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【マルチエンド】追放勇者は孤独の道を征く  作者: 空夜キイチ
第二部:白麗の変革者 第九章
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頼もしい助っ人

 

 アロガとヨエルが楽しく話をしている最中、そういえば――とリエルが思い出したようにフィノに尋ねた。


「フィノはどうしてここに立ち寄ったのですか? 私たちに会いに……というわけではないのですよね?」


 この三人が王都に居ることをフィノは知らなかった。もちろんその事は彼らも承知している。

 投げかけられた質問に、フィノはマグを置くと正直に答えた。


「祠に用があってきたんだ」

「ほこら、というと……あの虚ろの穴がある?」

「うん」


 リエルの問いに頷くと、彼女は少しだけ驚いていた。おおかた、どうしてフィノがそこに用があったのか、といったところだろう。


「なるほど、それでしたら王都を訪れるのは自然なことですね。あの場所は許可なき者の立ち入りを禁じていますから」

「んぅ、だから困ってる」


 小さく溜息を吐き出すと、フィノの話を聞いていたロゲンとリエルは二人して顔を見合わせた。


「あの場所を管理しているのは協会でしたか。それだったらリエルが適任ですね」


 思ってもみない回答に、彼女を見つめるとフィノの眼差しを受け止めてリエルは眉を下げた。


「力になってあげたいのはやまやまなのですが、助司祭の私でも……難しいですね。大司祭様にどれだけ頼み込んでも、誰であってもあの場所を開くことはないはずです」

「んぅ、そうなんだ」


 しかしだからといって諦めるという選択肢はフィノにはない。

 許可が得られないのならば、力尽くで突破するまでだ――などと意気込んでいると、ロゲンが横から割り込んできた。


「待ってください。諦めるのはまだ早いですよ」


 どうやら彼には何か妙案があるらしい。

 アロガよりも頭が切れるであろうロゲンは、得意げにある事をフィノに話して聞かせる。


「これはあまり公言出来ない話なのですが、現国王と教会はあまり仲が良くないのです」

「そうなの?」

「はい。先王の時はそうではなかったのですが……彼があまりにも教会に肩入れするあまり、増長してしまって今では我が物顔で国の政治に口を出している。その事が気に食わないみたいです」


 平和に見えたルトナーク王国も、内側ではなにやら色々と暗躍しているらしい。けれどこの話はフィノにとって利用できるものだ。


「もしかしたら……」

「そう、そのもしかしたらです! 大司祭に許可がもらえないのなら国王様に直談判しちゃいましょう!」


 得意げに断言したロゲンはなぜかとてもやる気に満ちあふれている。


「大司祭様、今は王都を留守にしているんです」

「それに、いくら教会が管理していてもそれに従っているのは一介の兵士ですから。国王の書状を見せれば一発です!」

「わお」


 完璧な計画に、フィノは思わず声を上げた。

 彼らはアロガと違って常識人だ。かつては勇者と一緒に旅をしていたし、こういった状況にだって慣れている。

 思いがけない助っ人の助力で、道が開けてきた。あとはこの計画がうまく運ぶか、というところ。

 こればっかりは予測がつかない。なんせフィノは現国王に会ったことがない。どんな人物かも知らないし、どんな考え方をするのかも未知数だ。


 それでも、そんな不安をかき消すようにロゲンがまたもや助言をくれる。


「国王様に会うなら僕も付き添いますよ。それにアロガも一緒に居た方が話はつけやすいと思います。彼、あれでも王国軍の隊長なので顔はそれなりに利くんです」

「んぅ、ありがと」


 上手い具合に話をつけていると、突然アロガが大声で抗議してきた。


「ロゲン! てめえ、いま俺の悪口いっただろ!?」

「いいえ? 空耳じゃないですか?」

「いやですよアロガさん。私たちがそんなこと、言うわけないじゃないですか」


 わはは、と二人は息を合わせたように不機嫌そうな彼を窘める。

 ものすごい変わり身にフィノが驚いていると、ふとアロガの隣に居たヨエルが視界に入った。

 なんだかぐったりしていて、うんざりとした面持ちである。おおかたアロガに絡まれて大変な思いをしているのだ。


「ヨエル、そろそろ行くよ」

「っ、うん!」


 フィノの提案に脇目も振らずに頷くと、ヨエルは椅子を飛び降りた。そして一目散にフィノの元へと駆けてくる。


「たのしかった?」

「え? うーん……ちょっと?」


 ヨエルは抱えたマモンに顔半分埋めて、はあ、と深い溜息を吐いた。随分と絡まれていたみたいだし、この反応も当然である。


「どこにいくの?」

「お城、王様に会わないと」


 次の目的地を告げるとヨエルは途端に元気になった。

 流石に話し合いに場に子供は連れて行けないからヨエルには待っていて貰うことになるけれど、それでも彼にとってはお城の中を探検できる絶好の機会だ。


 少年の考えが手に取るようにわかって、フィノは微笑ましさに笑みを零した。


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