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【マルチエンド】追放勇者は孤独の道を征く  作者: 空夜キイチ
第二部:白麗の変革者 第八章
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始まりの話 4

 

 沈黙するフィノを無視して、彼は話を続ける。


「私が実際に体験したのはここまでだ。それ以降は、干渉器から得た情報になる」

「……かんしょうき?」

「私の場合は機人(マグナ)になる。最後にこれを創ったが、ただ地上で遊ばせていたわけではない。これに限った事ではないが、私が機人(マグナ)を創った真の目的は世界の理を記録することにある」


 難解な言葉ばかり使う四災に、フィノはうんうんと唸る。

 それでも今まで見聞きしてきた情報をあわせると答えが見えてくる。

 つまり……機人(マグナ)の四災は大穴の底に居ながら外の状況をある程度知っていたということだ。


「観測者、というものだな」

「ああ、だから魔法について、知ってたんだ」


 謎が一つ解けたところで、四災はやっと本題に入った。


「さて、ここからが本命。無人の奴についてだが……お前はおかしいと思わないか?」


 彼はいきなりフィノに問いかけた。

 けれど、まるで質問の意図が掴めない。


 それでも情報の整理もかねて「なにが」と問う前に、フィノは思案する。


 たぶん機人(マグナ)の四災がおかしいと言ったのは、今の状況についてだ。結果だけを見るならば、四災はみな大穴の底にいる。

 その中に、人間に手を貸していたはずの無人の四災が含まれているのは、確かにおかしい。不自然だ。


 もしかしたら人間に裏切られたのかも知れないが……それにしたって納得はいかない。上位者である彼をたかが定命の人間がどうこうできる筈もない。いくら人間の望みを叶えるといっても、自らに害を成す願いを彼が快諾するとは思えない。

 それに人間たちが望みを叶えてくれる存在を易々と手放すとも考えられない。


 一番考えられる理由は……無人の四災が人間に見切りをつけて決別した。これが正解に近いはずだ。



 必死に考えた答えを提示すると、機人(マグナ)の四災はそれに明確な答えをくれなかった。


「私たちが地の底に封じられた後、奴が大穴の底にいくまでの間には空白の期間が存在する」

「空白の期間?」

「空白と言ってもその全容が掴めていないわけではない。ただ私たち上位者にとって、奴が過ごしていた時間は無意味で無価値なものであると言わざるを得ない」


 ここにきて、機人(マグナ)の四災は否定的な発言をする。

 どういうことだろう、と考えていると彼は再びフィノに問いかけた。


「お前は瘴気がどうやって生まれるか知っているか?」

「うん、大穴の底に四災がいるからって聞いてる」

「そうだ。元々瘴気というものはこの世界には存在しないものだった。もっともそれは、私たちがこんな場所に囚われる前の話だ」


 だが――、と四災は続ける。


「人間の行いにより、地上に瘴気が溢れてしまった。それは定命にとっては毒となる。人間にとってはなおさらだ。その事を知らなかった奴らは、事が済んだのち、溢れ出てきた瘴気をどうにかしてくれと無人の奴に望んだ。そして奴は、それを拒絶しなかった。空白の期間とは、それにかかった年月のことを指す」


 四災の話を聞いて、フィノは抱えていた謎が解けていくのを感じた。

 ずっと疑問に思っていたのだ。四災がいつ大穴に囚われたのかはわからないが……魔王という、瘴気に対しての対策が出来たのが千年前。その前にログワイドが無人の四災と交渉して、二千年前にマモンが創られた。


 しかしそれより前にも瘴気は地上に溢れていたはずだ。マモンが創られるより前は、どうやって瘴気を抑えていたのか疑問だった。


 その答えがたった今、彼が語った空白の期間の話なのだ。


「他種族を排斥し、上位者さえも自分たちの思い通りに使役する。そのくせ生かされているにも関わらず、人間は決して敬うことなどしなかった。恐れを抱き謀反を起こさぬように徹底的に管理しようとした。なんとも滑稽な話だ」


 向けられた嘲笑に、フィノもマモンも何も反論出来なかった。

 当事者でなくとも、あまりの傲慢さに言葉を失う。たとえ無人の四災が人間たちの行いを良しとしていたとしても、聞いていて気分の良くなる話ではない。


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