れかえった顔でそんな言葉を口にするアリスちゃん。彼女もまた、この状況を正しく認識しているからこその言葉なのでしょう。



「ふふ、わざわざ通告してくれるなんてお優しいですね。もし仮に私が降参といえば見逃してくれるのですか?」


「ううん、それはないよ。ここで確実に倒すつもり。それに貴女は絶対に降参なんてしない、違う?」


「……短いながらも流石は担任の先生といったところでしょうか。私の事をよく分かっていますね。降参はしませんし、するつもりもありません。一見して絶体絶命な状況なのは認めますが、まあ、()()()()()()()()()()()()()()()()


「強がりだね。いつまで続くか――――」



 アリスちゃんが言い終えるよりも早く私は()()()()()()踏み込み、絵札の兵達の中に突っ込みます。


 後ろから響く爆音と一瞬で距離を詰めた私に驚いた素振りを見せる絵札達でしたが、それも束の間、それぞれ反応してきました。


 しかし、それだけ。反応されたところで何かをするよりも早く潰してしまえばいいだけの事です。


 一番初めに反応し、反撃しようとしてきたスペードのキングの頭を蹴り飛ばし、続いて攻撃態勢に入り掛けていたスペードのジャックの頭を掴んで地面に叩きつけました。



「――――反応が鈍いですよ」



 そんな言葉と共にスペードの絵札の中で一番反応の悪かったクイーンの腕を引き、勢いと遠心力を利用してクラブの絵札達へ投げつけてから再び加速。


 クイーンが着弾すると同時に奇襲を仕掛け、クラブのジャックを地面に沈めます。


 そして投げつけられたスペードのクイーンを受け止めきれなかったクラブのキングとジャックが一緒に吹き飛ばされ、そこへ追撃を掛けるように跳躍。


 そのまま勢いと体重を乗せてスペードのクイーン越しに踵落としを叩き込みました。



「一瞬で絵札を…………っまだ――――」



 明らかに動揺した素振りを見せたアリスちゃんを他所に臨戦態勢を崩さず、倒れたままの絵札達を見つめていると、その姿が突如として消え去りました。


……なるほど、そういう仕掛けですか。


 倒れた絵札達が消えた後、何もない空間から現れたのはクラブとスペードのエースを冠する個体。


 放つ威圧感から他の絵札よりも格上なのは見て取れましたが…………まあ、正直、くどいと言わざるを得ません。


 絵札が全員倒された場合、そのスートのエースが出現するという仕様なのでしょう。


 ですが、どれだけ強くてもあくまでトランプ兵達は魔法によって作り出された産物、五療くんと戦った時のような高揚はありませんでした。


 だから()()はここまで。これ以上、付き合うつもりはありません。



「せっかく現れてもらったところ恐縮なのですが、沈んでください……さようなら」


「…………は?」



 出現したエース二体へ一気に肉迫した私は向こうが動き出すよりも早く()()でその動きを封じ、頭を掴んで思いっきり地面に叩きつけます。


 この不思議空間が何でできているのかは不明ですが、私の力に耐えられなかった地面はひび割れ陥没し、エース二体の頭は深く埋まってしまいました。



「ふむ、どうやら地面よりも頭の方が丈夫だったようですね。エースを冠するだけはあると言ったところでしょうか」


「な、なんで……さっきまで絵札に苦戦してたのに…………」


「なんで、と言われましても……そうですね、一言で表すのなら飽きた、とでも申しましょうか」


「あ、飽きた……?」


「ええ、せっかくこの世界に招待いただいたのにトランプの兵、一辺倒……いくら強くなろうとあまりに単調で退屈だったもので、早く終わらせてしまおうかな、と」



 正直に申し上げるとアリスちゃんは口をパクパクさせて騒然としています。


 おそらくトランプ兵による優位があっさり崩された事でショックを受けたのでしょう。



「…………つまり、さっきまでは手を抜いていたとでも言いたいの?」


「まあ、端的に言えばそうですね。手を抜いていたというよりは様子見をしていたといった方が正しいでしょうが」


「っどこまで――――」



 何かを言い終えるより早く私は動き出し、アリスちゃんの正面へと迫り、そのまま鳩尾目掛けて掌底を放って彼女の小さな体躯を吹き飛ばしました。



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