クラーケンマンVS????
フゴウコーポレーション本社で緊急防衛作戦本部長として、指揮を執っている柊 香子の前には、クラーケンマン時東 誠人がいた。
「今回の敵である自称魔法少女ピクシーサイバーは、機械を操る厄介な能力を持っているが、白兵戦での戦闘力は、魔法少女候補生と同等かそれ以下と思われる。操っていたジャパンストロンガーズという駒も無くなった事だし、奴を守るのは、解放されたクラーケンマン蝉川秀一ぐらいだ。同じクラーケンマンであるお前には、ブルーファイアとミラージュの能力も備わっているから、楽々と倒せるはず。蝉川秀一を倒した後は、ピクシーサイバーを見つけ次第、殺せ。それで、お前の魔法少女殺しの罪は、免責とする」
と柊 香子に言われて、時東誠人は、ニートだった頃から変わらない寝癖ヘア―の頭をぼりぼりとストレスの溜まった神経質っぽく掻いた後、
「あの、まだ状況を飲み込めてないんですが、俺、本当に久保田に人格を乗っ取られて、魔法少女を食ったりなんかしたんですか?」
時東 誠人は、吐き気を手で抑え、じんわりと充血した半泣きの目で訊いた。
「ああ、ブルーファイアとミラージュの能力を使えるようになっているのが、いい証拠だろ。今は、私の思考ジャックの能力で一時的に久保田 和也の人格を封印してるだけだ。だから、24時間以内に必ず、蝉川秀一を倒して、戻って来いよ。じゃないと、また、久保田の人格が顔を出すからな」
「でも、俺なんかが魔法少女狩りに勝てるんでしょうか。その蝉川という男は、なんの能力も無い状態で何人もの魔法少女の殺害をやった奴なんでしょ?」
「ブルーファイアとミラージュの能力があるのに不安なのか?戦闘経験なら、お前の方が上だろ。この一年、魔法少女課の一員として戦ってきたじゃないか。クラーケンマン久保田 和也に比べれば、容易く倒せる相手だろ」
「はぁ、そうでしょうか」
時東 誠人は、涙目を残しながら、溜息混じりに自信の無さそうな表情を浮かべた。
「どのみち、お前は、戦うしかないんだ。それとも、監獄に戻りたいのか?なんなら、久保田の人格だけじゃなく、お前の人格も私の能力で封印してやっても、いいんだぞ」
すっかり悪役が板に付いてきた柊は、高圧的に言った。
時東誠人は、また、ぼりぼりと頭を掻き、
「わかりましたよ。やるだけ、やってみます」
灰色のスウェット姿でフゴウコーポレーション本社から外へと出て行った。
それから5分もしないうちに、フゴウコーポレーションが雇った民間兵から柊 香子に戦闘が始まったと報告が入る。
が、その民間兵は、報告を終え、部屋を出ていく際に巨大なイカの触手に頭を弾かれ、気を失う。
「蝉川秀一……」
柊のいる緊急で設置された作戦室の出入り口を12本の巨大なイカの触手で覆い、逃げ場を塞いだのは、イカの魔人と化した蝉川秀一だった。
「今度こそ、娘の仇を討たせてもらう」
彼は、PNCを頭に装着し、思考ジャック対策が万全に取れた状態でフゴウコーポレーション社製の超振動ナイフを手にゆっくりと柊 香子に近づく。
「バカな……お前がここにいるなら、時東は、いったい、誰と戦ってるんだ?」
柊 香子は、知る由もなかったが、
その頃、クラーケンマン時東 誠人は、フゴウコーポレーションの正門に叩きつけられ、身体が石化し、身動き一つ取れなくなっていた。
「こんな化け物に勝てるかよ……」
時東誠人がなんとかまだ石化の侵食していない口で、そうボヤいた先にいたのは、
魔法少女ピクシーストーンでもなく、
魔人少女ヘルメデューサでもない。
魔人少女ヘルメデューサと魔人少女ヘルヴァンパイアとスライスラーと桐山美獣と堂田林猛の身体をごちゃ混ぜのミックスにして、魔人細胞と機械で継ぎ接ぎ、一体の化け物にしたイカの巨大な触手と赤いイバラまでもが何本も生えている醜い異形だった。
それにアンPNCを装着させ、操っているのは、
もちろん、加鳥花子だ。
加鳥花子は、自らが能力で再び、集めた車群の中の一台のワゴンの車内に潜み、飛行ドローンから送られてくる映像をスマホで覗き、自らが作った異形のモンスターが時東誠人を圧倒する様子にしっしっしっと銀色の矯正器具が光る歯の隙間から笑い声を立て、悪辣な表情を浮かべる。
「フゴウ・タカラァ。あんたが私に敵を送れば、送る程、こっちの戦力は、増していくんだよぉ。ただの金持ちの坊っちゃんと私とじゃオツムの出来が違うのぉ。私が作った魔人少女ヘルエクストラに蹂躙されて、死になさい。あんたの好きな配信で全世界にその様子を晒してやるからさぁ」
「それは、いかがでしょう?」
加鳥花子の座る運転席の後ろの後部座席から、ライフルの銃口を彼女の後頭部に当てるポイリー・カタルシス。
加鳥花子は、バックミラー越しにポイリー・カタルシスを睨んだ。
「テメェ、ジジイ、どうやって、ここに来た?周りは、飛行ドローンが監視してるはずだぞ」
「ええ、ドローンの死角をかいくぐって、ここまで来るのに、だいぶ時間を要しました」
「だから、ジジイ、どうやって、私がここにいるって、わかったんだよ。衛星からの監視映像も私の能力で使えないはずだぞ」
「この世に魔法を使えるのは、魔法少女だけだと思いますか?」
「当たり前だろ。魔法少女因子は、私ら日本の10代の女性にしか発現しない」
言いながら、加鳥花子は、少し動揺した。
彼女が魔法について、知ってる情報は、ネットに流布する政府の正式見解のみで、彼女は、魔法少女因子専門の研究者でもなんでもない。
「ところが、私には、生まれつき、人の心が読み取れるテレパス能力があるのです。魔法というよりは、超能力ですね」
「超能力だぁ?」
加鳥花子には、ポイリー・カタルシスの言うことが、にわかには、信じれない。この世界に魔法以外に超能力も存在するなんて。
「信じなくてもいいですよ。ただ、あなたのだだ漏れの心の声を追って、私は、ここに辿り着いた。その事実だけが、全てです。真実がどうであれね」
加鳥花子は、ポイリー・カタルシスに喋らせながら、何かこの場を切り抜ける方法は、ないかと考えた。
「電脳ジャックは、このライフルには、使えませんよ。年代物の手動式ですから」
わたしは、こんなところで死んでいい人間じゃ
「いえ、あなたは、ただの物語を盛り上げるやられ役です」
ポイリー・カタルシスは、引き金を引いた。
カチンとした金属音に続いてコンマ何秒かでドウ!!と轟音が鳴り、脳髄と血飛沫がワゴンの車内のフロントガラスに飛び散った。
「タカラ様、完了致しました」
肉片と返り血を顔面に滴らせたポイリー・カタルシスは、テレパシーでフゴウ・タカラに加鳥花子を始末した事を伝える。
「ご苦労」
フゴウ・タカラは、フゴウコーポレーション本社屋上で装着した自らのヒーロースーツを起動した。
「ダイヤモンドダストMk17、発進する!!」
フゴウ・タカラは、屋上から飛び立ち、戦場へと向かう。




