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14.それだけのワンダーランド


 迫るスペードの三の槍を避けて掴み、向かってこようとしていた二、四、六の兵士に向けて身体ごと投げつけました。


 そして連携を取って衝撃波を放とうとしていたクラブの攻撃に対して近くにいたスペードの三を盾にして防ぎます。


 そのまま三を盾にクラブへと接近。用済みになったスペードの三を捨て、攻撃しようとしていたクラブ達へ蹴りを放ち、吹き飛ばしました。


 おそらく相手が人間だったのなら一連の流れで半分は戦闘不能になったのでしょうが、トランプ兵達は多少、よろめきながらも立ち上がり、再び戦闘態勢を取ります。



「――――解せませんね。この兵士の能力だけ見ても相当に強力、貴女の望みも少女に戻れるのなら叶っているようなものでしょう。にも関わらずこの学園に固執する理由があるのですか?」



 近くの兵士をあらかた吹き飛ばしてから浮かんだ疑問をアリスちゃんに投げ掛けます。彼女が望んでいたのは老いの否定と自身の守護ならこの魔法だけで両方叶うはずです。


 実際、あの姿は幻でもなんでもなく実在していますし、これだけ強力な魔法があれば様々なところで引く手あまた……やはり戦ってまで固執する理由が分かりません。



「……貴女からみればそう見えるのかもね。でも私の魔法はこの世界だけのもの……少しなら現実にも鑑賞できるけど、それだけだもん」


「ならずっとこの世界に引きこもっていれば問題ないのでは?食料も娯楽も用意できるのでしょう?」


「確かに望むものは手に入れられるよ。ただこの世界はいつまでも維持できない。だから()()の私はどんどんと老いていく……」



 少女の外見のままに、憂いと陰のある表情を浮かべるアリスちゃん。なるほど、この世界もまた魔法ならば維持は彼女の精神力に依存する。


 つまり、永遠を望む彼女の希望は通らないという訳ですか。



「やはり解せません。貴女の望みは現状だと叶わない。しかし、それは学園を守るために戦う理由にはならないでしょう?」



 彼女は私が学園を潰すと言ったからこそ戦いを仕掛けてきました。それは彼女の中で学園を潰す=自身の望みが叶わないという方程式ができていなければ成立しません。


 しかし、彼女の望みと学園の存続が結びつくとは到底思えません。


 可能性があるとするなら――――



「…………この学園を潰させるわけにはいかない。ここにいれば私は永遠に若いままでいられる。望む世界を手に入れられるんだから」


「……ああ、なるほど。その口ぶりから察するに大方、理事長にでも唆されたというところですか。文言は……そうですね、教員として理事長の指示に従い続ければ貴女の望みを叶える、辺りでしょうか?」


「…………」


「どうやら当たりのようですね。確かにそれなら私の排除に動こうとするのも納得です」



 目的次第でどう転ぶか分からないものの、危険因子ともいえる私を潰そうとするのは道理。てっきり私の口から学園を潰すという言質を取った事で戦いに発展したと思っていましたが、呼び出した時点で元からそのつもりだったという事でしょう。


……さて、アリスちゃんの戦う理由は分かりましたが、果たして理事長にそんな力があるのかは疑問ですね。


 高度魔法育成学園の理事長ともなれば魔法に対する造詣も深いのでしょうが、それでも彼女の望みを叶えられるとは思えません。


 もちろん、私は理事長の魔法を知りませんから一概にないとは言い切れません。


 ですが、彼女の望みはいわゆる不老です。もし仮にそれを実現できるような魔法、あるいは手段を持っているのだとしたら学園の理事長程度に収まっているのが不自然と言えるでしょう。



「……納得したなら大人しくやられてよ。私のためにも」


「ふふ、それはできませんね。理由はどうあれ、私も自身の目的のために退く気はありませんから」


「…………はぁ、まあそうなるよね。仕方ないか」



 復活して再び攻撃を仕掛けてきたトランプ兵を叩きのめしながらそう答えると、アリスちゃんは小さくため息を吐き、指を弾きます。すると、一瞬の内にトランプ兵達が掻き消えてしまいました。



「おや、もうおしまいですか?私はまだまだ戦えますよ?」


「知ってるよ。これ以上、ただのトランプ兵をけしかけても労力の無駄なのは目に見えてるもん。だから次はこれが相手だよ」



 アリスちゃんが再度、指を弾き鳴らすと、空間が歪み、今までとは比べものにならない威圧感を持つトランプ兵が全部で六体ほど現れました。



「スペードとクラブの絵札……それが貴女の切り札というわけですね」



 ジャックからキングを冠する絵札のトランプ兵達はそれぞれ凄まじい圧を放っており、私をして、容易に攻め込めない程度には隙がありません。


 切り札というのならエースが欠けているのは気になりますが、この状況で出し惜しみをする理由はないでしょう。



「……余裕ぶっていられるのも今の内だよ。絵札のトランプ兵達は一体でこの学園を制圧できるくらいに強いんだから!やっちゃえみんな!」



 アリスちゃんの号令と共に動き出す絵札達。その動きは通常のトランプ兵とは一線を画しており、目で追うのがやっとの速度……気付けば全身に衝撃が走り、私は凄まじい勢いで吹き飛ばされてしまいました。




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