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ピクシースパイス ―魔法少女大戦―  作者: 弥馬田 ぎゃん


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復讐者の協力者の過去 蝉川愛子編

私(加鳥花子)は、宿敵・弥馬田グフ子に勝利する為、弥馬田グフ子を調べ尽くした。

弥馬田グフ子の父は、元最高裁判事の弥馬田ドム男。弥馬田ドム男は、自らが死刑判決を下した囚人が脱獄し、妻と二人の娘と共に殺されている。

弥馬田グフ子は、一家の唯一の生き残りで、家族が殺されてからは、児童養護施設「白鳥の園」で育つ。

魔法少女になってからは、自立し、北大阪市内のマンションで一人暮らし。魔法少女としての活動をしてない日は、コンビニでバイト。西中島南方高校に在籍しているが、不登校。IQ158。

調べれば、調べる程、こっちがわけのわからなくなる謎の多い女だった。

不幸な生い立ちによる精神破綻であの性格、あの言動をしているのか、と易く想像はできるが、奴の不気味さは、過去の不幸など軽く凌駕しているようにも思える。

私は、普段から弥馬田グフ子の喋り方や仕草を真似て行動してみる事にした。そうする事で奴の思考を読み取り、奴に少しでも近づき、奴に対抗する為に。

IQ158の天才に勝つには、それぐらいの方法しか私には、思いつかなかった。

異常な性格に悪魔の頭脳、最強の創造神のスペック。

奴一人を始末するにしても、相当な遠い道のりに思えた。

本当に私一人で魔法少女全員を始末する事などできるのだろうか。

私は、すでに面が割れている。復讐を完遂するには、第三者の協力が必須に思えたが、私の周りにそんな事に協力してくれそうな人材は、いなかった。

魔法少女全員を殺す為なら、なんでもやるような執着、魔法少女に強い恨みを持つ、自分の命を投げ出す事すら、厭わない無敵の復讐者。そんな人間、簡単には、見つかるはずもない。

私は、高校生活を捨てて、学校をサボり、ひたすら魔法少女達のストーキングに勤しんだ。

しかし、魔法少女達の情報を集めようにも、肝心の彼女らの戦闘能力は、魔人との戦いがいざ始まってしまうと、警察が一般人が立ち入れないように規制線を張る為、知る術が私にはなかった。

が、ある日を境に私は、ストーキングしている魔法少女達より気になってしまう人物を見つけ、その娘に視線が釘付けになる。

10歳ぐらいの普通の女の子らしい恰好をした少女なのだが、その少女は、警察が張った規制線をほぼ素通りするようにくぐり抜け、毎回、出入りしているのだ。

魔法少女と魔人の戦いがすでに始まっている危険地帯なのに、警察は、毎回、少女が目の前を通り、規制線を越えていくのを何も見ていないかのように、スルーしている。



お偉いさんの娘か何かか?



と私は、少女が何らかの政治的特権を持っているのだろうと予想を立て、ある日、その少女が規制線から出てきたところを話しかけてみた。

お偉いさんの娘と知り合いになっていて、損はない。何か魔法少女への復讐の突破口になる気がして、私は、少女の背中から話しかけた。

少女は、スマホの画面に映った今さっき録画してきたらしい魔法少女と魔人が戦う姿を満足そうに見ていたが、



「ねぇ。あなた、毎回、魔法少女と魔人の戦いを見に行ってるようだけど、どうして、警察に止められないの?」



と私にストレートな疑問をぶつけられると、ビクッと跳び上がり、こっちを振り向いた。



そして、

「お姉さん、私が見えるの?」

と心底驚いた表情で私を見て、言った。



お姉さん、私が見えるの?だって?



私は、一瞬、幽霊にでも、話しかけてしまったのかと肝を冷やした。

が、私に霊感がある覚えは、まるでない。



私は、

「それって、どういう意味?」

と強気に訊いた。



少女は、

「ウフフ」

といたずらっぽく笑った。



「お姉さんも魔法少女のファン?」

と少女は、訊いてきた。



私は、魔法少女への復讐を考えてる者よ。とは、当然、言えず、

「そうよ」

と答えた。



「誰が推し?」

と少女は、質問を重ねた。



私は、とっさに

「弥馬田グフ子」

と答えた。



少女は、それを聞いて、

「ピクシートラップ!最強の魔法少女!!」

とパッと表情を弾けるように明るくした。

そして、

「私の推しはね〜。ピクシースパイスなの」

と訊いてもいないのに、答えた。

「ピクシースパイスとピクシートラップって、コンビで戦う事が多いよね!バディみたい!」



「そうね」

としか私は、答えられない。



「ねぇ、ピクシースパイスとピクシートラップが魔人と戦ってるとこ、近くで見てみたい?」

と少女が訊くので、



私は、敵情視察がしたかったので、

「もちろん、見てみたいわよ」

と答えた。



「今度、ピクシースパイスとピクシートラップが出動したら、現場に来なよ!私が案内してあげるから!」

と少女が自信満々に言うので、私は少女が何でそんな事ができるのか、理由もわからないまま、魔法少女と魔人が戦闘してるところを見せてもらう約束を取り付けた。

少女は、蝉川愛子という自らの名を私に教え、走って去って行った。



翌週、ピクシースパイスとピクシートラップと魔人との戦闘があり、蝉川愛子は、私との約束を果たした。

警察は、私達が規制線を越えていくのを何も見ていないかのように、スルーして止めなかった。

私は、やはり、蝉川愛子は、とんでもない権力者の娘なのだろうか、と思ったが、あの後、散々、ググったり、ウィキペディアを使って、調べたりしたが、蝉川姓のそれらしい権力者などいなかった事を思い出す。



では、この蝉川愛子という少女は、何者なのだろうか。



答えは、規制線の中に入り、すぐに出た。

私達がすぐ側にいるのに、ピクシースパイスもあのピクシートラップ弥馬田グフ子も魔人もまるで私達などいないかのように、戦闘を続ける様子を見て、私は、感づいた。



「あなた、ひょっとして、魔法を使っているの?」



「ウフフ、バレたか」

と愛子は、またあの時のようないたずらっぽい笑顔を浮かべた。



「お姉さんにも見えるようにしてあげるね。いや、見えなくか」

そう言って、彼女は、自らの右の人差し指を消して見せた。



「実際に透明にしてるんじゃなくてね。人の脳に存在を認識できなくする魔法なの。ピクシーミラージュ先輩は、透明にするだけじゃなく、幻も人の脳に見せれるから、それと比べたら、私のなんて全然、ショボいけど。お姉さんの脳にも最初、効かなかったみたいだし」



「あなた、魔法少女なの?」



「ううん、まだ魔法少女じゃないよ。将来的には、なるつもりだけど」



そりゃ、そうだ。魔法少女は、適性試験に受かって、15歳の就任式を終えないとなれない。

どう高く見積っても、10歳そこそこの彼女がなれるわけがない。

しかし、だからこそ、脅威だ。

彼女は、あきらかな固有魔法を使いこなしている。

現役の魔法少女ですら、そのほとんどが、魔法少女因子増幅機であるマジカルステッキがなければ、固有魔法を使用する事ができない。

なのに、この蝉川愛子という少女は、マジカルステッキ無しで固有魔法を発動し、完璧に操作している。

能力的にピクシーミラージュより今は、下と言っても、ピクシーミラージュなんてあと3年もすれば、引退する。が、彼女、蝉川愛子は、これから成長するのである。今でさえ、充分に強力な能力と言えるのに、これで、もし、彼女が15歳になり、本当に魔法少女になったら、その能力は、未知の恐怖としか言いようがない。

見えない兵器がいかに強力かなんて、語らなくても、わかりきっている事だ。



こいつは、今のうちに始末しなければ、後々、大変なことになる。



が、一方で私は、こうも思った。



こいつの能力を使えば、あの弥馬田グフ子を簡単に始末できるのではないか。



実際に今、弥馬田グフ子は、蝉川愛子の魔法能力によって、私を認識できていない。

認識できていない相手にトラップ魔法の発動もクソもない。

心底、今、殺傷能力のある武器を持っていない事が悔やまれるが、今じゃなくてもいい。

この蝉川愛子を上手く利用すれば、いつか、弥馬田グフ子どころか魔法少女全員を始末できる機会が巡って来るかもしれない。

若い芽を今のうちに摘んでおくか、それとも利用するか。

その時、私は、後者を選び、



その後も魔法少女のファンだと自らの正体を偽り、蝉川愛子との交流を続けた。

何も知らない蝉川愛子は、私を自宅に上げ、自らが撮影し、保存している過去の魔法少女達と魔人との戦闘映像を見せ、自らの考察を熱弁したり、非公式の魔法少女のファンクラブの魔法少女っ子倶楽部の会員限定の配布物「魔法少女大百科事典」を貸して、読ましてくれたりもした。

魔法少女大百科事典には、各魔法少女の能力と弱点が事細かに分析され、書かれており、大変、参考になった。

敵に塩を送るまねを侵すとは、まさに、この事ではないだろうか。

何度も蝉川愛子の自宅を訪問するうち、彼女の父親である蝉川秀一とも顔を合わせる機会があった。

初対面の時、蝉川愛子が私を



「友だちの加鳥花子ちゃん」



と紹介したが、蝉川秀一は、



「あ、どうも」

と挨拶しただけで、すぐに奥の書斎に引っ込み、その後も彼と私の間で蝉川愛子が死ぬまで、会話らしい会話が取り交わされる事は、なかった。

ずいぶんと陰気な父親だな、普通、小学生の娘が友だちだと言って、女子高生連れて来たら、もっと何かあるだろと当時の私は思ったが、



蝉川愛子は、

「お父さんには、私が魔法、使える事、内緒ね。お父さん、私が魔法少女になる事、反対みたいだから」

とかなり父親を好いているみたいだった。

世の中には、こんな父親と娘の関係もあるのだな、と思った。

我が家では、私は、父親をゴミのように思っているし、向こうは向こうで、私をただの金食い虫だと思っている。

だからと言って、蝉川家を羨ましいとは、全然、思わなかったが。



運命の日――。

ついに私は、魔法少女への復讐を果たせぬまま、魔法少女達と大魔人会の首領ドボスとの最終決戦の日を迎えてしまう。

世界から悪の魔人供が一匹残らず、消えてしまえば、おそらく、魔法少女は、世間からその存在意義を失い、一年後には、解散させられる。


魔法少女が魔法少女で無くなったら、私の復讐に本当に意味はあるのか?


私の存在を否定した魔法少女が、世間から魔法少女は、もういらないと存在を否定されたら?


私の鬱屈した気持ちは、どこにぶつければいい?


その頃の私は、かなりナーバスになっていた。

今から考えれば、魔法少女が世間から否定されようと、魔法少女が魔法少女課が、私の心を踏みにじった事には、違いないのだから、殺す理由はあっても、生かしておく理由はないのだが、その時の私は、そんな小さなことで悩み、精神的に不安定だった。

蝉川愛子は、蝉川愛子で落ち着かない様子だった。

当然だ。自分が魔法少女になる前に魔法少女達が全ての魔人を倒してしまい、世界が平和になれば、彼女自身が魔法少女になる理由がなくなる。

つまり、それは、自らの夢が叶わなくなる事を示す。



「どうしよう?これって、魔法少女の最後の戦いだよね。見に行った方がいいかな?見に行かない方がいいかな?見に行ったら、邪魔になるかもだから、やっぱ見に行かない方がいいよね?」

彼女は、一人の魔法少女候補であると同時に筋金入りの魔法少女マニアで最終決戦を見に行きたい気持ちと戦っていた。



「いいじゃん。最終決戦だよ?見に行きなよ。これを逃したら、もう、魔法少女の戦う姿は、見れないんだよ?」

私は、ニュースで魔法少女最上級魔法マジカル テラ・アトミック ビッグバンが使用される可能性があるので、戦闘区域には、絶対に近づかないように、と避難勧告が出ているのを知っていた。

が、蝉川愛子は、ニュースを見る習慣がなく、まるでその事を知らないようだった。



「でも……」

と行くか行かないか、迷っている蝉川愛子に、

私は、



「最終決戦だし、マナちゃんの魔法で魔法少女さん達を助けて来なよ。そうすれば、マナちゃんは、魔法少女さん達の仲間になれるし、この世界を救ったのは、マナちゃんって事になるよ」

と口走っていた。別に彼女に恨みがあったわけではない。彼女が死ねばいい、とも思っていない。

ただ背中をぞわりぞわりと這う冷たい興奮に脳が侵されていた。

魔法少女候補たった一人を殺せない人間に魔法少女全員を殺せるか。逆を言えば、彼女一人を殺せば、変な迷いも消え、魔法少女全員を殺せる人間になれる気がした。

道を一歩、踏み外せば、簡単に人を殺せる完璧なヴィランに自分が変貌できる確信があった。

何かが確かに疼いていたのだ。

過去にした選択など関係ない。変わるなら、今だと身体の内側から最大限の爆音が響いていた。

私は、それに従い、悪の奴隷になった。

だが、自然とそれに付き従うのが、なんだか気持ち良かった。

変な話、それが自分にとって、正しい気がしたのだ。



「私の魔法で魔法少女を助けるの?」



「マナちゃんの魔法は、マナちゃんが思ってるより、ずっと強力なのよ」



「そんなこと私にできるかな?」

不安気に私に視線を合わせる蝉川愛子――。



「マナちゃんなら、できるよ」

私は、彼女の瞳をまっすぐに見つめ、両手を握り、鼓舞した。

彼女は、それに背中を押され、



「うん、私、行って来るよ!魔法少女を助けて来る!」

と力強く、旅立った。

あとの流れは、世間の皆が知っている。

「亡くなられた方を繰り返しお伝えします。マジカル テラ・アトミック ビッグバンによる死亡が確認された民間人の犠牲者は、蝉川愛子さん10歳です」

というニュースが繰り返し、何度も放送されたからだ。

ただ皆、そんなニュースは、時の流れと共に忘れてしまった。

たった二人以外は。

彼女の両親以外は。

一人は、壊れてしまったが、もう一人は違う。


「おじさん、マナちゃんの仇の魔法少女達に復讐したくなったら、いつでも私に言ってね。私、手伝うからさ」

と私が、ちゃんと葬式で復讐の火種を植えつけておいたからだ。

蝉川愛子の父親の蝉川秀一が勤めているのは、日本の魔人対策兵器を一手に引き受け、開発しているフゴウコーポレーション。

魔法少女全員の殺害に色々と役立ってくれるのは、間違いなかった。

強い復讐心があり、自分の身体がいくら傷付こうとも、厭わない。

そういう協力してくれる無敵の復讐者がいなければ、作ればいいのだ、こうやって。

私は、自分の才能にうっとりしながら、心斎橋の元喫茶店の一室で包帯だらけの蝉川秀一を見下ろし、彼には、聞こえないボリュームの声で、

「ごめんね、おじさん」

と言った。



あんたの娘、殺したの、魔法少女じゃなくて、本当は、私なのよ



蝉川秀一は、その事実を知らない。

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