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【マルチエンド】追放勇者は孤独の道を征く  作者: 空夜キイチ
第二部:白麗の変革者 第九章
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一歩を阻むもの

前話、昨日の更新時よりも加筆してあります。それに伴い昨日の更新分と多少の重複箇所があります。

 

 ルトナークにある大穴の祠は開けた丘にぽつんと建っていた。

 周囲には他に何もなく、異彩を放つ建造物がひとつだけある。しかし他の祠と比べて古めかしい様子はなく、しっかりと人の手も入っておりきちんと管理されていた。


 翌日――ヨエルを連れてそこへ向かうと、祠の中に入る事すら許されなかった。門前払いである。


「――通せない?」


 目の前の兵士に再度問うと、彼はしっかりと頷いた。


「はい。この先は許可がなければお通しできません」

「んぅ……そっか」


 予想していたことではある。

 けれどフィノを悩ませている原因はまた別の所にあった。


『国王よりも、大司祭に話を通せとは……またきな臭くなってきたなあ』

「許可もらえるといいけど」


 もし無理ならば強行突破しかない。もちろんそんなことはしたくないし、最後の手段だ。

 だがフィノの不安を後押しするように、マモンは懸念を語る。


『国王を差し置いて大司祭に交渉するということは、権力はそちらが上ということになる。これはなおさらタチが悪そうだ。少なくともこの一件には女神が関わっているのだからな』

「んぅ……」


 マモンの一言にフィノは改めて考える。

 他の大穴はこんな風には管理されていなかった。ましてや女神の存在など皆無だ。それが今回は、まるでここを護っているかのような有様。


 教会がこうして大穴を管理する理由は何か知れないが……マモンの言う通り、一筋縄ではいかなそうだ。



 新たな懸念事項が湧き出てきた所で、これからどうするべきか。

 フィノはもう一度、考えることにする。


「やっぱり入れてもらえるように交渉するべき?」

『それが一番だろうが、もしそれすらも断られたらどうする?』

「んぅ……」


 教会の大司祭とやらに話を付けに行くのは満場一致。問題はそれが叶えられなかった時、どうするか。


 魔王であるマモンがいる限り、祠の内部に入ることは可能だろう。元々魔王の役割でもあるし、祠を管理しているのが協会だとしても魔王制度について、実権を握っているのは国王なはず。最悪、国王に直談判して上手く言いくるめてしまえば問題は解決する。


 しかしフィノはこの作戦にはあまり乗り気ではなかった。

 そもそも魔王は秘匿されるべき存在であり、おいそれと公言するようなものではない。そこに戦時中という状況も重なってくる。


 アリアンネが停戦をこぎつけてくれているが、各国からしても魔王という存在は是が非でも欲しいものだろう。

 そこにマモンが自ら正体を明かしてしまっては、この前の拉致事件の二の舞が起こりかねない。何が何でも慎重になるべきだ。


「マモンは最後の切り札。どうにもならなくなったら手伝って」

『わかった。そうさせてもらうよ』

「まずは王都にいかないとね」


 祠からの帰路、そのまま王都へと向かう街道を歩きながらフィノは告げる。それにいち早く反応したのはヨエルだった。


「王都って、お城があるところ?」

「そうだよ」


 質問に答えてやるとヨエルは目を輝かせた。途端に軽くなった足取りを見るに、何を考えているのか丸わかりだ。


『観光に行くのではないぞ。フィノの用事があって』

「わかってるよ!」


 すぐさま飛んでくるマモンの小言にヨエルも負けじと反論する。

 けれどせっかくの王都だ。心の底では期待している事をフィノは知っている。だから、ついつい甘やかしてしまうのだ。


「私の用事、これでぜんぶ終わるから、暇になるんだ」

「じゃ、じゃあ……みんなで遊びにいける?」

「もちろん!」


 期待に応えるように頷くと、ヨエルは飛び上がって喜んだ。

 彼にとっては、マモンやフィノ、アルマと一緒に楽しいことが出来るのがとても嬉しいのだろう。


 すべてが終わったならば、フィノはヨエルを連れてシュネーへと戻るつもりだ。そうなれば遠く離れたこの地へも来ることだってない。

 もしかしたら人生で一度きりの訪問になるかもしれない。だったら、めいいっぱい楽しませてやるべきだ。


 やれやれと困り果てているマモンだって同じ気持ちなはず。

 ともすれば、面倒なことは早急に終わらせるに限る!


ブクマ、900件達成しました! これも日頃から読んでくださる読者様のおかげです! 本当にありがとうございます!

記念に近々、番外編をあげるつもりです。お楽しみに!!


そろそろ完結も間近ですが、見通しが甘いのであともう少し、がズルズルと長引かないか心配しています。(予定では今年中には完結するつもりです)

しかし、その後にもifストーリーが待っているので、作者はまだ筆を置けません。嬉しいやら悲しいやら……とりあえず、本編の完結はエタらないように頑張っていきますので、これからもどうぞよろしくお願いします!∈^0^∋


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