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15.楽しい苦戦



「…………ふ、ふふふ、これはこれは……なるほど、これなら切り札といっても差し支えありませんね」



 吹き飛ばされた際についた埃を払いながら立ち上がり、首を鳴らして絵札の兵達に視線を向けます。まさか視認すら困難な速度で攻撃されるとは思いもしませんでした。


 威力も踏ん張りごと私を吹き飛ばす程に強く、体術だけとってみれば一体一体が五療くんと遜色ないレベルでしょう。


 今、私へ攻撃を仕掛けたのはスペードの絵札達……ジャックは騎士剣、クイーンは細剣、キングは大剣、単純に強さだけでなく、それぞれの特性を生かした攻撃をするくらいの知性も持ち合わせているようです。


 それに加えてまだクラブの絵札達も控えているとなると、流石に厳しい戦いになりそうですね。



「……この状況でどうして笑っているのかな?気でも触れた?」


「ふふ、これは失敬。思わぬ強敵についワクワクしてしまいまして……さあ、続きと参りましょうか」



 怪訝な顔をするアリスちゃんにそう答えた私は思いっきり踏み込んで加速。体勢を低くしながらスペードのキングへと迫ります。


 そしてそのまま取り回しの利きにくい大剣は近付かれると弱いというセオリー通りに接近戦を仕掛け、鳩尾に掌底を叩き込もうとします。



「っ――――」



 しかし、掌底が当たる直前、スペードのクイーンが横合いから刺突を繰り出して妨害、それに続き、スペードのジャックが斬りかかってきました。


 咄嗟に攻撃を中断し、飛び退いたのも束の間、今度はクラブの絵札達が動き出し、遠距離から衝撃波を放ってきます。


 多少の距離が空いている分、避けられると思い、再び飛び退こうとしたその瞬間、足元から植物の(つた)らしきものが生えて私の足に絡みつきました。


 無理矢理引き千切る事も可能ではあったのですが、どうしたって時間のロスは避けられません。そしてその僅かなロスの合間に衝撃波は私へと直撃するでしょう。


避けられない、なら――――


 回避を諦め、潔く当たる事を覚悟して防御態勢を取ります。


 五療くんと戦った時のように結界を纏えば防げるだろうと考えていたのが私のミス。


 直撃した衝撃波の威力が思いの外強く、結界を突き破ってそのまま私を大きく吹き飛ばしました。



「あーあ、結界を張ったからって油断してるからだよ?今のはクラブの絵札二体分の衝撃波、そうだね……例えるなら大型トラックが猛スピードで激突した時の衝撃、かな」



 派手に吹き飛んだ私の姿に呆れの声を漏らすアリスちゃん。彼女の前で結界を見せた覚えはないのですが、どうやら私の手の内はある程度知られているようです。おそらく、五療くんとの戦いから洩れたのでしょう。


 問題はどこまで知られているかですが、五療くんが情報を漏らすとも思えませんし、あの戦い自体、内部の様子が分からないよう結界を張っていたので、詳細までは知られていないと考えるのが妥当。


 つまり、知られているのは私が結界の魔法を使う程度のものでしょう。



「――――トラックの衝突と言われれば納得の威力ですね。おかげで制服がボロボロです」


「…………その割には平然としてるのはなんでかな?普通、トラックに撥ねられたら即死すると思うんだけど」



 情報、状況の整理を終えて何事もなかったかのように立ち上がり、言葉を返してみせる私にアリスちゃんは心底うんざりした表情でそんな疑問を投げ掛けてきます。



「さあ?私は普通を知りませんから。でも、正直なところを言えば今のは効きました。流石に撥ねられた事はありませんから疑似とはいえ、貴重な体験をありがとうございました」


「…………」



 あえて煽るように返答したのですが、アリスちゃんは特に反応を見せず、無言のまま私の方へ絵札の兵達をけしかけてきました。


 まるで効いてないように見せましたが、痛いものは痛いですし、出血こそないものの、全くダメージを受けていない訳でもありません。


 ですから私は今から先程よりも動きが鈍くなる中であの猛攻を凌ぎ、反撃するという無理難題をクリアしなければならなくなりました。



「ふふ、いいですね……これは俗に言う燃えてきた、というやつでしょうか」




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