ダイヤモンドダストVSヘルエクストラ
フゴウコーポレーション本社の分厚い正門を突き破り、敷地内に侵入するヘルエクストラ――。
一般社員の多くいる社屋内にさらに侵入させじと、フゴウコーポレーションの雇った民間兵がマシンガンで射撃し、抵抗するも、ヘルエクストラの魔法障壁に防がれ、次々と幾本もの赤いいばらやイカの巨大な触手に捕まり、触手の根元にある大きな口に飲み込まれ、食われていく。
加鳥花子が死に、アンPNCによる支配から解放されたヘルエクストラは、ヘルメデューサ、ヘルヴァンパイア、桐山美獣、スライスラー、堂田林猛の五人の意識が混ざり合い、統率する人格がいない為、五人の唯一の共通意識である戦うという意思のもと、暴走し、ただの人食いの化け物と化し、周りの人間を無差別に殺戮していた。
それを上空から、
「いいぞ、いいぞ〜。映える映える。こんな化け物をボクが倒したら、圧倒的に映えるし、相当ないいねとフォロワー数、チャンネル登録者数とメンバーズ会員を稼げるぞ。いや、世界トレンド一位も夢じゃない」
と撮影しているのは、ダイヤモンドダストMk17を全身に纏ったフゴウ・タカラだ。
「醜い。醜すぎる。これ以上のボクにやられるいい敵キャラは、いないぞ」
ヘルエクストラは、作り出した加鳥花子自身がなんの医療知識もなく、バイオサイエンティストでもない素人の為、ヘルメデューサ、ヘルヴァンパイア、桐山美獣、スライスラー、堂田林猛五人の肉体をイカの魔人細胞と機械で無理矢理に結合させ、集合体にしたので、まるで肉だるまのゾンビか肉だるまのフランケンシュタインのような大変、醜い見た目をしていた。
ヘルメデューサとヘルヴァンパイアと桐山美獣とスライスラーと堂田林猛五人の顔が肉だるまの肉体にアンバランスな位置で浮き出て、白目を剥き、断末魔を上げたような口を大きく開けた状態で固まっているうえに頭は、一つしかなく、球体的なその身体に付いた幾本もの赤いいばらとイカの巨大な触手は、動きを止めることなく、常にうねっている。
不気味なモンスターでしかない見た目のヘルエクストラと頭上を煌びやかな白銀のヒーロースーツ姿で飛行するフゴウ・タカラとでは、どちらが正義の味方に見えるかと言えば、100人中100人があきらかに後者だと答えるだろう。
ヘルエクストラがあらかた屋外に出た民間兵を食い終わってから、フゴウ・タカラが
「さて、敵キャラの残虐性を伝えるシーンは、もう、いいだろう。次は、戦闘シーンの撮影と行こうじゃないか」
とダイヤモンドジェノサイドアームを高速で振るい、ヘルエクストラの肉体を鞭打った。
ヘルエクストラのダイヤモンドジェノサイドアームで叩かれた肉体の部分が肉片となり、辺りに飛び散る。
しかし、それは、肉だるまのほんの一部でしかなく、致命傷にはならない。
ヘルエクストラの肉体に浮かんだ五人の白目を剥いた顔がゆっくりと移動し、頭上を見上げる。
ダイヤモンドダストの存在を捉えると、ヘルエクストラは、イカの巨大な触手で大地を叩き、ダイヤモンドダストのいる空中まで跳び上がる。
ドッドッドッドッドッドッ!!
12本のイカの触手による速鍵拳が次々と放たれ、炸裂した。
フゴウ・タカラは、それを幾本もの先がナノファイバー並に薄いダイヤモンドジェノサイドアームの鞭打の高速連打で打ち落とし、粉微塵にしていく。
瞬間、細かく切り分かれたその肉片は、赤い霧となって、フゴウ・タカラの視界を塞いだ。
ドスッ
とノーマークだったヘルエクストラの人間の方の腕、桐山美獣の手が生えて、フゴウ・タカラの白銀のヒーロースーツに掌底を打ち込む。
速鍵拳の振動が特殊ナノテクダイヤモンド強化繊維でできた白銀のヒーロースーツの内側に伝わり、フゴウ・タカラの内臓に響き渡る。
フゴウ・タカラは、それを自らの腹部に自ら掌底を打ち込み、打ち消した。
フゴウ・タカラに速鍵拳を操る格闘技術は、無い。
が、彼の手の平には、共振発生装置が取り付けられていた。
速鍵拳による共振攻撃を共振発生装置による共振で相殺させ、打ち消した。
共振を共振で対消滅させた。
化学の力による共振返しである。
「ジャパン・ストロンガーズの戦闘技術は、フゴウコーポレーションの化学技術で全てコピーし、このスーツに搭載させてある。つまり、共振攻撃ができるのは、お前だけではない!」
フゴウ・タカラは、重力に従って、落下し始めていたヘルエクストラに上から掌底を食らわした。
ヘルエクストラは、それを瞬時に自らの身体を魔法石ボディにして、硬くし、受け止めたが、共振発生装置を付けた掌底は、速鍵拳と同様にヘルエクストラの内臓を襲った。
ヘルエクストラの内臓は、破裂し、大地に着地したヘルエクストラは、人間だった五人の口から血を吐いた。
が、イカの魔人細胞の再生能力とヘルヴァンパイアの能力による細胞の活性化により、破裂した内臓は、瞬時に回復、再生し、元通りになった。
「思ってたより、厄介かもしれないな」
フゴウ・タカラは、掌底を喰らわし、ヘルエクストラに触れた共振発生装置が石化していたので、石化の侵食が広がる前に左腕パーツごと取り外した。
すると、新しい左腕パーツがすぐにフゴウコーポレーション本社から飛んで来て、フゴウ・タカラは、それを装着し直した。
その間に地上のヘルエクストラは、フゴウコーポレーションの化学技術によって、強化されたスライスラーの能力を使い、ダイヤモンドダストに向け、かまいたちを投げつけていた。
次々に飛んでくるそれをフゴウ・タカラは、ダイヤモンドダストの飛行能力で避けた。
そして、当然、スライスラーの強化された能力もダイヤモンドダストに搭載しているフゴウ・タカラは、ソニックウェーブを射出し、応戦した。
ヘルエクストラの石化能力を警戒して、近づけないのである。
ヘルエクストラは、ダイヤモンドダストの放ったソニックウェーブを避けずに魔法石ボディで受け止める。
傷一つつかないヘルエクストラを上空から見て、フゴウ・タカラは、
「仕方ない。あまり、使いたくない手だったが……」
と信号を放ち、増援を呼ぶ。
すると、フゴウコーポレーション本社から、すぐにダイヤモンドダストMk16とダイヤモンドダストMk15が飛んで来る。
その2体を操縦するのは、フゴウ・タカラに絶対服従するようにプログラミングされた自律思考型AIである。
「この2体は、ダイヤモンドダストMk17より性能は劣るが、容量の関係でMk17には、搭載できなかったある魔法少女の能力を再現して、搭載してある」
フゴウ・タカラは、言葉を理解しているかどうかもわからないヘルエクストラに向け、わざわざ説明する。
その様子にヘルエクストラは、気持ち不思議がっているかのような動作を見せ、間を置き、フゴウ・タカラを見上げたまま、固まった。
が、すぐに跳躍して、フゴウ・タカラに襲いかかる。
まっすぐフゴウ・タカラに向かうヘルエクストラに向け、Mk16とMk15は、胸部を開き、集音凝縮発射装置を起動した。
音による巨大な衝撃波が空中で避けられないヘルエクストラを襲う。
ヘルエクストラは、吹っ飛び、地面へと墜落し、その巨大な音波攻撃を受け続ける。
徐々に音量が上がっていき、無敵かに思えたヘルエクストラの魔法石ボディの皮膚が剥がれていき、崩れていく。
わずかに残った人間のパーツの耳から血が吹き出て、ヘルエクストラは、抗う術なく、濃密に圧縮された音の波に押し潰されていく。
「フハハハッ!どうだ?単純だが、明快に最強だろ?音による攻撃は。ボクもあの魔法少女に会わなければ、気づけなかった。自分で喰らって、初めて、その能力の有用性に気づき、すぐに開発部に作らせたんだ。この能力のいいところは、強力なうえ、お前の石化の能力と違い、化学で再現できるところだ。どうだ?効くだろ?我々、フゴウコーポレーションがコピーした魔法少女ピクシーミュージックの能力は!!」
「誰の能力をコピーしたんだわな?」
少し♪がつくような弾むイントネーションの少女の声が聞こえたかと思うと、
ダイヤモンドダストMk16とダイヤモンドダストMk15は、巨大な音の波に飲み込まれ、ゾウに踏まれた飴細工のようにパキパキパキと粉々に砕け、空に流されて、散った。
「どうやら、同じ音を使った攻撃でも、魔法と化学じゃ質が違ったようだな」
コバルトブルーのミニスカドレスの魔法少女がそう言って、フゴウ・タカラの眼下の地上に総理大臣 泉 総一郎をポイ捨てして、降り立つ。
それに続いて、オレンジ色のミニスカドレスの魔法少女と薄ピンク色のミニスカドレスの魔法少女も降り立つ。
「お前らは?」
戸惑うフゴウに向かって、
「フゴウ・タカラァー!!私のお母さんをどこにやったぁーっ!!?」
とピクシースパイスが叫ぶ。
「私たちをいいように利用したツケは、払ってもらうぞ。フゴウ・タカラ」
と隻腕のピクシーブルーファイアは、マジカルステッキを構える。
「で、さっきのロボットは、誰の能力をコピーしたんだわな?」
とピクシーミュージックだけ、くちびるを猫のように曲げて、いつもの調子でふざけている。
三人の並び立つ魔法少女を前にし、
「最っ高に映える展開だねぇ」
とフゴウ・タカラは、ダイヤモンドマスクの中で舌舐めずりし、配信用の撮影を続けた。




