表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【マルチエンド】追放勇者は孤独の道を征く  作者: 空夜キイチ
第一部:黎元の英雄 廻
501/573

闇に輝く光明

 

 マモンを連れてユルグはシュネーの雪山を登っていた。目的は大穴がある祠。四災と交渉するためだ。


『しかし……交渉すると言ってもそう上手くいくものか?』

「さあな。こればっかりはやってみないと分からない。でもこれ以外に妙案も浮かばない。賭けるしかないだろ」

『石版の解読もまだまだ掛かりそうだしなあ』


 四災を相手取るには細心の注意を払う必要がある。なんせ相手は神の如き存在なのだ。人間一人の命など奪うことは造作ない。


 だからこそこちらも欲を急いてはならない。

 今のところ火急なのは祠に溜まっている瘴気だ。あれをどうにかしなければ先日のような魔物がまた現われたっておかしくはない。

 山小屋に住んでいるミアの安全、ひいては麓の街のことも考えれば野放しにしておくわけにはいかないのだ。


「最低でもあの匣の中身はどうにかしてもらおう」

『うむ、そうだな。最悪、己が請け負ってなんとかするというのもあるが……そうなればただでさえ少ない寿命をさらに縮めることになる。それはなんとしても避けたいところだ』


 ユルグの寿命について。彼はこれを自業自得だと言った。黒死の龍を斃すためには必要なことだったと。ユルグはそう考えている。

 しかしマモンにとってはそうですか、と納得できるものではない。


 魔王として生きてきたマモンにとって、器である者たちの死は避けられない事象であった。瘴気を浄化するには致し方ない犠牲で、今までのマモンはそれを良しとしていたのだ。

 けれど今のマモンは魔王としてではなく、ただのマモンとして生きることを選んだ。それは誰でもない、自らの心に従って選択したこと。


 口喧嘩もするし仲も良くはないが、マモンはこの無愛想な隣人をなくすには惜しいと思っている。

 だからこそ、この運命を変えられる方法があるなら助力は惜しまないつもりだ。




 ===




 祠の石扉を開けて二人は中へと足を踏み入れる。

 地面には瘴気のヘドロが点々とある。それに触れないようにユルグは大穴の淵へと近付く。祭壇に祀られている匣に変化はなく、先日に見た通りまっくろなままだ。


「まずはこいつを交渉材料に使う」

「交渉と言っても何の契約を結ぶつもりだ?」

「それは相手次第だな」


 焦る気持ちはあるが、ユルグは至極冷静だった。交渉が相手次第と言ったのは、ある疑念があったからだ。

 以前、竜人(ヤト)の四災と話をしたとき、小さな疑問を抱いた。


「穴底にいるアイツ、自分は刻が来るまで待つとか言っていたが……そんなタマに見えるか?」

『ううむ……気性が荒いとは思うが。それでも超常の存在だ。言葉通り、どうとでも出来るのではないか?』


 不死身の存在である。穴底に囚われていようとも些細な問題ではないのかもしれない。しかしユルグは、それはないと断言する。


「知り合いに姿が似てるお前を見ただけで、あんなに激昂するやつだ。どれだけ取り繕っても心中穏やかじゃないだろうな」

『あの時は本気で死ぬかと思った……』


 恐怖にマモンはぶるりと身震いをする。

 言ってしまえば、あの四災はそれだけ大きな確執を抱えているのだ。だとしたら、あのまま黙っていられるわけがない。絶対に隙を見せてくる。

 そこに食らいついてくれる餌を出せれば、上手く事が運ぶかもしれない。

 それがユルグの計略だった。


『とはいえ、無闇に怒らせるようなことはしてくれるなよ。今度は生きて帰れぬかもしれんぞ!』


 祭壇から匣を回収していると、マモンは気弱な発言をする。

 黒犬から厳つい鎧姿になって、あんな弱腰な事を言うのだ。これにはユルグも笑ってしまった。


「了解だ」


 準備を終えて、ユルグはマモンの力を借りて穴底へと向かう。

 暗い穴底に希望を見出して――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ