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ピクシースパイス ―魔法少女大戦―  作者: 弥馬田 ぎゃん


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総理官邸襲撃

私は、新大阪都庁の地下13階の特別収容所から脱獄した同日の午後6時北大阪府シティ北野地区総理官邸上空を飛行魔法で浮遊し、様子を伺っていた。

すでに魔人化している魔法少女狩り 蝉川秀一をフゴウ・コーポレーション本部に移送するのに、日本警察や自衛隊の大方の戦力が出払っているとはいえ、政情不安が続く、この2050年の日本では、総理官邸には、ある程度の戦力が常に確保されている。

泉 総一郎総理に直談判すると勢いよく一人でやって来たものの、今現在脱獄犯である私が総理に会うことは、容易ではない。

できるとしたら、力による強行突破しかないが、魔法少女とはいえ、たった一人で私にそれができるか?

最弱の魔法少女と呼ばれているこの私、ピクシースパイスに――。

私は、無い知恵を振り絞った結果、総理官邸の防衛システムに引っ掛からない程の超上空から超高速で飛行魔法で下降し、そのスピードのまま、一気に突切り、総理の目の前まで行くという作戦というかイメージを立てた。

上手くいくかは、わからないが、とりあえず、やってみるしかないと胸に不安を抱えながらも、私が総理官邸の超上空に飛行魔法で到達した時、すでに下界では、戦争が始まっていた。

私より下の総理官邸上空からピクシーミュージックとどろき ひびきちゃんが爆音魔法による無差別爆撃を行い、その響ちゃんを盾にしながら、彼女の少し上空からピクシーブルーファイア藍井ノエルが炎殺魔法による青い炎で爆撃から生き残った人々を燃やし尽くしていた。

ついこの間まで魔人相手に人々を守っていた正義の味方である魔法少女とは、とても思えない彼女達がやっているのは、間違いなく殺戮で虐殺で、銃で抵抗を見せるものの、魔法障壁で簡単に防がれてしまう警備兵が次々と殺されてしまう様は、地獄絵図だった。

こんな事があっていいはずはない。と怒りに震えるものの、今の私には、彼女達と戦っている余裕はない。

今、私が彼女達の前に立ち塞がり、彼女達と戦えば、その間に泉総理は、どこかに逃げてしまうだろう。

そして、一度、本格的に雲隠れされてしまえば、私個人で総理を見つけ出すことは、不可能だ。

この機を逃す手はない。

今なら、彼女達がいい目眩ましになり、私一人なら安々と総理官邸に侵入できるはずだ。

私は、予定通りに超上空から超高速で下降し、飛行魔法のスピードを落とさないまま、総理官邸内に侵入した。

警備兵のほとんどは、外で暴れる二人の魔法少女と戦うのに人員を割かれ、総理官邸内は、予想していた通り手薄だったが、一人の警備兵もいないということはなく、私は、銃で普通に撃たれた。

魔人との戦いに慣れている私は、対人の銃撃戦に不慣れで、少し驚いたが、銃弾は、全て魔法障壁で防いだ。

そして、私を攻撃してきた警備兵は、全員、スパイス魔法で麻痺させ、動けない状態にした。

魔法少女と戦闘する事を想定して訓練していない彼ら彼女らは、もちろん、Dr.ゲルリオンの開発したスパイス魔法の抗体ワクチンなど打っていないので、面白いほど効果は抜群で私は、外の二人とは違い、誰一人殺すことなく、警備兵達を制圧できた。

総理官邸内に入ったのは、初めてだったけど、総理大臣がどこにいるかは、壁に立て掛けてあるマップですぐにわかった。

今のような緊急時にいるかどうかは、わからないし、もうすでに逃げている可能性も考えたけれど、泉総理は、総理大臣 泉 総一郎の名札が表に立て掛けられている部屋の中に一人でいた。

深々と総理の椅子に座っている泉総理は、私を見るなり、

「やぁ」と片手を上げ、「ピクシースパイス、会うのは、二度目だね。今日は、どうしたのかな?私を殺しに来たのかな?」と微笑みかけた。


私は、総理の平然とした態度にくっと息を飲み、緊張した。どこかで味わったシチュエーションに嫌な予感が走るが、私は、不安を振りほどいて、

「違います」

と答えた。

「総理。総理は、今、私のことをテロリストと思っているかもしれませんが、違うんです。全ては、フゴウ・コーポレーションが仕組んだ事だったんです。魔法少女狩りとフゴウ・コーポレーションは、裏で繋がっていて、私達、魔法少女は、嵌められたんです。それだけじゃなく、魔法少女課の柊室長と化学分析班の班長の柳さんもフゴウ・コーポレーションに協力していて、彼らの目的は、裏で魔人細胞の研究を進めることで、……とにかく、フゴウ・コーポレーションは、正義の味方なんかじゃないんです!彼らに日本の防衛を任せては、ダメです!私を信じてください!このままだと日本がフゴウ・コーポレーションに乗っ取られます!」

私が一気にまくし立てると泉総理は、立ち上がり、私に近づいた。そして、

「大事な事を知らせてくれて、ありがとう」

と言って、微笑み、私にテーザー銃をくらわした。

ふいを突かれた私は、全身に電撃が走り、倒れ、動けなくなる。

泉総理は、微笑みを浮かべたまま、私に向かって、

「バカな女だ」

と言った。

「ジャパン・ストロンガーズとダイヤモンドダストを国の防衛組織として認可したのは、誰だと思っている。私が何も知らないわけがないだろう」


「ど、どうして……」

倒れたまま、なんとか口だけ動かし、ついて出た私の言葉を泉総理は、鼻で笑った。


「どうしても、何も、日本が表立って、魔人細胞を研究していると国際倫理規定に違反するとか言ってくるうるさい外国連中が何カ国もいるんでね。フゴウ・コーポレーションに秘密裏に魔人細胞の研究を進めるようにと指示したのは、私さ」


「じゃあ、私達を魔法少女狩りに殺させたのは……」


「私がそんな悪人に見えるか?蝉川秀一が魔法少女狩りを始めたのは、まったくの偶然さ。と言っても、とても都合の良い偶然だったがね。君たち魔法少女は、大魔人会が無くなってからは、利用価値の無い不確定要素の多い危険な国のお荷物だったからね。できる事なら、殺処分したいと思っていた時期にフゴウのぼっちゃんから蝉川秀一が魔法少女を全員殺すつもりで色々と準備し、鍛えていると聞いて、彼を支援するように指示しただけだよ、私は。他に私がやった事と言えば、蝉川秀一を支援する見返りにフゴウのぼっちゃんがアメコミのようなヒーローに成りたがってたから、ぼっちゃんにそのポストを与えてやった事ぐらいだ。あと、蝉川秀一の口封じも頼んだが、タイミングが悪かったね。本当は、君らを全員殺した後が理想的だったんだが」


「どうして、私達が殺されなきゃいけないの?今まで、私達は、この国に尽くしてきたのに……」

泉総理は、私の涙を見て、また笑った。


「だからね。君たちは、この国にとって、危険分子なんだよ。第一、不気味で気持ち悪いだろ。少女の姿をしているのに、魔人と同等の力を持っているなんて。見た目が人間なだけに、魔人よりもたちが悪い。いざという時、国が制御できない力を持つ者、魔法少女因子を持つ者は、根絶やしにするのが、のちの世の為だ。それは、奇しくも外で暴れている二人の魔法少女が証明してくれてる。その点、フゴウ・コーポレーションやジャパン・ストロンガーズは、制御できるからいい。彼らの力の源は、魔法なんて不確定要素の多いものじゃなく、この国の化学技術力だからね」

泉総理は、そう言って、また私にテーザー銃を撃った。痙攣して、陸に上がった魚みたいにもんどり打つ私を見て、また笑う。

「まぁ、いいじゃないか。魔人細胞の医療応用技術が完成すれば、この国の未来も明るい。どんな病もケガも治してしまう、それこそ魔法のような再生細胞技術をこの国が独占すれば、核保有国も二度と日本にでかい顔ができなくなる。〝経済力が落ちて、日本は、終わった〟と言っていた連中の鼻を明かすどころか、これから世界で誰が永遠に生き、誰が死ぬのか、日本人が選別する時代が来るんだ。君たちは、その為の尊い犠牲になれたんだから、誇りに思って、死になさい」

そう言って、また奴は、私にテーザー銃を撃った。

「これを後、何発、撃てば、君は、心臓麻痺で死ぬのかな?なかなかしぶといものだね、魔法少女という人外は」

その後も泉の野郎は、テーザー銃を何度も私に撃ち続けた。

私は、もんどり打ちながら、かっはかっはという息継ぎとヒーホーヒーホーと呼吸音を繰り返しながら、よだれを垂らし、

「このっ……くそっ……やろうっ……」

と言うのが、やっとだった。明滅する視界の中、一度でも気を抜くとそのまま魂を持っていかれそうだった。


「クソ野郎とは、心外だな。私は、国のリーダーとして、為すべきことをしたまでだよ。君たちのような人外ではなく、私のような者を歴史は、ヒーローと呼ぶんだ」

そこで部屋の壁が一面、吹き飛び、爆音が鳴り響く。

泉は、吹き飛んだ壁とは、反対側の壁に叩きつけられ、倒れた。

「馬鹿な。あの兵数をたった二人で倒したというのか……この化け物供が」

テーザー銃を向けようとした泉の片腕が青い炎で燃やされる。

「ぎゃぁああああああ!!」

今度は、泉が熱さでもんどり打つ番だった。

倒れた私を優しい歌声が包み込み、私は陽だまりの中でうたた寝するような幸せなぽかぽかな気持ちになり、すとんと意識が落ちた。



「起きたか?」

私が目覚めるとヘッドフォンをつけたブルーちゃんがワゴン車を片腕で運転していて、私は、その助手席にいた。

「私と轟は、このまま泉総理を人質にして、安全に区境を抜け、南大阪自治区に亡命するつもりだ。お前は、どうする?」

ブルーちゃんに訊かれ、私がバックミラーを見ると、片腕を失った泉が後部座席で響ちゃんに膝枕され、スヤスヤと眠っていた。

「北大阪府シティにいても、私達、魔法少女に居場所は、もう無いぞ。多少、すれ違いは、あったが、今は、私達もお前も同じ指名手配犯で逃亡者だ。南大阪で新しい魔法少女課を作るから、お前も入れよ」

ブルーちゃんは、人が変わったような優しい声音で言った。

「そうそう♪昨日の敵か味方♪」

響ちゃんは、いつもの調子で間違っているが、今の私には、ツッコむ気力が無い。

「南大阪に逃げるって、お母さん、置いてけないよ」

海外に単身赴任中の父は、諦めるとして、娘がテロリスト扱いになってる状態でお母さんを北大阪府シティに残しては、いけない。

「そうか。私達の家族は、もう南大阪自治区に逃がしてるからいいが、そうか。なら、スパイスの家に寄ってくか」

ブルーちゃんは、片手で器用にハンドルを左にきった。

でも、私は、実は、お母さんの事より気になっている事があった。


私の30万人のフォロワー。


私は、このまま日本の魔法少女じゃなく、南大阪自治区のテロリストになってしまうの?


その問いに答えてくれる者は、いなかった。

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