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ピクシースパイス ―魔法少女大戦―  作者: 弥馬田 ぎゃん


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VSクラーケンマン

ピクシースパイス・古生小梅は、エレベーターが落下した衝撃による気絶から目を覚ました。

エレベーター自体がすでにひしゃげていて、床が割れ、砂埃のような煙で視界が不明瞭だが、飛び出した扉から見える景色は、どうやら、一階のフロントのようだった。大型搬入口のエレベーターの最下階だ。

普通なら死んでいるだろうが、ピクシースパイスは、とっさに自らの周りを魔法障壁のキューブで囲み、防御していたので、即死をまぬがれ、気絶するだけで済んでいた。

とは言え、ガードした魔法障壁の中でシャッフルされた為、軽い脳震盪を起こしていて、思考を動かすのに、しばしの時間を要した。

隣でピクシースパイスを取り押さえていたことにより、同じようにピクシースパイスの魔法障壁のキューブの中で衝撃から守られていたピクシータイガーが、目を覚ます。

ピクシースパイスは、自らを閉じ込めていた魔法障壁のキューブを解き、身構える。

ピクシータイガーは、獣化の魔法で青白い光を放つホワイトタイガーに姿を変えると、言った。



「スパイス先輩、ここは、私に任せて、逃げてください」



ピクシータイガーの視線は、ピクシースパイスにではなく、一階のフロントに向いていた。

砂埃のような煙が完全に晴れると、そこには、幾本もの巨大なイカの触手に覆われた肉体のクラーケンマンが、すでに魔法能力を失っていた魔法少女二人の死体をばりぼりと音を立て、食していた。



「なんだ、目ぇ、覚ましやがったのか。魔法障壁が解けたら、お前らも食ってやろうと思ってたのによぉ」



口周りを血だらけにし、ぼとぼとと滴らせているその白い顔は、やはり、最後の敵性魔人久保田和也――。

時東誠人の意識は、一欠片も残ってないように見える。

ピクシースパイスは、ピクシーブロックとの修行により以前より、ずっと強くなったはずだった。

が、久し振りに敵として相対するその魔人には、身震いを覚えた。



「スパイス先輩。エレベーターの天井が割れて剥がれているので、そこから上層階に逃げて、ブルー先輩を止めてください。ブルー先輩の姿がここにないということは、ブルー先輩は、すでに柊室長を殺しに向かったはずです」



「タイガーちゃん、なんで?」

ピクシースパイスは、白虎と化し、敵から反転して、自らを守ろうとするピクシータイガーに疑問を投げかけた。



「やっぱり、私が間違ってました。魔法少女同士で殺し合いなんて、最初からしちゃいけなかったんです。スパイス先輩は、裏切り者なのに、私を守ってくれた……」

ピクシースパイスは、意図してピクシータイガーを守ったわけではなかったが、ピクシータイガーは、良いように勘違いしていた。


「本来、魔法少女のあるべき姿は、そういうことですよね、スパイス先輩。ここは、私が食い止めるので、スパイス先輩は、ブルー先輩を止めに行って下さい」


柊 香子元室長を守ることの重要性。柊 香子元室長は、渾名のとおり、魔法少女課のブレインだった。

彼女の指揮無しには、魔法少女課の存続は、ありえない。しかし、その魔法少女課は、すでに解散している。

今更、柊元室長を守って、どうなるというのか。

魔法少女ピクシーブルーファイア・藍井ノエルの復讐を邪魔して何になるのか。

しかし、そんな理屈よりもピクシースパイスは、自分の内から出る行動に従った。


「本当にここを一人で任せて、大丈夫なの?タイガーちゃん?」


「はい」

ピクシータイガーの返事を聞くやいなや、ピクシースパイスは、飛行魔法でエレベーターの天井の割れ目をくぐり抜け、上層階へと向かった。



「俺を食い止めるだぁ?ただ虎になるしか能の無いガキが言ってくれるねぇ。覚悟は、できてんだろうなぁ」

クラーケンマン久保田和也は、イカの触手の奥にある第二、第三の口で元魔法少女二人を平らげると、触手をうねうねと唸らせ、ピクシータイガーへと近づいていく。



「虎がイカに負ける話なんて、聞いたことありませんよ」

ピクシータイガーは、虎に変身したまま、エレベーターからフロントに出て、苦笑いを浮かべた。



クラーケンマン久保田和也は、ぴたりと立ち止まり、

「お前、俺が何故、人を食うか、わかるか?」

とピクシータイガーに訊いた。


ピクシータイガーは、食人者の思考など読み取れないので、答えようがなかった。


「クラーケン大魔人ラブリーは、食べた人間の能力を保有することができる。つまり、その特性を受け継いでイカの魔人となった俺が、魔法少女を食うとどうなるか?」

言って、久保田和也は、背中側のイカの触手から、今まで隠していたコバルトブルーの服の袖口がついたちぎれた細い片腕を見せた。

ピクシータイガーは、一瞬でそのちぎれた片腕が誰のものであるか見抜いた。


「ブルー先輩!!」

ピクシータイガーは、自分が思い違いをしていた可能性に行き当たる。つまり、姿の見えないピクシーブルーファイアは、柊 香子を殺しに上層階に向かったのではなく、すでにクラーケンマン久保田和也によって、食われていた、という可能性――。

冷たい汗をピクシータイガーが感じる中、久保田和也は、彼女の目の前でその人間の片腕を平らげる。

そして、イカの触手から青い炎を放出させ、見せびらかすように操ってみせた。


「これだけじゃないぞ」

と久保田和也が言うと、久保田和也の身体は、段々と透明になっていき、消えた。

「ブルーファイアがエレベーターで俺から血の匂いがすると言ってたろう?誰の血の匂いだったと思う。お前ら、裏切り者の魔法少女のもう一人の仲間、ピクシーミラージュの血の匂いさ」



「そんなミラージュ先輩がやられるわけない!!」

ピクシータイガーは、獣の身体で少女の悲鳴のような声を上げた。



「フン。奴が姿を消せようが、どんな幻を見せようが、魔人の俺には、匂いで奴の位置がわかったから、楽勝だったよ。幻を見せる以外は、ただの10代の女子だからな」

久保田和也は、新大阪都庁のフロント中に響く大きな悪趣味な笑い声を上げた。

「獣化の魔法なんざいらないが、お前も食って、俺の一部にしてやるよ!!」

ざわざわぺちぺちと姿の見えない久保田和也のしなったイカの触手によって、破壊されていく周りを見ながら、ピクシータイガー・白井しろい大河たいがは、獣の喉を鳴らす。

そして、勢いよく、飛びつき、空中にかぶりついた。

そのまま、空中にかぶりついた頭部を浮かせ、宙ぶらりんになる白い虎――。


「うがぁ!!」

と堪らず、声を上げ、透明化の視覚的幻覚を解き、姿を現す久保田和也。

ピクシータイガーは、獣の牙でしっかりと久保田和也の首元にかぶりついていた。


「バカね、自分で言っておきながら、それだけ血の匂いを漂わせて、獣化した私の鼻があんたの位置を嗅ぎ分けられないわけないでしょ!!」


「ぐぬぬ……!!ちょこざいな!!フン!!」

久保田和也は、首の頸動脈をしっかり白虎のピクシータイガーに咥えられ、噛み絞められ、血が流れてる状態で首にうんと力を入れた。

すると、久保田和也の首は、みるみるうちに肥大化し、ピクシータイガーのあごが外れそうな程の大きさに膨れ上がった。

「さっきの元魔法少女二人分の生命力を込めた!!もう、お前の牙なんぞ蚊程も通らんぞ!!」


ピクシータイガーは、それでも噛みついた首を放すまいと渾身の力を込めたが、鞭のようにしなるイカの触手の一撃で弾き飛ばされた。

壁に衝突し、久保田和也と距離ができる。

ピクシータイガーは、再び、獣の喉を鳴らし、戦闘意欲を見せる。



「このアマぁあ!!レアで頂きたかったが、ヴェルダンにしてやるぜぇ!!」

久保田和也は、黒目いっぱいの目を血走らせ、冷静さを失い、合計で48本ある全身の巨大なイカ触手から青い炎を立ちがらせた。

そこに、


「な〜に、なになに、もうおっぱじめちゃってんじゃないの?」

と新大阪都庁の職員でない見たこともない肉体にフィットした銀色のスパッツ素材のようなスーツを着た5人の男が入ってくる。

「フゴウ様は、なんて言ってたっけ?とりあえず、裏切りの魔法少女だけ、殺せばいんだっけ?」

5人の中で一番ヤンチャそうな髪をハネハネにセットした男だけが喋る。

「まぁ、いいや。俺らで全員、殺しちゃおうぜ」


その軽口男に久保田和也は、怒りの眼光を見せる。

正体不明の男達とクラーケンマンとの戦いが、今、始まる。

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