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ピクシースパイス ―魔法少女大戦―  作者: 弥馬田 ぎゃん


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柊 香子の追憶 偽善編

私とあの女は、魔法少女適性試験を合格した。

私は、ピクシーブレイン

藍井エマには、ピクシーレッドファイアという

魔法少女ネームが与えられた。

私と藍井エマは、すぐに魔法少女としての頭角を現した。

私の生物を思いのままに操る魔法・思考ジャックは、魔法少女因子増幅機であるマジカルステッキで強化され、魔人に対しても、有効であることがわかり、敵である魔人達を次々と操り、同士討ちまたは、自殺させた。歴代の魔法少女達が苦戦してきた魔人達をなんなくほふる私には、無敵の魔法少女という二つ名が付けられ、

巨大な炎を発生させ、自由にそれを操る藍井エマには、豪炎の魔法少女や炎の魔法少女というわかりやすい呼び名の他に正義の魔法少女という二つ名が付けられた。

本職の魔人退治の他に魔法少女課の広報活動として、藍井エマは、よく自然を守ろうをテーマにした緑化ボランティアや恵まれないこどもたちの為のチャリティイベントなどの慈善活動を休日返上でやらされていた。

引退した先輩の魔法少女達に代わって、次の新世代の魔法少女を呼び込む為、藍井エマは、広告塔として魔法少女課に完全に利用され、魔法少女のエース、THE主人公としてのプロデュースを受けていたのだ。

能力的には、私が現役の魔法少女達の中でNo.1だったが、いかんせん、私は、能力的に見た目が地味だった。

人を思いのままに操る能力なんて可視化できない。

端から見れば、私の能力は、敵が勝手に自滅していってるだけで、私自身は、何もしていないように見えるのだ。

それに比べ、赤い炎を操るという藍井エマの能力は、強力なうえ、わかりやすく、見た目的に派手だった。

どちらを広告塔にすべきか、魔法少女課の上層部は、冷静に判断し、私じゃなく藍井エマを選らんだ。

結果、スターダムにのし上がったのは、藍井エマで私は、No.2に甘んじた。

それは、私にとっても、都合が良かった。

藍井エマは、主人公として前線でバリバリと戦い、私は、No.2として影からサポートする役に徹した。

例に上げるなら、藍井エマの放出した炎が敵から大外れした時に敵を操り、敵の方から炎に当たりにいくようにしたり、攻めてばかりで防御がおろそかな藍井エマの盾に敵の肉体を使ったりした。

何故なら、敵を操るという無敵能力を除けば、私は、一人の少女に過ぎず、直接的な攻撃方法も防御方法も持ち合わせていなかったからだ。

私は、攻撃をするにしても、防御をするにしても、敵を操るという間接的なワンクッションを置かなくてはいけないという弱点があった。

敵を操る前にスピード勝負の攻撃を仕掛けられたら、もしくは、私の視界に入りきらない程の物量で囲まれ、四方八方から襲われたら、私は、一人の人間だ。

一つの脳で処理できない多勢で攻め込まれたり、認識できないスピードで襲われたりしたら、終わりなのだ。

それを敵に気づかせない為にも藍井エマというTHE主人公は、いい目眩めくらましとして、機能したし、私の戦闘での生存率を飛躍的に上げてくれた。

戦闘で目立った活躍をして出世するより、まずは、生存する事が第一だ。18歳になり魔法少女を引退する時まで私は、死ぬわけにはいかない。

生きなければ、出世もクソも先が無いのだ。

それに別に目立たなくとも、戦闘での私の他の魔法少女に対するサポートも上層部は、ちゃんと評価してくれているらしかった。

No.2というポジションは、そういう意味で私にとって、旨味のあるポジションだった。

何も主人公になるだけが、人生ではない。

そうやって、周りや私に利用され、魔法少女のエースという役割を与えられて、人生を搾取されているだけなのに、いつも微笑みを絶やさない優等生のあの女が私は、腹立たしかった。

だから、私は、ある時、言ってやった。


「まったく、よくやるわよね」


「ん?香子ちゃん、何が?」

と藍井エマは、小首をかしげる。


「正義の魔法少女なんて、言われちゃってさ。そうやって、善人ぶる事にどれだけの意味があるの?今は、ちやほやしてるけど、世間なんて、あんたが何かに失敗したり、少しでも悪いとこ見せたら、全員で袋叩きにしにくるのよ?それとも、一生、正義の味方でいるつもり?」


「一生かどうかは、わかんないけど、私は、できるだけ、私の理想とする自分でいたいかな。妹も見てるし」


「妹だぁ?」

藍井エマには、藍井ノエルという妹がいる事は、こちらが聞いてもいないのに、藍井エマがよく話すので、知っていた。

いつも、妹が。妹が。と――。


「妹は、私のことを完璧な善玉、常に正しい人だと思ってる節があるのよね。私だって、たまにイラッとする時ぐらいあるし、世の中になんの不満もなく、生きてるわけじゃないけど、妹が見てると思うと、妹を失望させたくないっていうか、いつまでも、妹が誇れるお姉ちゃんでいたいって思っちゃうんだよね」


「フッ、シスコンかよ」

私は、できるだけ吐き捨てるように言ったが、藍井エマは、それで表情を崩すことは、なかった。


「でも、正しい人間や優しい人間をやってる方が楽なんだよね。電車でお年寄りに席を譲ったり、道に迷っている人がいたら、教えたり、案内したり、倒れてる人がいたら、手を差し伸べたり、大丈夫ですかって、声をかけたり、そういうのしないで、全部、無視して通り過ぎていくのって、気分が悪くならない?誰かを助ける自分でいた方が、気分がいいでしょ?誰かに、ありがとうと言われたら、単純に嬉しいじゃない」


「そういうのをなんて言うか、知ってるか?偽善って、言うんだよ」

私は、また、吐き捨てるように言った。


「でも、世の中は、そういう偽善で成り立っているのよ、香子ちゃん。人間なんて、所詮、他の生命を殺して、犠牲にして、生きている本質的には、悪なんだから」

その時だけ、藍井エマの瞳が少しかげっているように私には、見えた。


「それって、大魔人会の首領のドボスが信仰してる悪魔崇拝の宗教と同じ考え方じゃないのか?」

大魔人会の首領ドボスは、人間を悪だと断じ、人類を滅ぼすのが、星の意思だとのたまい、自らは、ダークという神から力を授かり、人類抹殺の任を受け、この世に生まれた使徒であるなどとほざいている。

藍井エマが言ったのは、それに通ずる考え方だ。


「ごめん。正義の魔法少女が言うべきことじゃなかったね。今の無し無し。忘れて。っていうか、私と香子ちゃんの間だけの秘密にしといて」

私は、その時点で藍井エマの異変に気づくべきだったのかもしれない。

いや、気づかなくても、上層部に藍井エマの言動について、神経質でも報告すべきだった。

しかし、あの頃の藍井エマをNo.1から引きずり落とすような報告を上げるのは、現実主義者リアリストの私からすれば、あり得ない選択だったのは、間違いない。

藍井エマは、私にとって、気に食わない存在だったが、ただの魔法少女課の広告塔ではなく、主柱だった。

あの頃、もし、告げ口なんかで藍井エマから私がNo.1の座を奪っていたなら、個性様々な魔法少女達を私は、エースとして、まとめ上げることが、できなかったろう。

それに私は、思考ジャックで何度も藍井エマを助けていたが、それは、藍井エマとて同じことで、思考ジャック使用中にがら空きになっている私の背中側から私を襲う敵を炎で燃やし尽くしてくれていたのは、藍井エマだった。

私達は、仲良しこよしの友達ではなかったが、互いの実力は認めているいいビジネスパートナーだった。

だから、私は、上層部に仲間を売るような真似は、しなかった。

だが、今から考えれば、あれは、私の偽善だった。

仲間を売るどうこうの考えを持つ前に不安要素が一つでもあるなら、上層部に報告すべきだった。

あの女に看過されていたのか、私は、私なりに正しくあろうとしてしまい、最悪の結果を招いてしまった。

今は、ただ後悔だけが胸に残っている。

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