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ピクシースパイス ―魔法少女大戦―  作者: 弥馬田 ぎゃん


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35/54

脱獄

小学4年生ぐらいの頃だったと思う。

私は、一度だけ魔法少女に助けられた事があった。

同じ学校の同級生と互いの母親がママ友である事から、心斎橋にある高級ブランド店の前で母達の買い物が終わるまで、帰りにアイスクリームを買ってもらう約束で待ち、二人でクラスの男子のうち将来、誰が一番、出世するかを話していた。

すると、いきなり、すぐ近くの道路で魔法少女と魔人達との戦闘が始まった。

まだ、魔人発生警報も出ておらず、店内にいる母達は、娘たちの危険など知る由もなかった。

すぐ目の前まで魔法少女と魔人達との戦闘が迫る中、小学4年生の私達二人は、どうすればいいかわからず、ただその場で驚愕しながら、立ち尽くしていた。

ピクシーレッドファイアの豪炎魔法が鏡の魔人によって、跳ね返され、まっすぐに私達に向かって来ても、私達は、身動き一つ取れなかった。

そんな私達を守ったのは、ヘドロの魔人だった。

あともうすぐ、ほんのちょっとのところで私達が豪炎魔法で黒こげになるところをお相撲さんよりでかい巨体のヘドロの魔人が盾になって、守ってくれた。

その隣には、真っ黒なミニスカドレスを着たピクシーブレイン柊 香子がいて、彼女は、私達の方を振り返り、

「すまんな。エマは、戦闘が激しくなると周りが見えなくなる事があるんだ」

と言い、ヘドロの魔人を連れ、彼を盾にしながら、戦闘の中心に向かって行った。

後でわかったことだが、ヘドロの魔人は、ピクシーブレインのブレイン魔法 思考ジャックで操られていたのだ。

つまり、私達を救ったのは、ヘドロの魔人ではなく、ピクシーブレインだった。

やがて、その戦闘が魔法少女の勝利に終わると、

「私、大きくなったら、絶対、魔法少女になる!」

と私の隣の同級生は、言っていたが、

今、考えれば、あれが、あの出来事が私が魔法少女になる決め手だったのかもしれない。

「柊室長、信じてたのに……」

過去を振り返る夢から私は、恥ずかしながら、そんな事をつぶやき、目覚めた。

私は、X字に重ねられた柱に手足を縛られ、何重にも白い拘束具を付けられ、捕らえられていた。

「スパイス先輩、起きたんですか?」

隣には、同じ状態のタイガーちゃんがいた。

おそらく、ここは、新大阪都庁の地下13階の特別収容所だ。

辺りは暗く、私達だけに照明が当てられている。

そこに

「あらあら、いい光景だこと」

と聞き覚えのある声が近づいて来る。

忘れるわけがない。

「お前は、……」

名前は、知らないが、近づいて来て、照明で露わになったその女は、金髪のボブヘアで灰色のミニスカドレスを着ていて、あの40階のエレベーター前で戦ったブロック師匠の仇で間違いなかった。

「お前が何で、ここに……まさか」

私達を殺しに来たのか?

だとしたら、万事休すというやつだ。

この状態では、抵抗しようもない。

私が苦々しくも、怯えた目でもしていたのか、

「安心しな。私は、あんたらを始末しに来たんじゃない。むしろ、その逆。同盟を結びに来たのさ」

と金髪ボブヘアの女は、偉そうに言った。


「スパイス先輩、この人、誰ですか?」

とタイガーちゃんが私に訊く。


「魔法少女狩りの仲間よ。あんた達、裏で繋がってたんじゃないの?」

私の問いにタイガーちゃんは、ぶんぶんと首を横に振る。


「私は、ブルー先輩の言うことをただ聞いてた言いなりのデクなんで」


よくその意思の無さで人生の分岐点になるような決断したな。この娘、絶対、ホワイト案件とか言われて、闇バイトに手を出しちゃうタイプだ。


「あっ!わかりました!ブルー先輩に言われて、私達を助けに来てくれたんですね!」

とタイガーちゃんは、楽観的なことを言った。エレベーターごとブルーちゃんを一階までぶち落とした奴が、ブルーちゃんの言うことなど聞くだろうか。


「いんや、ブルーファイアと私は、もう仲間じゃなくてね。でも、あんたらを助けに来たというのは、当たらずとも、遠からず、かな?」


おどけた調子をわざと作って喋り、イニシアチブを握るグフ子ちゃんの模造品に私は、苛立ち、

「どういう意味?」

と睨んだ。


「条件次第じゃ、あんたらをここから逃がしてやってもいいって意味よ」


「条件って、何よ」

私は、焦らした言い方をする金髪ボブヘアの女をさらに強く睨んだ。


「フゴウ・コーポレーション北大阪府シティ本社に移送されるおじさん、魔法少女狩りを私と一緒に強奪してほしい」

と言われて、私とタイガーちゃんは、しばらく黙ったが、私は、

「何の為に私達がそんな事を?ここを脱獄したら、あんたの言うことを聞く理由が私達には、無いわ」

と冷静に返した。

「第一、そんな事をすれば、私達は、テロリストになる」

私のその言い分を金髪ボブヘアの女は、鼻で笑った。


「あんた達は、とっくに捕まった時点でテロリスト扱いになってるわよ。いつまで正義の魔法少女のつもりぃ?それどころか、今すぐ、ここを出なきゃ死刑確定よ」


「そんな、私は、何も悪い事をしてないのに。正しい事しかしてないのに、そんな事になるわけがない」

私は、金髪ボブヘアの女の言うことなど信じなかった。


「じゃあ、何で捕まってると思うの?表じゃあんたも魔法少女狩りの仲間だって事にもう、なってるのよ。政府に反旗を翻した裏切りの最低最悪の魔法少女ピクシースパイスってのが、今のあんたの世間での位置づけなの。わかる?」

私は、金髪ボブヘアの女の言葉に頭の血管が熱くなる。


そんな、だったら、私の30万のフォロワーは、いったい?


「だからって、私に悪に染まれと言うの?」

と私が問うと金髪ボブヘアの女は、面白そうに表情を動かした。


「あんたら、魔法少女って、そもそも正義なの?魔法少女狩り蝉川秀一は、本当に悪?蝉川愛子の命は、奪われて、当然の命だった?視点を変えて、ごらんなさいよ。蝉川秀一側から見れば、彼を主人公とする物語からしてみれば、あんた達、魔法少女こそが悪よ」

言われて、ぐっと私は、息が詰まる。

が、すぐに

「だから、私達、魔法少女は、殺されても、当然だとでも?殺された魔法少女にも家族がいたのよ。友人だって、慕う人だって、たくさんいたのに……お前らは、師匠を……!!あの人は、無慈悲の魔法少女と呼ばれていたあの人は、本当は、情に厚くて、仲間想いで、誰よりも優しい……決して、殺されて、当然の人なんかじゃなかった!!」

と言い返す。


「殺されたから、殺し返しただけじゃない。私は、それを手伝った。それのどこがいけないの?復讐のどこがいけないの?仮にあんたが今、師匠とやらの為に私を殺したとして、それは、正義になるの?それとも復讐?その線引きは、誰がするの?何が正しくて、何が正しくないのかは、誰が決めるの?政府?国?法律?結局、あんたら、体制側に就いてる奴らが、勝手に決めてるだけでしょ?正義面して、上から目線で何もかも決めつけるテメェらが気に入らねぇって、こっちは、言ってんだよ!!ダボが!!」

金髪ボブヘアの女と私は、しばらく無言で睨み合った。

やがて、金髪ボブヘアの女の方が冷めた表情になり、先に睨むのを止め、

「まぁ、私が偉そうに説教垂れる立場じゃないっかぁ。おじさんに酷い事してんのは、私もあんたら、魔法少女と何も変わらないしね。でも、だからこそ、おじさんを助けたいんだよね。おじさん、下手に魔人細胞なんて、打ち込んじゃったから、死ねないから、このままだと、一生、フゴウ・コーポレーションに解剖し続けられる事になりそうなんだよね。私一人で助けに行くのは、戦力的に心許ないから、協力してくれない?上手くおじさんを取り返せたら、あんたらも一緒に南大阪自治区に行ける逃走ルートとその後の生活は、もう、こっちで用意してるからさ」

と言ってきた。


私もさっと熱くなるのを止め、

「戦力を補強したくて、来たの?だったら、残念ね。私達は、捕まった際に、もう退化剤を打たれてる。魔法少女としての能力は、もう無いのよ」

と言ってやったが、言った後に何もそこまで正直に言う必要は、なかったと後悔した。魔法少女としての能力の無い私達は、こいつからすれば、用無し。どんな行動に出るか、わかったもんじゃない。


金髪ボブヘアの女は、不気味に歯の矯正器具を見せて、笑った。

そして、

「そんなもん、私がすでに手を打ってあるに決まってんだろ。あんたらに打った退化剤は、偽物だよ」

と言った。


私は、素直に驚いたけど、そんなわけがない。

「あんたになんでそんな事できるの?できるわけないでしょ」

私が言うと、部屋がぱっと明るくなり、室内は、白一色で目が痛くなる。こつこつと足音を立てて、来たのは、極端に背の低い男性。

「俺が協力したんだよ」


「柳さん」


「俺も一緒に南大阪自治区に逃げる事にしたよ。向こうで研究員として、いいポストで雇ってくれるようだから」


「一度、裏切った人をどう信用しろと?」

私は、彼からそっぽを向いた。


柳さんは、私の足元まで近づいて来て、

「ピクシー、こんな時に言うべきじゃないと思うが、俺は、ずっと君の事が」

と言ってきたので、私は、彼の言葉を遮り、

「わかってるから、いちいち言わないで」

と言った。

「わかったわ。南大阪自治区に逃げるまで、私達は、あなた達に協力するわ」

という私の言葉を信用し、金髪ボブヘアの女は、私とタイガーちゃんの拘束を魔法障壁を圧縮させ、細い糸状にしたもので綺麗に寸断し、解いた。


「魔法障壁には、こういう使い方もあるのよ」

「覚えておく」

と解放された私が言うと、金髪ボブヘアの女は、

「加鳥花子よ。これから、よろしく」

と手を差し出して来た。

私は、彼女からマジカルステッキを奪い取り、

魔法障壁で作ったレンガ程のブロックを彼女の腹部に飛ばし、撃ち込んだ。


「あの時の仕返しか」

と加鳥花子は、腹部を抑え、呻いた。


「血は、出てないでしょ。あなたと違って、加減したもの」

私は、腹を抑え、うずくまる加鳥花子を見下ろした。

「私があんたの仲間になるわけないでしょ」


私の言葉に加鳥花子は、目を丸く見開く。

「どういうことだ!?今ので、チャラ。私達と同盟し、おじさんを助けてくれるんじゃ」

私は、間髪入れず、

「テロリストを助けるのも嫌ね」

と言った後、

「私は、泉 総一郎総理の元へ行く。彼に直談判してフゴウ・コーポレーションの不正を告発し、魔法少女課を元に戻してもらう」

と宣言した。


「ピクシー、無理だ。不可能だ。そんな事は、やめるんだ!」

私は、柳さんにも魔法障壁でできたレンガ程のブロックを腹部にくらわせ、黙らせる。

加鳥花子が持って来た私の戦闘服である薄ピンク色のミニスカドレスを奪い、飛行魔法で私は、その場から飛び去った。

「あ〜、どうせ、無駄なのに、馬鹿な女」

と加鳥花子が言うのが、背後の遠くから聞こえたが、私は、構わず、飛行スピードを上げた。

テロリストで人生終わってたまるか。

私は、魔法少女ピクシースパイスだ。

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