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ピクシースパイス ―魔法少女大戦―  作者: 弥馬田 ぎゃん


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バッドエンドの世界線

ピクシースパイスの半透明の魔法障壁で作ったボックスの中に閉じ込められたまま、フゴウ・タカラは、

「ピクシースパイス。お前が、この先、どんなに倫理的に正しい立場になろうと、世間は、お前を正義だとは、認めない」

と断言する。

「何故なら、サタンソースとブレイブハートのウイルス兵器を使って、誰が正義いいもんになるのか誰が悪党わるもんになるのかコントロールし、世界のシナリオを握って、操っているのは、このボクだからだ。ボクが書いたシナリオでは、ボクが正義の味方で君は、やられ役。そのシナリオから外れて、君がボクを倒した場合、シナリオを書く者がいなくなった世界は、コントロールを失い、無尽蔵に垂れ流されるサタンソースとブレイブハートにより、混沌と化し、終わらない戦いを正義と悪に分かれて、永遠に続けることになる。そして、その混沌を生み出したお前は、二度と元のヒーローには、戻れない!!」


「だから、それも含めて、あんたがメディアに公表すればいいだけでしょ!御託ごたくを並べてないで、観念しなさい!あんたの命は、今、私が握っているのよ!」

ピクシースパイスは、フゴウ・タカラを閉じ込めている魔法障壁で作ったボックスのサイズを一回り小さくした。

圧迫されるフゴウ・タカラ。しかし、それでも、彼は、構わず、雄弁に語り続ける。


「やりたければやればいいさ。正し、その場合、お前は、正義の味方を殺したただの虐殺者だ!永遠に正義の味方に戻る機会を失うぞ!ボクにこうべを垂れて、従う以外、君が元の正義の味方のポジションに返り咲くことは、永遠に無いんだよ!世界のシナリオを握ってるのは、このボクだ!ボクが正しく、ボクこそが正義だ!ボクのシナリオに従い、ボクの軍門に下るか、それとも、悪の虐殺者として、この場でボクを殺し、世界に混沌をもたらすか、二つに一つだ!!」


「そんな……」

ピクシースパイスは、基本、考える頭を持たないただの戦士だ。戦場で指示を出していた彼女の上司や共通意識で一緒に戦っていた仲間は、誰一人もう立っていない。

一人で重要な決断しなければいけない状況に立たされた彼女は、

「ここで、あんたを生かせば、私は、本当に正義の味方に戻れるの?」

と弱々しい声音で訊ねた。


フゴウ・タカラは、勝ち誇った表情に顔を歪めた。

「ああ、そうだ。わかったら、さっさと、この魔法障壁を解け。いつまでも、テロリストのままでいたいのか?」

言われて、ピクシースパイスは、発動していた魔法障壁のボックスを消失させた。

その様子を見て、彼女の母、古生白子がふらふらと彼女へと近づいていく。

「小梅。お母さん、難しいことは、わからないけど、その人、本当に信用していいの?正義の味方だとか、世間様にどう思われるかより、自分が正しいと思えることをした方がいいんじゃない?お母さんは、小梅がどんな決断をしようと、いつでも小梅の味方よ」

母の助言を聞いて、脳を覆っていた雲が晴れるように、我に返るピクシースパイス古生小梅。

改めて、フゴウ・タカラを敵として、認識し直すが、

その時には、すでにフゴウ・タカラが

「余計な事、言ってんじゃねぇ!!クソババア!!」

と行動に移していた。

イカの魔人と化しているフゴウ・タカラの口からウォーターカッター並の水圧のイカ墨レーザーが発射され、古生白子の胸を貫いた。


「お母さん!!」


ピクシースパイスは、母に駆け寄るも、心の臓をイカ墨レーザーでくり抜かれた古生白子は、すでに絶命していた。

急激な悲しみの波が押し寄せるピクシースパイスにフゴウ・タカラは、

「おいおい、そんなババアの命の一つや二つ、どうでもいいだろ。そいつは、ただの踏みにじられる側のモブキャラだろうが」

と追い打ちをかける。

ピクシースパイスは、目を真っ赤に充血させ、キッとフゴウ・タカラを睨む。

「おいおい、なんだその目は?勘違いするなよ。お前のボクへの服従が確かだとわかったら、そんなババアの一人や二人、すぐに魔人細胞で生き返らせてやるさ」

フゴウ・タカラは、なんでもない事のように言ったが、それがピクシースパイスの逆鱗に触れた。


確かに、再生能力の高いクラーケンマンの魔人細胞を使えば、お母さんは、生き返るかもしれない……。

お母さんは、魔人に成る事を望んでないだろうけど、生き返らせれるなら、なんでもする……

けど、けれど……


「お前の事なんて、信用できるか!!」

ピクシースパイスが叫んだ瞬間、クラーケンマン フゴウ・タカラは、反射で避けたつもりが、四肢を細切れに切断された。

もの凄いスピードで薄ピンクの網目状の糸のような斬撃が通過するのが見え、それが高圧縮されたあの魔法障壁できたマジカル テラ・アトミック スパイスストリングスの縮小版である事を理解できたのは、被弾してから、四肢を失って、自分がべちゃりと地面に落ちて、数秒経ってからだった。


「おい、やめろ!何をする気だ!?また、お前をヒーローに戻してやると俺は、言ってるんだぞ!?ダイヤモンドダストのサイドキックとして、それ相応のポジションをくれてやる!お前の母親も生き返らせるし、これからは、サタンソースを使って、自由にボクらに都合の良い敵を作って、それを退治し、理想の君の思い描く通りのヒーロー生活を送れる!他に何が望みだ?金か?金なら、いくらでも、くれてやる!ボクは、遅かれ早かれ、このヒーロー事業を成功させ、世界一の金持ちになるんだからな!!」

フゴウ・タカラは、珍しく狼狽した。ピクシースパイスの目がこちらが何を言っても、虚ろで何も届いていないように見えたからだ。


「もう全てがどうでもいい……魔法少女課の仲間もみんな、みんな、お前のせいで死んだし、そのうえ、お母さんまで死んだら、いくら、フォロワーが増えようが、正義の味方をやる意味がない……。あんたのサイドキックぅ?ふざけないでよ。ふざけないでよ!!お前の隣に価値なんて、あるか!!」

スパイスストリングスで今度は、フゴウ・タカラの胴体が細切れに吹き飛んだ。

フゴウ・タカラは、頭部だけとなるが、クラーケンマンの魔人細胞のせいで、ひと思いには死ねず、一歩一歩近づくピクシースパイスに恐怖を植えつけられていく。


何故だ?ボクは、常に踏みにじる側で踏みにじられる事などないはずなのに……、そうなるように十分な教育を受けてきたし、変わったはずなんだ!あの頃のボクとは……ッ!!


激しい動揺から、フゴウ・タカラは、考えるより先にピクシースパイスに向け、口からイカ墨レーザーを発射していた。

が、それは、いとも簡単にピクシースパイスの魔法障壁で防がれてしまう。

ピクシースパイスは、精神的にではなく、肉体的にフゴウ・タカラを踏みにじる事ができる距離まで近づいた。

フゴウ・タカラは、顔の筋肉がひくっひくっと痙攣し始める。


「おい、わかってるのか!?ボクを今、ここで殺せば、お前は、ただの虐殺者だぞ!!サタンソースとブレイブハートの放出機は、どうするつもりだ!?ワクチンは、世界でボクしか手に入れられないんだぞ!?」

フゴウ・タカラは、最後の説得を試みるも、

ピクシースパイスの虚ろな目は、変わらなかった。

「そんなのまるごと、世界ごと消してやるよ」

ピクシースパイスが言っている事の意味を

「へ?」

とフゴウ・タカラは、理解ができない。


「みんな、みんな、消えて失くなっちゃえ!!!」

彼女と怒りと絶望は、全て、そのまま最上級大魔法に変換された。

マジカル テラ・アトミック アルティメット・スパイスストリングスが辺り一帯に広がり、北大阪府シティ中を飲み込み、やがて……




半年後――、

フゴウコーポレーション本社があった場所に時空の穴が空き、童貞3号が降り立つ。

時空の穴が塞がってから、童貞3号は、ゆっくりと立ち上がり、辺りを見渡した。

そこには、何もなかった。

アスファルトもなく、禿げた大地が剥き出しとなった荒野だけが、ただ広がっていた。

「ここは、どこだ?北大阪府シティじゃないのか?来る時代を……いや、世界線を間違えたのか?」

童貞3号は、その場に呆然と立ち尽くした。

違う時間軸から来た彼は、知る由もなかった。

まさか、一人の魔法少女が全てを吹き飛ばしたなどとは――。


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