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ピクシースパイス ―魔法少女大戦―  作者: 弥馬田 ぎゃん


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引退した魔法少女たちの最後の戦い

フゴウコーポレーション本社正門の前には、でたらめに多くの車が乱立し、集結していた。

デパートのバーゲンセールに飛び込む主婦達のように無秩序に密集し、迷路のような複雑な並び方をして、様々な車種がフゴウコーポレーション本社正門及びその周囲の道路を封鎖している。

上空から見渡しても、死角が多く、100台を超えるその車達は、要塞の役割を果たしていた。

そのどれかに機械を操る電脳の魔法少女 加鳥花子が潜んでいる。

「フゴウ・タカラァ!!出てこーい!!」

と100台を超える車のうちの街宣車やパトカーのスピーカーから加鳥花子の声が響くがそのどれにも加鳥花子の姿は、見えない。

フゴウコーポレーション本社は、すでに自社の兵器であるスプリングバルーンなどがジャパン・ストロンガーズを倒す為に悪用された事もあり、全ての機械兵器の電源をOFFにし、肉弾戦を得意とする傭兵を揃えて、加鳥花子の襲来を待ち構えていた。

それに対して、加鳥花子の取った手が車群で要塞を作り、自身の姿を消す同じく〝待ち〟の戦法だった。

「おい!フゴウ・タカラァ!!ビビッてんのかぁ!?チン◯ン、ママのお腹ん中に忘れてきたんかぁ!?」

加鳥花子は、スピーカーを使って、罵詈雑言を浴びせたが、もちろん、フゴウ・タカラは、そんな事では、姿を現さない。

何故なら、彼の自慢のヒーロースーツ ダイヤモンドダストは、機械を操る加鳥花子の前では、無力と化すどころか、自らを追い詰める弱点になってしまうからだ。


加鳥花子のヘイトスピーチのような幼稚な暴言が響く中、二人の元魔法少女が年齢に不釣り合いなミニスカドレス姿で空中を飛行し、車群に無防備に近づいてくる。

「戦闘力向上の為とは言え、この姿は、さすがに私らおばさんには、きついものがあるな」

「ああ、親や友だちには、もう見せたくない。こんなのを18まで平気で着ていたなんて、我ながら信じられん」

車群の上空に辿り着くと、ピクシーストーンとピクシーブラッドは、マジカルステッキを握ってない方の互いの拳を

「やるか」

「さっさと済まして、しまおう」

と言って、合わせた。


ピクシーストーン石井 粒子は、自らの全身を石化させ、下界の車に向かって、墜落した。

それは、さながら、隕石が落ちるスピードそのもので、衝突した車1台を粉砕するだけでなく、衝撃波で周りの車をも吹き飛ばし、ひっくり返した。

その間にピクシーブラッド赤井 千代は、車群の外縁がいえんをぐるりととんでもないスピードで走り抜けた。

「う〜ん、見つからないなぁ」

と言い、次々と車のボンネットに跳び乗り、車の天井を両手で掴んで簡単に引っ剥がしていく。

彼女たちの目的は、もちろん、加鳥花子を見つけ出すことで、見つけた後に加鳥花子がどういう目に合うかは、容易に想像できた。

ピクシーストーンは、車に墜落しては、再び、飛行魔法で上昇し、また、新たな車に向かって、自らの石化した身体をぶつけに落下を繰り返す。

ピクシーブラッドもその類稀たぐいまれなる運動能力で走って、跳んで、車の天井を引っ剥がして、中を確認するというのを繰り返し、続ける。

それを繰り返すうち、車群は、徐々にただの鉄くずに変わっていき、視界がひらけてくる。

加鳥花子が隠れている場所が段々と限定されてくる。

機械を操るのが、固有魔法の加鳥花子は、魔法少女OBの二人に比べ、直接的戦闘力に劣る。

戦況は、加鳥花子に不利になっているかのように見えた。

が、魔法少女OB二人の前に巨大なイカの触手が12本ついた銀色のナノテクダイヤモンド繊維の戦闘スーツ姿の男二人が立ちふさがる。

ピクシーストーンの前に現れたのは、スライスラー。

ピクシーブラッドの前に現れたのは、雑な縫い方で首と上半身をくっつけられたカカシのような桐山 美獣だった。

彼らの頭には、暗視ゴーグルのような形のPNCパーフェクトノイズキャンセラーが取り付けられている。

加鳥花子は、本来、柊 香子が使うような操作系魔法能力によって伝えられる洗脳信号を遮断する為に使われるPNCを改造し、自らが機械を操る際に放つ電気信号を人の脳に伝える装置に変えていた。

これにより加鳥花子の電脳ジャックの能力は、柊 香子の思考ジャックと同じ効果を発揮する。

それは、フゴウ・タカラが柊 香子の固有魔法・思考ジャックを化学的に再現しようとしていた研究のデータを加鳥花子が丸パクリして、完成させたものだった。

加鳥花子は、スライスラーと桐山美獣の死体にフゴウコーポレーションからパクったクラーケンマンの魔人細胞を注入し、二人を復活させ、PNCを改造して作ったアンPNCで二人を自らの思い通りに動く傀儡くぐつに変えた。

加鳥花子は、イカの魔人となったスライスラーと桐山美獣の二人に一言

「殺れ」

と命令した。


スライスラーは、ピクシーストーンに襲いかかり、桐山美獣は、ピクシーブラッドに襲いかかった。

しかし、それで形勢を覆される歴戦の猛者・魔法少女OBではない。

フゴウコーポレーションの化学技術力で強化された空気をも切り裂くスライスラーの超振動カッターは、ピクシーストーンの石化した皮膚を切り裂く事は、できなかった。それどころか、ピクシーストーンは、傷一つ負っていない。

ピクシーストーンの身体を覆っている石の皮膚は、ただの石ではない。魔法でできた魔法石だ。

当然、通常魔法の魔法障壁より固有魔法の魔法石ボディの方がずっと硬い。魔法障壁を豆腐のように切り裂くフゴウコーポレーションの超振動ナイフの元となったスライスラーの能力、化学で強化されたとは言え、伝説の世代の魔法には、遠く及ばなかった。

キン!キン!と甲高い音を立て、スライスラーは、何度もピクシーストーンを斬りつけるも、簡単に弾かれ、逆にピクシーストーンの魔法石でできた拳でタコ殴りにされてしまう。


桐山美獣は、速鍵拳を強化した共振発生装置をつけた手の平でピクシーブラッドの肉体を打つ。

当然、ピクシーブラッドの内臓は、粉々に破裂し、爆散するも、ピクシーブラッドは、自らの代謝や運動能力を上げる血液魔法で細胞を活性化。粉々になった内臓を元通りに一瞬で再生してしまう。

再生しながら、反対に桐山美獣の身体に拳を打ち込む。

運動能力の強化されたピクシーブラッドの拳の威力に生理現象的に動きを止めてしまう桐山美獣。加鳥花子に電気信号を送られ、動きを再開させ、今度は、12本の触手で襲いかかるも、ピクシーブラッドの高速で動く手に簡単にさばかれてしまう。

ピクシーブラッドは、何度も言うようだが、歴戦の猛者。魔法能力だけでなく、戦闘技術も一級品。

つい最近まで、ただの医者だった桐山美獣を加鳥花子が操った状態では、肉弾戦で敵うはずはない。


スライスラーと桐山美獣は、自然、戦闘を続けながらも、魔法少女OBの二人から逃げる形となる。

それを放置する魔法少女OBではなく、当然、逃げる敵を追いかける。

スライスラーと桐山美獣と魔法少女OBは、互いに近づいていき、重なった。その瞬間を逃さず、加鳥花子は、スライスラーと桐山美獣をスイッチさせる。

ピクシーストーンの戦う相手を桐山美獣に、ピクシーブラッドの戦う相手をスライスラーに入れ替えた。

すると、戦況は、一変した。


桐山美獣の速鍵拳がピクシーストーンに炸裂する。

ピクシーストーンの魔法石のボディには、当然、傷一つつかないが、速鍵拳の特徴である振動攻撃が内臓まで響き、共振作用でピクシーストーンの内臓は、破裂する。

ピクシーストーンは、ピクシーブラッドのような代謝機能を上げ、自己治癒能力で内臓を元通りするような回復魔法は、もってない為、動きが止まる。

その機を逃さず、桐山美獣の12本の触手による同時多発的速鍵拳がドッドッドッドッと波打つ鼓動のように炸裂。ヒット。ヒット。ヒット。

その全てが致命傷のダメージを与え、ピクシーストーンは、吹き飛ばされた。

その時には、すでにスライスラーは、ピクシーブラッドの四肢を切断していた。

ピクシーブラッドは、血液魔法で代謝機能を上げ、自己治癒能力で肉体を回復する事ができるが、化け物ではない。

一度に四肢を切断されれば、そこからトカゲの尻尾切りのように元通り再生させ、腕や足を生やす事は、できない。

魔法少女OBの二人は、地べたに這いつくばり、虫の息。絶体絶命。後は、トドメを刺されるのを待つばかりとなった。


「考えてる事は、同じか?ブラッド」

「もちろんだとも。ストーン」

以心伝心ができている二人は、同時に


「「仲間たちの元へ行こう!!」」

と叫んで、ほっぺに忍ばせていた2錠目の赤いカプセルを奥歯で噛み砕いた。


二人の魔法少女因子が魔人細胞に過剰に反応し、二人の肉体を一瞬で変えた。

ピクシーストーンの破裂した内臓とピクシーブラッドの切断された四肢が元通りに回復し、二人の身体からは、赤いいばらのようなものが、何本も生えた。


「なんなの?あれは?」

離れた所で隠れて様子を見ていた加鳥花子は、その姿に息を飲んだ。


〝あれは、まるで魔人少女ヘルファイア〟


誰が名付けたわけでもないが、

魔法少女ピクシーストーンは、魔人少女ヘルメデューサに

魔法少女ピクシーブラッドは、魔人少女ヘルヴァンパイアになった。


しかし、そんな姿に怯む加鳥花子ではない。

すぐにスライスラーと桐山美獣に二人を襲わせる。

先程と同様。桐山美獣の12本の触手による速鍵拳が炸裂するが、桐山美獣の触手は、ヘルメデューサに触れた先から石化していき、動けなくなった。

凄いスピードで石化が身体を侵食していき、完全な一つの石像になった桐山美獣をヘルメデューサの魔法石の拳が打ち砕き、桐山美獣は、粉々になり、絶命した。

その時には、すでにスライスラーの首にヘルヴァンパイアがかぶりつき、自らの血液魔法を送り、スライスラーの細胞を活性化させて、ぱんぱんに膨張させ、免疫異常状態にして、スライスラーの細胞自身に爆死を選択させていた。

毛穴という毛穴からスライスラーは、血が吹き出て、骨と皮だけになり、しぼんで、ミイラというより一本のほうきのようになり、ヘルヴァンパイアに吐き捨てられた。


「理性は、保っているか?ブラッド」

「ああ、なんとかな。ストーン」

二人は、互いの身体から赤いいばらが出たグロテスクな姿を見て、シニカルに笑った。

「じゃあ、親玉を処分しに行こう」

「私たちの敵になったのが、運の尽きだな」

二人は、まっすぐ加鳥花子のいる場所へ向かう。

ヘルメデューサとヘルヴァンパイアの感覚器は、すでに加鳥花子の位置を正確に捉えていた。

しかし、そんな二人でも気づけなかった。


  !?


透明な何者かが二人の首を絞め上げるまで、その存在に気づけなかった。

「三体目がいたのか!?」

「かっは……!!」

透明な12本の触手で二人を絞め上げていたのは、アンPNCで加鳥花子に操れ、スライスラーと桐山美獣と同様に魔人化されてしまっていた堂田林 猛だった。

しかし、首絞め攻撃など魔人化した魔法少女OB二人にとって、一瞬だけ動きを止めるだけのものでしかない。二人がかりで反撃すれば、堂田林など相手にならない。

が、堂田林は、加鳥花子に大量の爆弾を装着させられていた。

加鳥花子は、もちろん、そのベストなタイミングで起爆装置を押した。


ピカッと閃光が広がり、爆発と共に巨大な炎が上がる。


ピクシーストーン◯―スライスラー✕

ピクシーブラッド◯―桐山美獣✕


ピクシーストーン✕―桐山美獣◯

ピクシーブラッド✕―スライスラー◯


ヘルメデューサ◯―桐山美獣✕

ヘルヴァンパイア◯―スライスラー✕


スライスラー 死亡

桐山美獣 死亡

堂田林猛 死亡


ヘルメデューサ 死亡

ヘルヴァンパイア 死亡


加鳥花子 勝利


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