五稜閣会議
元魔法少女課室長 柊 香子は、新大阪都庁最上階に呼び出され、五枚の巨大な光学フィルターと対峙していた。
五枚の光学フィルターには、最新の通信機器が取り付けられており、通信先にいるのは、五稜閣と呼ばれる日本の5人の権力者だ。
表向き魔法少女課は、新大阪都庁所属の政府直轄部隊だったが、実際に仕えているのは、この五稜閣であった。
日本政府さえも五稜閣のメンバーの決定には、逆らえない。というよりも、この100年近く前から日本の重要な決定は、全て五稜閣が行っており、日本政府は、その傀儡にすぎなかった。
日本を実際に牛耳っているのは、この五稜閣の5人の権力者であり、魔法少女課を生み出したのも、五稜閣であるが、その存在は世間では、知られていない。
柊 香子もその存在を知ったのは、魔法少女課の主任に就任してからである。存在を知っているのは、日本の総理大臣と各省庁の重要人物、他十数名だけである。
その姿、年齢、性別、すべて非公開ながら、日本を支配し、実権を握っているたった5人。
この5人の正体を過去に探ろうとした者もいたが、全員、消されている。
どうやら、魔法少女課以外に独自の特殊部隊五稜閣オーナーズクラブという組織を所有してるらしく、自らの邪魔になる者は、その組織の部隊によって、抹殺しているらしいのだ。
だから、柊 香子は、五稜閣の正体を知ろうとした事もなければ、逆らった事もない。ずっと服従しているし、これからもそれが変わることはない。
今回、柊 香子が五稜閣に呼び出されたのは、魔法少女狩りについてである。
「蝉川秀一。46歳、元フゴウコーポレーション勤務」
と柊 香子と同じように呼び出された公安部長の國神 玄武が、蝉川秀一のデータを読み始める。
彼も五稜閣の存在を知る数少ない人物の一人だ。
「この一年の間にムエタイやサンボ、他にも様々な格闘技ジムを渡り歩き、自衛隊の予備役としての訓練も受けたようです。三ヶ月前から海外の傭兵会社に所属し、戦場に出て生きて帰って来ています」
五稜閣A「何故、そのような人物が魔法少女狩りを?」
訊かれ、柊 香子が答える。
「お忘れですか?彼は、一年前の大魔人会の首領ドボスとの最終決戦でのマジカル テラ・アトミック ビッグバンで死んだ唯一の民間人犠牲者蝉川 愛子さんの父親です」
五稜閣B「ああ、あの時のか。しかし、彼には、ちゃんと賠償金を払ったはずだが、何故、復讐を?」
「親としての当然の心では、ないでしょうか?」と柊は、答える。
五稜閣B「しかし、金は、ちゃんと受け取ったわけだろ?」
柊 香子は、これに無言で応じる。
國神が「戦場に行く為の渡航費や格闘技ジムへの支払い、フゴウコーポレーションを退職してからの生活費、妻の入院費にあてているようです。贅沢をした形跡は、ありません」と柊の代わりのように答える。
五稜閣C「いずれにせよ、これは、このような人物を野放しにしていた公安の失態ではないのかね?」
「返す言葉もございません」
と國神は、五枚の光学フィルターに向け、頭を下げた。
五稜閣D「魔法少女の殺害には、フゴウコーポレーションの兵器が使用されていたのだろう?何故、ピクシースパイスが写真を持ってくるまで、犯人を特定できなかったのかね?」
「容疑者には上がっていたのですが、居場所を特定できず、事後の報告になってしまったのは、我々の失態です」
國神は、先程よりも深く頭を下げた。
五稜閣D「フゴウコーポレーションは、兵器の流出について、なんと回答しているのかね?」
「兵器の流出については、気づかなかったと。退職した社員については、把握していないと」
國神は、申し訳なさそうな口調で言った。
五稜閣D「杜撰な会社だな」
五稜閣E「しかし、一人でここまでの事ができるか?支援している者がいるはずだ。それは、特定できているのか?」
「捜査中です」
國神がそう言うやいなや、五稜閣の一人が激怒した。
五稜閣A「警察は、何も仕事ができていないじゃないか!!何をやっとるんだ!!」
國神が柊の隣で凍りついたように青くなる。
柊 香子は、そこで狙いすましたように
「ご心配なさらず、五稜閣の皆様方」
と言い、
「近く魔法少女狩りは、捕まります」
と断言した。
五稜閣C「ほう、その根拠は?」
「私を殺しにこの新大阪都庁にやって来るからです」
と柊 香子は言い、
「私を殺した後、魔法少女狩りは、捕まります」
と再び、断言し、それから
「それが未来予知の魔法少女ピクシーオールディクショナリーが予言した未来です!」
と高らかに声を張り上げた。
柊 香子は、自らの死を覚悟していた。
ピクシーオールディクショナリーの未来予知が外れる事がないのを元魔法少女課室長として熟知していたからだ。
この日、五稜閣全員の判断で魔法少女狩りについての全権が柊 香子に一任される事になった。




