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ピクシースパイス ―魔法少女大戦―  作者: 弥馬田 ぎゃん


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弥馬田グフ子からの手紙

ピクシースパイス古生小梅は、弥馬田グフ子の魔法少女カフェ全焼の報を受けてから、後悔の念にさいなまれていた。

焼け跡から弥馬田グフ子の遺体は、発見されなかったとは言うものの、弥馬田グフ子がそこで寝泊まりしていた事はあきらかで、今までのパターンから言って、弥馬田グフ子が正体不明の魔法少女狩りにすでに殺されている可能性は、非常に高い。

とピクシースパイスは、思っていた。

あの時、なんで自分は、もっと強く弥馬田グフ子の護衛をすると主張しなかったのか。例え、本人に断られても、無理矢理にでも24時間体制で彼女を守るべきだった。大切な同期の仲間で友だちだったというのに――。

しかし、後悔などしている暇はない。

正体不明の魔法少女狩りの次のターゲットは、自分かもしれないし、生き残っている仲間のうちの誰かかもしれないし、かわいい後輩の元魔法少女候補生達かもしれない。

昨日の魔法少女カフェ全焼と弥馬田グフ子の行方不明を受けて、政府もやっと重い腰を上げ、元魔法少女候補生達を保護シェルターで警察の護衛をつけ、守ってくれると確約してくれた。

こちらが望めば、ピクシースパイス達元魔法少女の事も保護してくれるらしいが、魔法少女狩りが狙ってる可能性が高いのに、魔法少女候補生達と同じ場所にいるわけにはいかない。リスクは、分散しなければならない。かわいい後輩達を巻き添えにするわけにはいかない。

ピクシースパイスやピクシーブルーファイアやピクシータイガーは、一人でいる事は、最も危険と判断し、元魔法少女同士で集まり、互いで互いを守ろうという判断をし、仲間達に号令をかけたが、結局、生き残りの元魔法少女全員は、集まらなかった。

元々、持っている固有魔法の能力が強い魔法少女は、自信家が多い。自分の身ぐらい自分で守れるというのが、彼女達の主張だった。

ピクシースパイスには、そんな自信は無かった為、ブルーファイアが自分を守ってくれると言った事は、正直、心強かった。

しかし、一つ懸念というか心配があった。

両親のことだ。

魔法少女狩りは、何をしてくるか、わからない。

もし、両親を人質にでも取られたりしたら……、そう思い、ピクシースパイスは、実家の両親を保護シェルターに連れて行く為、迎えに行った。

自分一人では、不安な為、実家の前までピクシータイガーについて来てもらい、待機してもらう。

ピクシースパイスが実家の玄関を開けると彼女の母は、



「あらぁ〜、入れ違いね。さっきまで、グフ子ちゃん、ここであなたの事、待ってたのよ」

と言った。



「えっ!?グフ子ちゃん、来てたの!?なんで、知らせてくれなかったの!?」

ピクシースパイスは、のんびり口調の母がなんでもない事のように言うので、憤慨した。



「だって、グフ子ちゃんが敵に傍受される危険があるので、やめてくんさいって、言うんだものぉ〜。私、悪くないわ」



「敵に傍受?」



「はい、これ」

とピクシースパイスは、母からハートのシールで封がされた封筒を受け取る。



「これは?」



「グフ子ちゃんからよ」



ピクシースパイスは、弥馬田グフ子からの手紙を読んだ。

「君がこれを読んでいるという事は、私は、もうこの世には、いないという事だろう。なんちゃって〜♥グフフのフのグフ子ですよぉ。スパイスちゃん、こうやって手紙でやり取りするなんて、ワタシたち、まるで禁断の恋でもしてるようですねぇ〜。スパイスちゃんは、その気は、ありますか?私は、残念ながら、無類のダメおじ好きです。そんな事、もう知っていやすよね。話題は変わりますが、魔法少女狩りに命を狙われたので、私は、逃げます。どうやら、彼には、仲間がいるようなので、姿をくらます必要があるのでげす。なので、どうか探さないで下さい。魔法少女カフェの店員ちゃんたちには、店は、しばらく休業するとお伝えください。あと、店に火を点けたのは、あくまで魔法少女狩りで、ワタシ自ら放火したのでは、決してないので、保険会社に火災保険を振り込むようワタシの代わりに言っといてくんさい。ちなみに魔法少女狩りの名前は、蝉川秀一。一年前、ワタシたちのマジカル テラ・アトミック ビッグバンで死んだ少女の父親です。彼をチェキした写真を同封しておいたので、ご確認おば、しておいてくださりませませ」

ピクシースパイスが確認すると、封筒には、手紙以外に写真が一枚、入っており、スーツ姿で全身、白濁まみれになった中年男性の顔が、はっきりと映っていた。

手紙の文章は、まだ終わりではない。

最後の一行に、こう書かれていた。

「追伸、私たちの中にいるブルータスに気をつけろ」



「ブルータス?」

しかし、ピクシースパイスは、歴史のその有名人をまるで知らなかった。



それから一日前の夜、国道をワゴン車が走っていた。

運転するのは、いつものブレザー姿ではなく、グレーの作業着姿の加鳥花子だった。



「おじさん、生きてるぅ〜?」

加鳥花子は、運転しながら、車の後部座席に話しかける。

後部座席には、全身が焼けただれた男性がエジプトのファラオのミイラのように仰向けに寝そべっていた。



「どうせなら、焼かれる前に助け出してほしかった……」

蝉川秀一は、ほひほひ呼吸音を響かせながら、言った。



「無茶、言わないでよ。あの炎の中、消防士でもないのに飛び込んで、おじさん、助け出して、今、運転免許もないのに、ワゴン車、かっ飛ばしてんだからさ。もっと感謝してよ」



蝉川秀一は、それに答えなかった。



「もしもーし、おじさん?死んだ?」



それにも、蝉川秀一は、答えない。



「マジかよ。冗談じゃねぇよ。サイアク」

加鳥花子は、運転しながら、ハンドルを強く叩いた。

「くそ、ヤバい検問だ」



制服警察官達が道路でバリケードを作っていて、加鳥花子の運転するワゴン車を止める。

運転席側の窓を下ろし、加鳥花子は、白ヘルメットの制服警察官に不機嫌な顔で、


「なんですか?」

と訊く。



「この付近で放火事件がありまして、その犯人を追っております。どうか、ご協力を。身分証をご提示下さい」

と警官に言われ、加鳥花子は、不機嫌な態度を崩さず、ワゴン車に貼られた「FC」のロゴを指差し、


「これ、見えないんですか?」

と強気に言った。

警官は、最初、怪訝な表情を浮かべていたが、車体に貼られたロゴを確認すると、敬礼し、



「フゴウコーポレーションの方でしたか。これは、失礼、致しました!」

と言って、頭を下げた。

加鳥花子は、警察の検問をノーチェックでパスして、ワゴン車を再び、走らせる。



「ふ〜っ、耐えたぁ〜!フゴウコーポレーション様様だな、おい!」

ワゴン車は、蝉川秀一を乗せ、まっすぐにフゴウコーポレーション本社へと向かう。

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