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【マルチエンド】追放勇者は孤独の道を征く  作者: 空夜キイチ
第二部:白麗の変革者 第十章
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秘密基地を作ろう!

 

 ――その頃。

 フィノが麓の街まで行っている間。ヨエルは崩れた秘密基地の前で仁王立ちしていた。

 彼の手には大きなショベルが握られている。まずは崩れた秘密基地を掘り起こそうという魂胆なのだ。


『掘り返さずとも、新しく場所を変えて作れば良いのではないのか?』

「それだとダメ!」


 ヨエルはマモンの意見を頑なに拒絶した。

 その理由はなんてことはない。ヨエルはこの秘密基地に大事な宝物をしまっていたのだ。

 雪虫の大きな脱皮の殻とか、きれいな雪の結晶とか。他人が見たら下らないと思う物だが少年にとっては宝物である。

 それが崩れた秘密基地の下に埋まっている。それを掘り起こさなければヨエルの気は済まないのだ。


 ヨエルの説明を聞いて、マモンは仕方ないなとショベルの一つを手に取った。


『これを掘り起こすとなると一日では終わらぬかもしれんなあ』


 秘密基地、もとい雪山はガチガチに凍っていた。新雪のように柔らかくはない。到底、子供の力では掘り起こすのは不可能だ。

 それを前にしてヨエルは早々にショベルを放り投げた。


「フィノにも手伝ってって、お願いしようかな」

『フィノは忙しいのではないか?』

「えっ、おしごと終わったって言ってたよ」

『まあ、そうだが……なにぶん多忙な身だからなあ』

「戻ってきたらお願いしてみようっと」


 ザクザクとマモンが切り分けた雪塊を後ろに放り投げながら、ヨエルは呑気に語る。

 フィノならば魔法でこんな雪山もすぐに解体してくれそうだ。

 ヨエルの一案は知恵を絞った結果である。何も楽をしたくて手伝わせようとしたわけではない。


 などと、言い訳がましくマモンに抗議しながら少年は黙々と手を動かす。

 その直後――


「……あれ?」


 ふいにヨエルの手が止まった。

 マモンがそれに気づくと同時に、ヨエルはぴたっと雪山に耳を当てる。


『どうしたのだ?』

「なんか聞こえる……」


 少年の呟きにマモンは首を傾げた。彼の耳には何も届いていない。

 しかしヨエルは何か声が聞こえるという。ということは……この崩れた秘密基地の中に何かがいるということだ。


『それはなんと言っているのだ?』

「ううんと……たすけて」


 ここに埋まっているなにがしかは、助けを求めている。

 それを聞いてすぐに掘り起こして助けてやるべきだ、というヨエルの意見にマモンはすぐに首を縦には振らなかった。


 この秘密基地の残骸の中にいる者の正体が掴めない。街の子供がわざわざこの雪山に遊びに来るとは思えない。麓の街の住人はシュネー山には近付きたくないのだ。遊び場ならば街の近くになる。

 だからこの中にいる者が何であるか。マモンにはまったく見当がつかない。


「なんで助けてくれないの!?」

『掘り起こすのはいいが、それが危険ではないと言い切れないからだ。どこの誰かもわからない』

「でも困ってるよ!」


 渋るマモンとは対照的に、ヨエルは助けるべきだと言う。その意見にマモンはショベルを置いて熟考する。

 ヨエルの言っていることは間違いでもないし、そうするべきだとマモンも思う。しかし如何せん、状況が怪しすぎるのだ。ここにいる何かが良い奴だと断言できない限り、少年を矢面に立たせるような事は出来ない。


『わかった。ただし条件がある』

「なに?」

『ここから掘り出した何かが何であれ、安全だと証明できるまで近付かないこと。それが守れるようなら』

「わかった! わかったからはやく!」

『うっ、……ううむ。それはわかったとは言わないのではないのか?』


 ヨエルに急かされてマモンは渋々、ショベルを持ち直すと雪山を掘り進める。その様子をヨエルはマモンの忠告通り、彼の背後で見守っている。


 固い雪を掘り進めること十数分。ついにその時は来た。


『むっ、見えたぞ』


 雪山の中心近くまで掘り進めると、そこには小さな空洞が出来ていた。そして、その穴からマモンも、もちろんヨエルも見たことのないモノが出てきたのだ。


 子供一人が入れるくらいの空洞から出てきたのは、ヨエルと同じくらいの全長を持つトカゲだった。


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