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ピクシースパイス ―魔法少女大戦―  作者: 弥馬田 ぎゃん


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童貞3号とタイムバースライン

童貞3号は、あの日いた場所に戻って来たはずだった……

S歴2050年の4月30日の夜、童貞3号は、ジャパン・ストロンガーズの一員として麻酔液がたっぷり入った貯水タンクに収納、拘束された蝉川秀一を護衛する為、護送トラックの扉を開け、銀色の巨大なヤドカリのようなロボ・スプリングバルーンの大群と相対し、戦う為にパイオIID改をアポンツ能力で召喚しようとしたところ、フゴウコーポレーションから渡されたアポンツ能力強化装置が暴走し、違う世界線へと飛ばされてしまった。

そこで全ての次元・世界線を掌握し、支配しようとする天条誠人率いるダーク軍に反抗する組織・時空革命軍タイムレジスタンスの皆に会い、童貞3号もずっと革命軍の同志として、今までずっと戦っていた。

つい最近になって、天条誠人率いるダーク軍に勝利を収め、全ての次元と世界線を救った童貞3号は、司令官の弥馬田グフ子から最後の任務を言い渡され、この次元の世界線の過去へと戻って来たのだ。

「タイムバースラインの装置にも異常なし。座標も合っている。ここが北大阪府シティ?いったい、どうなってるんだ?」

童貞3号は、首を振って、周囲を確認するが、西も東も、北も南も、どこまでも果てしない荒野が広がっているだけだった。

そんな中、ブォーン!!と空気をつんざくようなジェットエンジンが響いて来る。

童貞3号が音のする南の空を見上げると、豆粒ほどの大きさに見える光る何かがマッハの速さでこちらに向かって来ていた。

その光る飛行体が近づくにつれ、それが何かがわかる。それは、ピンク色のダイヤモンドがふんだんに使われたピンク色の戦闘スーツ、ダイヤモンドダストMk88に違いなかった。

「フゴウ・タカラ!?まさか、この時間軸で生きていたのか!?」

童貞3号は、すぐにタイムバースライン装置で確認するが、名簿データには、フゴウ・タカラの名前の隣にしっかりとLOSTと表示されていた。


フゴウ・タカラじゃない!?じゃあ、誰があのダイヤモンドダストを操ってるんだ!?


と戸惑う童貞3号の前に着陸したピンク色のダイヤモンドダストは、チビだった。

フゴウ・タカラのダイヤモンドダストが6か7頭身は、あるのに対し、この桃色ダイヤモンドダストMk88は、四頭身ほどしか無かった。

「汗ばむわぁ〜」

と発情した四十路のババアのような吐息を漏らし、ダイヤモンドダストの下半身のパーツを外して、スカートをパタパタさせ、ピンクダイヤモンドマスクを外して、顔を露わにしたのは、弥馬田グフ子だった。


「司令官、何故、ここに?」

童貞3号が問うと、

弥馬田グフ子は、

「司令官?何、お客さん、そういうプレイがお好き?悪いけど、うちそういうオプションは、やってなくってよ。グフッグフフフフ〜ん❤」

といつものグフ子節でふざけた。


「そうか。この時間軸にいる司令官は、まだ司令官じゃないんだ」

と童貞3号は、一人で納得する。

「司令官。じゃなくて、グフ子さん、いったい、ここで何があったんですか?」


「ナニがあったって?はぁ〜ん、おたく、どっから来たのん?終末の魔法少女の事件をまさか、知らないのん?」

弥馬田グフ子は、ピンク色のダイヤモンドマスクをデカい頭に引っ掛けたまま、訊いた。


「あの信じられないかもしれませんが……、私は、未来から、ここに来てまして……、週末の魔法少女の事件とは、なんですか?」


「未来から来たんなら、過去でここで何が起きたかくらい知ってるでそ」

弥馬田グフ子は、じと目で童貞3号を見つめ、

「撃っちゃおうかな?」

と右手パーツの手のひらの共振発生発射装置を彼の方にかざした。


「いや、本当なんです!私は、本当にタイムトラベラーなんです!信じてください!!どうやら、タイムパラドックスが起きてるようで、何がなんだかまるでわからんのです!あの、ここは、S歴2050年の北大阪府シティで間違いないんですよね?」

童貞3号は、ハンズアップしながら、訊ねる。


弥馬田グフ子は、共振発生発射装置を童貞3号に向けるのを止め、

「正確には、北大阪府シティがあった場所でっせ、ダンナァ。北大阪府シティは、終末の魔法少女ピクシースパイスが最上級大魔法マジカル テラ・アトミック アルティメット・スパイスストリングスで全て跡形もなくナノレベルまで細切れに分解して、消し飛ばしちゃったんでさぁ」

と説明役に回る。


「北大阪府シティを全部?一人で?」

童貞3号の盛りのついた雄の狼のようなギラついたするどい目が丸く見開かれる。


「スパイスちゃんは、世界をまるごと消し飛ばすつもりだったようだけど、北大阪府シティを飲み込んだ時点で彼女の魔法は、消失したんでさぁ。完全に魔法能力を永遠に失ったつー意味でね。元々、18歳の消費期限も来てたし、それがスパイスちゃんの能力の限界だったんだろうねん」


弥馬田グフ子の言葉に童貞3号は、ひどく動揺して、

「北大阪府シティが消えたって事は、クラーケンマン時東 誠人は、どうなったんですか!?」

と質問を重ねる。


しかし、弥馬田グフ子の返答は、さらに彼を動揺させ、絶望のるつぼへと追い落とす。

「そんなの北大阪府シティごと、バラバラのナノレベルの細切れになって、消えたに決まってるでそ。まぁ、それでも、生存者がいないか確認してくれって、フゴウコーポレーションに雇われて、アチシは、この半年間ずっと探してるわけだけど、見つけたのは、ピクシースパイスちゃんの自殺遺体ぐらいだねん」


平然とした口調の弥馬田グフ子を前に童貞3号は、頭を抱えてしゃがみ込む。

「終わった……時東誠人が死んでて、ピクシースパイスも死んでるなんて、北大阪府にいたこの時間軸の戦力もこの様子じゃ、全滅だ。何もかもメチャクチャだ。私達が救った未来と違いすぎる……。過去がこれだけ変わってたら、私達が奴から救った未来が無くなる」


「何を大きな体をした男がしょげこんでんだい。タイムパラドックスなんだろ?だったら、世界線の違うあんたが落ち込む必要なんて、ないでそ。あんたのいた未来とここは、繋がってないんだから」

弥馬田グフ子は、そう言って、巨大な童貞3号の背中をさすって、慰める。

ちなみに彼女の好みは、ダメおじで女々しい男が大好きだ。図体がでかい男がしょげこんでるシチュは、彼女の大好物の大興奮する展開だった。

弥馬田グフ子は、鼻息荒く、よだれが出そうになるのを必死にこらえた。

しかし、童貞3号は、悪の秘密結社に作られた怪人で生まれてから、まだ5年程度しか経っておらず、ダメおじと言える年齢ではない。

が、そんな細かい設定などグフ子は、知る由もないし、また知っていても、それを気にする神経すら持ち合わせていなかった。

話を本筋に戻す。

童貞3号は、グフ子の大好物の涙を浮かべて、

「それが、どうやら違うようなんです。ここは、私のいた未来の過去と違うはずなのに、タイムバースラインで繫がっているんです」

と腕に巻いたタイムバースラインの装置の黒い液晶画面を見せた。そこには、心電図のようなぐにゃぐにゃ揺れる一本の線が緑色に発光してるだけで、グフ子には、何が何やらわからなかった。

「どゆこと?」


「だから、私のいた未来とこの過去は、あきらかに繫がっていない別物なのに、一本のタイムバースラインで繋がっているんですよ。つまり、この過去と私のいた未来は、同じ世界線なんです!!」

ほぼ半狂乱と化している童貞3号を見ても、グフ子は、いまいち真剣味を感じれない。


「それが何が、どう不味まずいの?」

というのが、彼女の率直な感想だった。


「このままだと私達、タイムレジスタンスが最強ヴィランによる侵略を止め、全ての次元と世界線を救った未来が、この過去に飲み込まれて、消えてなくなるという事です!!」

童貞3号は、地面を何度も拳で強く叩きながら、嘆いた。


その様子を見て、弥馬田グフ子は、

「それが何が、どう不味いの?」

という率直な感想を繰り返した。


「奴は、どんな願いも叶えるQを完成させる為に全ての次元の全ての世界線のエネルギーを使うつもりなんだ!!全てのエネルギーが吸収されたら、この次元も世界も滅亡するんですよ!!司令官!!」

童貞3号が必死に訴えるが、弥馬田グフ子には、事の重要性が、

「だから、それが、どったの?」

とまるで伝わっていなかった。


「ああ、全ての次元と世界線を救ったつもりでいたのに、まさか、こんな落とし穴があるなんて……こんな重大な空間事故のような問題があるのに、どうして、私一人だけを過去に送り込んだんですか!?司令官!!」

童貞3号は、目の前の弥馬田グフ子と未来の弥馬田グフ子を重ね合わせて、見つめて、言う。


その意図を初めて汲んでか、

弥馬田グフ子は、目をぱちくりとさせる。

「ちょっと待って。あなたを未来からここに来させたのって、アチシなの?」


「そうですよ、司令官」

童貞3号は、絶望で地に手をつけ、耐えながら、何を今さらと答える。


「だったら、これも含めて、全部、私の計算ずくなんじゃない?」

と弥馬田グフ子は、いつものげへぺろっスマイルを浮かべる。


「どういう事ですか?」と童貞3号。


「過去と未来が繫がってないなら、辻褄の合う過去を、ハッピーエンドに繋がる過去を私達で作ればいい」


「どういう事ですか?」と今度は、童貞3号が繰り返す。


弥馬田グフ子は、楽しそうに

「私達で過去改変するのよ」

と言う。


童貞3号は、その言葉に慌てふためいた。

「過去改変なんて、そんな事したら、次元が吹っ飛びかねないですよ!!」


「では、あなた達が救ったと言う未来が失くなっても、いいんでげすね?」

にたぁ〜とグフ子は、童貞を見つめる。

童貞3号は、うっと呻いて、軽く痙攣した。

「アチシが考えるに、最初から過去改変が目的だと伝えると頭が黒ヘルで固いあ〜なたが、過去に飛ばない可能性があると未来のアチシは考え、あ〜たには、何もあえて伝えなかった可能性が高い。つまり、ここまでの展開がこのIQ2京一兆$の私の計算ずくだったというのが、アチシの見解だが、どう思うかね?」

弥馬田グフ子は、いやらしい手つきで黒ヘルを撫でながら、囁き声で訊ねる。

童貞3号は、屈服した犬のように正座して、ちょこんとした存在になり、おとなしくなる。


「でも、過去改変は、いくらなんでもリスクが高すぎます。司令官。同じ時間軸に何度も飛んだら、それだけ別パターンの自分に出会でくわし、タイムパラドックス事故の引き金になりますし、」

と言う童貞3号の黒ヘルを撫で続けながら、弥馬田グフ子は、

「なるほど、同じ時間と場所に何度も飛んではダメ。チャンスは、一回きりって事ね。それからぁ〜」

と先を促す。


「私のいた未来とこの世界の過去を繋げるなら、私のいた未来とこの世界の過去で生きている者と死んでいる者の整合性が取れてないといけません。それには、まず、北大阪府シティ中の命を消し去ったマジカル テラ・アトミック アルティメット・スパイスストリングスをピクシースパイスに発動させない事が第一条件ですが……、ピクシースパイスは、どういう経緯でそんな暴挙を?」


「フゴウ・タカラが彼女の母親を殺したのが、衛星カメラ映像に残っていたから、それが原因だっしょ」


「それだけで?」と父も母もいないホムンクルスの童貞3号は、理解できない。


「人のタガが外れるには、十分な理由だよ。目の前で家族を殺されるのはね」

と自身も目の前で家族を皆殺しにされた事のある経験者の弥馬田グフ子は、遠い目をして、この時ばかりは、ふざけなかった。


「わかりました。では、彼女の母親がフゴウ・タカラに殺されるのをまず、防ぎ……ダメです。彼女の母親、古生白子は、助けられません」

と童貞3号は、言葉を詰まらせる。


「どうして?」と訊く弥馬田グフ子。


童貞3号は、申し訳なさそうに答える。

「彼女の母親、古生白子は、我々のタイムバースライン装置の未来の国民データによると、そのマジカル テラ・アトミック アルティメット・スパイスストリングスによる虐殺が起きたとされる日付、S歴2050年の4月30日に死んでいます。つまり、古生白子を生かすと私達の救った未来と繋がらない」


「スパイスちゃんのお母さんには、死んでもらわないといけないってこと?」

弥馬田グフ子は、深刻に顔を曇らせた。


「ええ、古生白子だけじゃなく、フゴウ・タカラもこの日付に死んでいます」

と言う童貞3号に

弥馬田グフ子は、

「フゴウの奴は、別に死んでいいけど、」

と一考し始める。

「スパイスちゃんのお母さんは、フゴウが殺す。フゴウは、私達が殺すとして、誰が怒り狂ったスパイスちゃんを止めるか、だけど……」




なかなか次の言葉を発さない弥馬田グフ子に童貞3号は、痺れを切らして

「やっぱり、過去改変なんて無理じゃないですか?北大阪府シティを一瞬で消し去る能力を持つ魔法少女に勝てる人なんて、いないでしょ」

と根本から作戦の変更を願い出たが、

弥馬田グフ子は、ぱっと閃いたようで、

「いや、いる。ピクシースパイスを止められる人間が世界で一人だけ」

と自信を表情に加えて、童貞3号を力強く見た。


童貞3号は、

「誰ですか?それは?」

と訊ねるが、弥馬田グフ子は、すぐには、答えない。


「教える代わりに一つ、私から条件がありやす」


「条件?なんですか?それは?」

と童貞3号は、慣れた調子で訊ねた。


「私も一緒に君とタイムトラベルする。過去改変のこの作戦に私も参加すること。それが条件よん」

弥馬田グフ子は、一切の遠慮なく、押し切るように童貞3号を見つめ続けた。

童貞3号は、うぅっうっと呻いて、しばらく、その場から動けなくなった。

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