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復讐者の協力者の過去 面接編

今から4年前の中学二年生の頃、私、加鳥花子は、人生の絶頂を迎えていた。

「花ちゃん、勉強できるからさ。進学先は、やっぱ北大阪府国立大学付属高校でしょ?で、そのまま北大阪府国立大学にエスカレーターで上がって、将来は、官僚とかになるんでしょ?」

「いや、花ちゃん、スポーツもできるんだからさ。高校上がったら、サッカー部に入りなよ。花ちゃんの運動神経なら、将来、絶対、なでしこジャパンに入れるよ。なでしこジャパンに入って、ワールドカップ優勝しちゃいなよ」



「ん~~、みんなの期待には悪いんだけどさ。私、高校進学しないんだよね」

という私の発言に私を取り囲むクラスメイトの女子全員が、え〜〜、なんでぇ!?と目を丸くする。



「私、明日から魔法少女になるんだよね」



この当時、私には、すでに新大阪都庁魔法少女課から魔法少女適性試験受験日の書かれた通達書が届いていた。受験を明日に控え、勉強でもスポーツでも常にトップを走り続けていた当時の私は、当然、魔法少女適性試験を合格するつもりでいた。



「え〜!!魔法少女って、魔人から日本の平和を守る仕事でしょ?危険じゃない?」

心配するクラスメイトの女子全員の声や視線を浴びながら、私は得意満面の顔を作り、



「まぁ、正直、余裕かな。魔法少女になった私にかかれば、大魔人会の首領ドボスなんて、たぶんイチコロだし」

と言ってのけた。



「え〜〜、スゴいスゴい!!友だちの中から魔法少女になる人が出るなんて!!」

「進学した高校で自慢していい?」



「いいよ〜」



「っていうか、ヤバいヤバい!!私、花ちゃんにフォローされちゃってるじゃん!!有名人になる人がフォロワーにいるなんて、ヤバいよ!!」

「私、まだフォローされてな〜い!ねぇ、フォローして!して!」

「私も!」

「私も!」



「もぉ~、しょうがないなぁ〜」

私は、うんざりしたポーズを取りながら、クラスメイト女子全員にマウントを取れたことに悦に浸っていた。

そして、魔法少女適性試験当日――、私は、実技試験前面接で魔法少女課人事部の面接官に、



「あなたが、魔法少女に志願する動機は、なんですか?」

と聞かれ、



「はい、魔法少女は、私の小さな頃からの憧れで、小さな頃からテレビやスマホで見ていた魔法少女のみなさんと同じ日本国民を守る仕事が私もしてみたいと思い、志願しました!」

と私は、元気よくハキハキとした好印象を与える声音で前日から考えてきたシンプルで完璧だと思える回答をした。

それに何を思ったか、眉を寄せ、



「だから、その日本国民を守る仕事をしてみたいと思った理由を聞いているんだが」

と訊ねてきたのは、その年から魔法少女課主任になったばかりの柊 香子だった。

私は、彼女に対する予習もしっかり前日までに済ましていた。



「はい。ですから、2.11などの魔人大暴動などでピクシーブレイン柊 香子主任のような立派な先輩方が活躍する姿を見て、私は、私も魔法少女になりたいと思い、」



「だ・か・ら!!」

と柊 香子は、目の前の長机を3回叩く。

とんでもない圧迫面接女だと思いながら、私は、柊 香子が、

「どうして、私達、魔法少女が活躍する姿を見て、魔法少女になりたいなんて思うんだ?」

と訊ねるのに、回答するのに、変な間を開けてしまう。

私は、



「だから、私は、あなた達のような正義の為に戦う正義の味方に憧れて、自分もそうなりたいと思い、」



と絞り出すように、自分の主張を貫いたが、

柊 香子は、それに対し、



「人は、正義の為には、戦わない」

と切り捨てた。そして、



「お前は、魔人と戦うのは、命の危険が及ぶ事だと、ちゃんと理解しているのか?」

と睨んで訊ねてきた。

私は、

「もちろんです」

と即答するが、



「だったら、もっとエゴに満ちた動機らしい動機があるはずだろう?それを言ってみろ、と我々は、訊いているんだ。魔法少女になって、お前にどんな利得がある?」



と柊 香子に言われて、何も言葉が出なくなってしまう。

何故なら、魔法少女になることが社会的ステータスになると思ったからです。なんて、口が裂けても、公然とは、言えなかったからだ。

今まで自分は、常に勝ち組の道を歩んできたし、そんな完璧超人な自分にふさわしい職業は、魔法少女しかないと思ったから、とももちろん言えなかった。

そんな私を見かねて、柊 香子は、深いため息を吐く。



どうして、私にそんな目を向ける?どうして、私に向け、そんな目ができる?私は、加鳥花子様だぞ?



「もういい、次」



もういい?次?

は?お前、何様だよ?



私は、無意識に柊 香子を睨んでいたかもしれない。しばらく、呆然と立ち尽くして、自分の席に座る事ができなかったが、じっとこちらを見る柊 香子の視線にハッと気が付いて、自分の番は、もう終わったのだ、とおずおずと座る。

私の隣の女子が代わりばんこにパイス椅子から立ち上がる。



「お名前とご年齢をどうぞ」

と面接官。



「はい!わたくしは、弥馬田グフ子と申しますですぅ〜!ピチピチの14歳ですぅ!グフフ〜!!」



は?ぐふこ?



私は、マジか?こいつ?という目で隣を見た。

そこには、前髪をわざとらしくゲゲゲの鬼太郎のように片方だけ垂らした、あばたえくぼの目立つ、目の下のクマの濃い顔色の悪い女がよだれを垂らしながら笑って、立っていた。



「では、何故、魔法少女に志願するのか、その動機をどうぞ」

と面接官は、何事もないかのように平然と面接を進める。

弥馬田グフ子は、



「はい!それは、魔法少女になるのが、社会的ステータスになるからと思ったからですぜぇ!旦那ぁ!」

と言ってのける。



は?こいつ、ふざけにここに来たのか?受かる気、あんのか?



と思う私を尻目に弥馬田グフ子は、発言を続ける。



「魔法少女になってぇ〜、有名人になってぇ〜、お金持ちのおっさんと結婚してぇ〜、子供産んでぇ〜、離婚してぇ〜、慰謝料と養育費だけで残りの余生を遊んで暮らしてぇ〜、叶恭子のようにイケメンの若い男をはべらすハーレム天国でも作りたいですなぁ〜。あっ、でもぉ、ダメおじを囲って、毎日、パこるのも、捨て難いですなぁ〜」



どう考えても、狂ってるとしか思えない。

こいつは、落ちたろ。と私が思って、弥馬田グフ子を見上げていると。

ぼそりと柊 香子が、



「さっきの奴よりは、マシだな」



と言った。



は?今、なんて?まさか、魔法少女になる連中は、こんなのが、スタンダードとでも言うのか?



面接は、その後も魔法少女候補生全員分の質疑応答が終わるまで続いたが、弥馬田グフ子のような奴は、他に一人もいなかった。



ほら、見ろ。私の方がまともじゃないか。

面接では、少ししくったが、この後の実技試験で挽回すれば、いいだけよ!

最後に笑うのは、私だ!!



と思っていた私であったが、この後、実技試験でコテンパンに打ちのめされることになるのである。

まさか、私が不合格で

あの弥馬田グフ子が合格になるなんて……。

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