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ピクシースパイス ―魔法少女大戦―  作者: 弥馬田 ぎゃん


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19/54

復讐者達の話し合い

時間にして、約1分、体感は、もっと長かったが、蝉川秀一は、北大阪府シティキングホテルの地下駐車場で残った右目でピクシーブルーファイアと見つめ合っていた。

いや、実際は、蝉川秀一がブルーファイアを睨んでいて、ブルーファイアは、静かな感情の読み取れない目でそれを眺めていた。

蝉川秀一は、今にも娘の仇の一人であるブルーファイアに飛び掛かり、殺してやりたかったが、ピクシーロストが死んでからも、ピクシーロストの喪失魔法は、健在で四肢の感覚がなく、指一本動かせなかった。

パチパチと手を叩く音が近づき、蝉川秀一の視界に加鳥花子が入る。



「初顔合わせですな、お二人さん」



加鳥花子は、愉快そうな表情を浮かべて、二人を見ている。



「どういう事だ?この魔法少女は、お前の差し金か?」

蝉川秀一は、初めて加鳥花子に向け、怒りを露わにする。

「元々の手筈では、俺がオトリになって、ピクシーロストの気を引いている間にお前が2メートルの範囲外の後ろから、ピクシーロストをフゴウコーポレーション社製のショットガンで撃ち殺すはずだったろう?」


確かに加鳥花子は、小脇にショットガンを抱えていた。彼女もそのつもりで、車体の影に隠れていたのだ。

「悪りぃっす。ちょっと面白そうな展開になりそうだったんで、見学してたっす」



「何が面白いだ!俺は、左目をえぐり取られたんだぞ!」

蝉川秀一は、動けないまま、地面にぺたんと人形のように座ったまま、加鳥花子に怒鳴りつけた。

加鳥花子は、それに反省の色を見せない。



「だから、全身やけどした時に頭部にも魔人細胞を注入すべきだって、私、言ったじゃないですか〜。そうしたら、今頃、おじさんの左目も再生してたのに」



「馬鹿か!そんな事をすれば、俺の意識がクラーケン大魔人ラブリーに乗っ取られるだろーが!!」

蝉川秀一は、全身やけどの瀕死の状態から回復する為に大魔人会の最高幹部だったクラーケン大魔人ラブリーの魔人細胞を肉体に注入していた。

クラーケン大魔人ラブリーの魔人細胞は、他の魔人の魔人細胞より再生能力が高く、一時期、再生医療への活用も検討されていた。が、再生医療に結局、使われなかったのは、ラブリーの魔人細胞を注入した者が、ラブリーに意識を乗っ取られる可能性が非常に高かったからだった。

蝉川秀一は、そのリスクを承知の上で自らに魔人細胞を注入し、イカの魔人となった。

すべては、己が娘の復讐を完遂する為に――。

「私の目的は、魔法少女を全員、ぶっ殺す事だぞ!なのに、なんで魔法少女なんぞに助けられなければ、いけないんだ!!」

蝉川秀一は、苦悶に表情を歪めた。



「全ては、魔法少女を全員葬る為っす。これも計画のうちっすよ、おじさん」



「了承した覚えは、ない!!」

と敵意を丸出しの蝉川秀一に、



ブルーファイアは、

「安心しろ。蝉川秀一。私もお前と同類だ」

と優しい声音を発する。

「私も身内を魔法少女に殺されている」



「魔人少女ヘルファイアの事か?」

蝉川秀一は、魔法少女達に復讐するにあたり、魔法少女達の事を調べ尽くしていた。

当然、魔法少女の家族の事も――。

ブルーファイアは、蝉川秀一の言葉に眉間にシワを寄せ、眼光を鋭くする。



「私の姉は、レッドファイアだ。ヘルファイアじゃない」

声こそ荒げなかったが、その瞳には、確かな復讐心が宿り、迫力があった。

蝉川秀一は、思わず、その迫力に気圧される。



「まぁ、まぁまぁまぁ、ブルーファイアちゃんの目的も魔法少女を殺す事、私達の目的も魔法少女を殺す事――。お互い利害が一致しているわけです。仲良くしましょうよ〜」

とわざと緊張感のないおどけた声を作って言う加鳥花子。



それに水を差すように、蝉川秀一が

「ちょっと待て。俺が娘の復讐に殺す魔法少女には、お前も含まれている。まさか、復讐に協力するから、自分だけは、殺さないでくれ、とでも言うのか?」

とブルーファイアに向かって、言った。



「構わない。目的が達成された後なら、私を殺してもらっても」

と言ったが、これは、ブルーファイアの嘘だった。

ブルーファイアの目的は、魔法少女に対する復讐だけではなく、魔法少女機関の乗っ取りであった。

姉を殺した魔法少女課を潰し、自らの手で理想の新しい魔法少女課を作り上げる。

その為に邪魔となる魔法少女を全員、蝉川達に殺させ、蝉川達には、新しい魔法少女課設立の為の動機きっかけとなる新たなヴィランになってもらう。

そして、最終的には、口封じを含めて、蝉川達には、死んでもらうつもりでいた。

しかし、そんな事は、ブルーファイアは、おくびにも出さない。

あくまで純粋な蝉川達の協力者のフリをした。

隠した真の目的の為に今まで魔法少女の位置情報などを加鳥花子にリークし続けて来たのだ。

ここで真の目的を感づかれる、もしくは、怪しまれでもしたら、全てが台無しだ。

ブルーファイアは、表情を消して、蝉川秀一を見つめる。

ここで、この男に拒否されたら、すべての計画が頓挫とんざする。



「俺に魔法少女を信じろ、と、お前の言葉を信じろ、と言うのか?」

蝉川秀一は、疑り深い目でブルーファイアをまっすぐに見上げる。

ブルーファイアは、蝉川秀一を説得するのに、何も用意して来なかったわけではない。

ブルーファイアには、ちゃんと切り札があった。



「私を信用してもらうわりに、あなたが一番、殺したいであろう女を殺させてあげる」

蝉川秀一の右目がめぇいっぱいに開き、ブルーファイアを凝視する。

「一年前の大魔人会の首領ドボスとの最終決戦で、マジカル テラ・アトミック ビッグバンの使用を計画し、許可した女」

ブルーファイアは、蝉川秀一の瞳孔が広がっていくのを確認し、交渉の勝利を確信する。

「魔法少女課室長 柊 香子の首をあなたに差し出す」

その後、魔法少女課本部があった新大阪都庁に復讐者達は、潜入する。ついに、本格的な戦争が始まりを告げた。

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