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ピクシースパイス ―魔法少女大戦―  作者: 弥馬田 ぎゃん


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エピローグ

北大阪府シティ北新地・内閣府前の特別記者会見用の屋外ステージには、赤絨毯あかじゅうたんが敷かれ、バックには、江戸時代末期の金屏風きんびょうぶが立て掛けられていた。

テレビメディア各社関係者、ネットマスコミ、政治系インフルエンサー計102名が集結し、用意されたパイプ椅子に座り、おとなしくというより息を飲み、一人の女性が壇上に上がってくるのを待っていた。


「日本国第123代内閣総理大臣 柊 香子ご登壇」

と内閣府広報がマイク音声で伝えると、激しいフラッシュの嵐が一斉にたかれた。

目映まばゆいまでの昼下がり、柊香子は、人生の絶頂と階段を上がってゆく。

あの日、4月30日。柊 香子は、確かにヘルブルーファイアの大魔法マジカル テラ・アトミック ブルーフレアで焼かれて、死んだ。

が、五稜閣の指示の元、ヘルエクストラに消化された泉 総一郎の後釜として、魔人細胞による蘇生手術を受け、彼女は、生き返った。

罪の重さを一歩一歩、踏み締める。犠牲になった数多くの魔法少女達。

新しい時代を作る為とはいえ、罪悪感が皆無だったわけではない。

一度は、あの魔法少女狩りの新大阪都庁襲撃で自らも時代のいしずえになるべく、死を覚悟した。

でも、それは、違う。

全てを仕組んだ側の自分は、死によって、呪縛から解放されてはいけない。生きて償い、少女達を死に追いやった責任を、重荷を背負い、新しい時代の到来を見届けるまでは、死んではいけないのだ。

一人だけ楽になろうとすることこそ、恥だ。彼女達に対する侮辱だ。

善人面をしてはいけない。最後まで悪党を貫かねば、自分の選んだ道から、選択から逃げることになる。

地獄に落ちるその時まで、柊 香子は、悪人でなくてはいけない。

権力の中枢に入り、あの五稜閣におべっかを使いながら、手練手管で異国と渡り合い、日本を、世界を正しい方向を導かなくては。

どんな汚い手を使っても。

新しい総理となった柊 香子は、壇上で軽い自分の自己紹介や儀礼的なマスコミ用の挨拶を済ませ、本題に入る。

「この度、マスコミ各社関係者様にお集まり頂いたのは、この日本国における重大な決定をご報告する為でございます」

フラッシュがよりきつくなる。

「本日付けを持って、我、日本国は、軍事の面で頼りきりであった日米同盟を解消し、防衛能力をアジア共同体を中心とする体制へと移行し、国名をジャパニーズユニオンと改める事と致します」

それは、全て五稜閣による指示だった。

「これは、すでに新法総理大臣令で決定した事であり、……」

とそこまで言ったところで、柊 香子の言葉は、止まった。

自らの前にいる102名の報道陣の中にあの男が紛れていたからだ。

ご丁寧に頭部にPNCを装着したいかにも目立つ黒の特殊部隊が着るような戦闘服姿で。

「何故、お前がここにいる?お前は、ブルーファイアと共に新大阪都庁の地下の特別収容所で幽閉されてるはずだ」


「俺は、加鳥花子を食って、奴の電脳ジャックの能力を引き継いでいる。機械やロボをいくらでも操れるんだ。あんな所、簡単に脱出できるさ。その事を失念していたお前らのミスだ」

と蝉川秀一は、柊に答える。

事情を知らない周囲のマスコミは、一気にざわざわとしだす。

「こいつらが人質だ。今度こそ、おとなしく死んでくれるな?柊 香子」

報道陣は、一斉に逃げ出そうとするが、彼ら彼女らの周囲を青い炎が取り囲んだ。

敵は、蝉川一人だけではない。

柊 香子は、観念した。

報いの時が来たのだ。

泉 総一郎にフゴウ・タカラ、そして、自分の番がついに回って来たのだ。

悪役退場のシーンが思っていたよりずっとはやく。

悪がはびこったままでは、世界は、正しく動き出さないということか。

柊 香子は、両手を広げて、目をつぶる。

彼女の頭部を蝉川秀一の12本の触手が飲み込み、根元にあるイカの魔人部分の大きな口の中の牙が音を立て、噛み砕いた。

噴水のように飛び散る血飛沫。

報道陣側から飛ぶ女性達の甲高い悲鳴。

その中で蝉川秀一は、ゆっくりと柊 香子の代わりに壇上に上がる。

そして、カメラに自身を映すように指示を出した。

生中継で全国に配信されている。

「おい、ピクシースパイス。見ているか?」

と蝉川秀一は、カメラの向こうに語りかける。

「私は、お前だけは、許してやろうか、と思った時があった。二度と蝉川愛子さんのような犠牲者を出さないとお前が言った、あの時だ。あの時、俺には、意識があって、ちゃんと聞いていた。が、その後、お前は、何をした?魔法を使って、何もかも消し飛ばそうとしたな。つまりは、そうだよ。そういう事なんだ。お前ら、魔法少女には、大勢の人間を一瞬で殺せるだけの力がある。力があれば、使う時が来る。反省してるかどうかは、関係ないんだ。お前ら、魔法少女が生きてる限り、次の犠牲者は、必ず生まれるんだ。マナのような犠牲者が。悲劇は、繰り返されるんだ。何度も、何度も」

蝉川秀一は、そこで深い溜息を吐いた。そして、憤るように言葉を紡ぎ出す。

「娘は、お前の大ファンだったんだ。その憧れの存在の魔法によって、死んでいった娘の痛み、苦しみを思うと……、私は、どうしてもお前を許せない」

蝉川秀一は、カメラを睨んだ。

「ピクシースパイス。次は、お前の番だ」


物語が終わっても、彼の復讐は、終わりを告げない。

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