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ピクシースパイス ―魔法少女大戦―  作者: 弥馬田 ぎゃん


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古生小梅が魔法少女ピクシースパイスである理由

小学五年生の頃、私は、クラスでいじめを受けていた。

理由は、元々の赤髪が年を追うごとに色素が落ちて、ピンクがかってきたのと、クラスのリーダー格の女子の好きな男子からの告白を私が断ったからだ。

私のお父さんもお母さんも純日本人で私の髪が赤いのは、お母さんが他の男性と浮気したからではなく、突然変異だと物心がついた頃に医者から説明を受けた。

フォトンブラスタと呼ばれる宇宙光エネルギーの波の中を地球は、私が生まれる前から移動中で、その影響で髪や瞳の色が両親と違うなどの軽度の遺伝子異常は、当時から珍しくなかった。

ただ、そのたいして珍しくもない遺伝子異常を起こしているのが、クラスで私だけというのが、問題だった。私は、元から悪目立ちしていたのだ。

だから、クラスのリーダー格の女子のお気に入りの男子に告白された時も本当は、付き合っても、別に良かったけど、断ったのだ。

だけど、その瞬間から私は、クラスの女子から


「あいつ、調子に乗ってるよね」


と言われるようになった。

じゃあ、付き合えばよかったのか、というと、そうではない。みんな、私を吊るし上げる理由が最初から欲しかったのだ。

クラスのリーダー格の女子の扇動で行われた無視、教科書や上履きの紛失、机に卑猥なラクガキ、廊下を歩けば、あっ!ごめ〜ん!とわざと肩をぶつけられる。椅子に押しピンを仕掛けられたり、きっと私が気づいてない事もたくさんされていたに違いない。

私は、それらをなるべく見ないように、気づいてないかのように、まるでイジメられてないかのような態度で毎日をやり過ごした。

両親に相談などできなかった。両親に泣きつけば、自分がイジメられている事を認める事になる。

認めた途端、自分がとても情けない人間になる気がして、誰にも相談できなかった。

ただ、時が経ち、時間が解決してくれることを待った。小学生のまま一生過ごすわけではない。中学生になれば、中学でも無理なら高校生になれば、と私は、状況が好転してくれるタイミングが来るまで、ただ、待ち続けた。

今から考えれば、それは、あまり良い手法だったようには、思えないけれど、結果的に私を取り巻く状況は、私が思っているよりずっと早く好転した。

それは、小学六年生の全国児童健康診断での事だった。

私の魔法少女因子測定結果が陽性になったのだ。

それだけで事態は、驚く程、好転した。

誰が言い出したかは、わからないが、


「魔法で復讐されたら、どうする?」


と誰かが言った一言でクラスメイトたちは、今までイジメていたのが、まるで無かったかのように馴れ馴れしく、いや、あからさまに私をチヤホヤし、おべっかを使うようになった。

前年に私の通う小学校とは別の学校でいじめを受けていた女子生徒が魔法を使って、いじめっ子達を半殺しにしてしまった事件があったのだ。

そのおかげで私の学校での立場は逆転した。今度は、私へのいじめを扇動していたクラスのリーダー格だった女子がはみ出し者になる番だった。

私は、いじめを扇動などしなかったが、彼女が教室の隅に追いやられるのを止めもしなかった。

魔法少女因子が私を救ってくれた。と私は、その後の小学生生活をほがらかに過ごす事ができ、自分の呪いのように感じていた遺伝子異常に感謝すらした。

が、中学に上がってすぐの入学式で私は、三年生の不良少女達に呼び出された。

その中には、小学生の頃、リーダー格で私をイジメていた女子もいて、彼女の姉が私の入った中学のレディースの総長だった。


「私の妹をずいぶんとかわいがってくれたようだねぇ?あぁ!?」

けばい化粧でガンを飛ばすレディースの総長は、身長が175cm以上あり、小学生を出たての私にとって、ほとんど大人と変わらない。

おまけに手には、竹刀しないまで持っている。

不良少女達は、私と総長を円になって囲むようにして、自分達の体で壁を作り、外から見えない状態にした。

そして、レディースの総長は、

「魔法少女因子がなんぼのもんじゃーっ!!」

とキーキー喚いて、私に竹刀を振るった。

私は、丸まって、しゃがみ込み、後頭部を両手で抑えて、守ったが、背中を容赦なく、何度も竹刀で打ちつけられる。

このままでは、ミミズ腫れして、跡が残るかもしれない。

私は、気づけば、大きな声で


「やーめーてぇ!!」


と叫んでいた。酷く現実感がなく、自分の声じゃないみたいだった。

瞬間、私を打ちつけていた竹刀は、弾かれ、二つに折れて、遠くに飛んでいった。


!?


その場の誰も状況を理解できず、私が顔を上げると、そこには、半透明の壁が私を守る形で出現していた。

その時の私は、もちろん、そんな事は、わかっていなかったが、それが私が生まれて初めて魔法障壁を使った瞬間だった。

周りを囲む不良少女達が驚き、レディースの総長も驚き、言葉を失っている。その丸く目が開かれたマヌケ面を見て、魔法障壁を出現させた私自身も驚いていた。

誰も言葉を発さない、ただただみんな驚いている時間がしばらく続き、魔法障壁が消えてから、まず動いたのは、レディースの総長だった。


「テメェ、魔法なんか使いやがって!!」


彼女は、私に馬乗りになり、首を絞めてきた。


「ぶっ殺してやんよ!!」


私は、本当に殺されると思った。

瞬間、私の首を絞める総長の手を掴み、生きようともがく私の手から何かビリビリとしたものが発せられ、総長に伝わった。

レディースの総長は、白目を剥き、ぶっ倒れ、私は、首絞めから解放された。


「ばっ、化け物!!」

不良少女達は、総長を担ぎながら、その場を離れ、私に畏怖の目を向け、そう捨てゼリフを吐いた。

後でわかった事だが、総長は、それから3日間ずっと麻痺の状態が抜けず、一人で食事も排泄もできなかったらしい。

私の固有魔法であるスパイス魔法の効果で間違いなかったが、当時の私は、当然、そんな事は、知る由もなく、多額の慰謝料を請求されるのでは、と毎日そわそわしていた。

が、レディースの総長の入院費にリハビリ代その他諸々諸経費は、政府が払ってくれ、我が家に請求書が来る事は、なかった。

但し、2年後の魔法少女適性試験に是非、参加してほしいとの案内状が我が家に届いた。

お金を代わりに払ってもらっておきながら、私は、中学三年生まで魔法少女適性試験をバックレる気でいた。

魔法少女は、命を失う危険のある仕事だとわかっていたからだ。

魔人達と戦うなど、当時の私からすれば、ありえない事だった。

しかし、中学三年のある日、そう、あれは、その年の全国児童健康診断の後だった。

私の当時の親友が

「小梅ちゃん!私も魔法少女因子測定で陽性出たよ!これで一緒に魔法少女適性試験、受けれるね!」

と言ってきたので、逃げ場が無くなった。

彼女は、小学四年生の頃、あのピクシーブレインに助けてもらってから、魔法少女になるのが、夢だとずっと熱く語っていた。

小学五年生の頃は、彼女も私をいじめるグループにちゃっかり入っていたが、小学六年生から私に対するいじめのムーブが無くなり、中学入学と同時に全校女子の番を張っていたレディースの総長を私が倒してしまい、誰も私に逆らえなくなると、彼女は、また、ちゃっかり私の友だちに戻り、中学三年生の頃には、連れションするのも、お昼ごはんを食べるのも一緒の親友と化していた。というか校内での私の周りは、全員、彼女の友だちなので、彼女無しでの学校生活は、考えられなかった。

私は、この貴重な友だちは、失っては、ダメだと判断し、魔法少女適性試験を受ける事にした。

受けても、かならず、合格するとは限らない。むしろ、私は、わざと、私が落ちるように仕向けた。

実技試験前の魔法少女課人事部による面接で魔法少女になりたい動機について、訊かれた際に

「友だちの付き合いで参加しただけです」

と正直に答えたのだ。

が、実技試験が終わってみれば、Bブロックの合格者は、私だけだった。

私の固有魔法のスパイス魔法は、私が思っていたより強力だった。

というか、実技試験でわかった事だが、固有魔法をすでに使える受験生の方が珍しかった。

魔法少女適性試験を合格するつもりがなかった私は、いつの間にか余裕しゃくしゃくで試験を合格した有望株として魔法少女課の期待を一身に受けた。

それでも、正式に合格通知書を受けても、尚、私は、魔法少女になる気など毛頭なかった。

が、どこからか、いや、一緒に試験を受けた親友からの密告で全校生徒に私が魔法少女適性試験を合格したとバレてしまった。

「小梅ちゃん、魔法少女になるってほんとぉ?」


「え?やばいんだけど?私、小梅ちゃんにフォローされてるって事は、これ、魔法少女にフォローされてるって事だよね?」


「えっ、ずるい、ずるい〜。私もフォローするから、小梅ちゃんもフォローしてよぉ」


「私も」 「私も」


「え〜、古生小梅様に相互フォローして頂きたい方は、この列にお並び、まず、古生小梅様と謁見してください〜」

女子の同調圧力と男子の悪ノリで私の魔法少女適性試験合格は、ちょっとしたイベントと化し、私は、流されるまま、全校生徒のフォロワーとなり、また全校生徒は、私のフォロワーになった。

その時点になって、やっぱ魔法少女になるのは、やめます。とは言えなくなった事に気づいたが、後の祭りだった。

何より、このフォロワーを失うのは、惜しい。

ちょっとだけ、魔法少女として活動して、命の危険を感じたら、即、辞めよう。

私は、そういう軽い気持ちで魔法少女を始めた。

しかし、やり始めるとそう簡単には、辞められなくなった。

フォロワーが100万人を突破したからだ。

私のスパイス魔法は、相手を殺さずに捕らえるのに適していて、その特性から魔法少女中魔人殺害率が0%の私は、親子連れで安心して応援できるお姉さんとして、魔法少女課広報部の行うファンサ会によく参加させられた。

その結果、フォロワーがいつの間にか100万人を超えていた。

不殺の魔法少女、魔法少女課の広告塔などと呼ばれ、グッズ展開され、金銭的余裕と承認欲求が満たされていくうち、私は、いつしか期待に応えなければ、と思うようになった。初めて、人から必要とされている感覚を味わい、魔法少女という仕事にやりがいを見出し始めていた。

しかし、それも長くは、続かない。

大魔人会の魔法少女対策課研究部のDr.ゲルリオンが私のスパイス魔法の抗体ワクチンを作ったのだ。

私は、不殺の魔法少女から最弱の魔法少女と呼ばれるようになり、魔法少女課の広告塔から魔法少女課のお荷物と世間から評価されるようになり、フォロワーが1万人を切るようになった。

それでも私は、一度、やりがいを感じた仕事を辞める事なく、〝正義の為だ。正義の為に正しい事をやっていれば、また、かならず、みんなが正しい評価をしてくれるはずだ。私を必要として、認めてくれるはずだ。〟と頑張って来た。

実際、大魔人会との戦いも終わり、クラーケンマン久保田和也を一度、討伐してから、南大阪自治区から来るテロリストを相手に魔法少女課が戦うようになってからは、私の活躍も増え、フォロワーは、30万人に持ち直した。

なのに私は、ここに来て、お尋ね者になり、テロリストの一味に加わろうとしている。

私は、何の為に今まで必死に頑張って来たのだろう。

私が魔法少女ピクシースパイスである理由は、あるのだろうか。

ただ、いじめられっ子だったあの頃には、戻りたくない。

誰からも認められていない、必要とされていない自分には、もう、なりたくない。

私は、私が誇れる私でいたい。

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