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【マルチエンド】追放勇者は孤独の道を征く  作者: 空夜キイチ
第二部:白麗の変革者 第八章
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始まりの話 1

 開口一番、機人(マグナ)の四災はフィノに問いかけた。


「全ての事象には因果が存在する。原因と結果だ。その逆も然り。であれば当然、今の世界の結果にも原因がある。他の者に話を聞いたのなら、断片的に知っているのではないか?」

「うん、でもすごく詳しいってわけじゃ……すべて教えてくれなかったから」

「だろうな。あのような失態、進んで話す輩などいない」


 面白くなさそうに四災は吐き捨てる。

 彼が話してくれる昔話は、出来れば触れられたくないことなのだろう。


「私たちは各々、眷属を創った。しかし、その全てが半端者だ。創られた彼らは当初、お互いに干渉せずに過ごしていた。けれど、百年、千年と続いていく内にその均衡は破られる。種族間での争いも起きる。だが、争いを好まない者たちも当然の如くいるわけだ。それらが抑止力となり、世界の均衡はまだ保たれていた。お前たちが古代と呼ぶ時代の話だ」


 古代が何年前の時代であるかは明言されていない。

 けれど、気の遠くなるほど昔の話であるのだろう。古代語に精通していたエルリレオも、その時代の記録はほとんど残っていないと言っていたし、エルフの一生、五百年を何世代も費やさなければならない程には途方もない時間が経っているはずだ。


「ある時、今まで静観していた無人の奴が、自らの創りだした人間を指して、あれは失敗作だと嘆きだした。創りだしたのなら、滅ぼすのも一興ではある。しかし、私たちの定めた制約では、過度な干渉をしてはならないというものがある。人間を一人二人、殺すのならばわけはなかったが……奴らは増えすぎた。短命な人間は絶えず子孫を残す必要がある。当然の結果だ。増えすぎた人間を全て滅する……何万という命を潰すことになる。それは過干渉であると言わざるを得ない」


 彼ら四災の制約については、森人(エルフ)の四災も話していた。

 上位者である彼らは基本的にその後の世界には干渉してはならないという。その許容範囲がどれほどまではかフィノはしらないが、せっかく創った世界を台無しにされることを恐れた故、だというのは理解出来た。


「そこで無人の奴は考えを改めた。滅ぼすのではなく、今のまま進化を促そうと」

「……進化」

「それすなわち、完璧な存在を指す。つまり、不死者を創り出すということだ」


 不死者と聞いてフィノが思うのは、あの瘴気の怪物である。


「不死者って……不死人のこと?」

「あんなものを生き物とは言わない。意思もなく成長もしない。ただの怪物だ」


 機人(マグナ)の四災はフィノの問いに違うとかぶりを振った。


「人間の不死性は死んだ後に現われる。つまり、死ぬ度に少しずつそれに近付いていくというわけだ。それには気の遠くなるような回数を繰り返さなければならない。何千、何万と生き死にを繰り返す必要がある」


 ――それが、人間の特性であると四災は言った。


 この話はマモンから聞いたものと一致する。

 先ほど、大穴の底で出会った無人の四災が同じようなことを話していたのだ。

 彼は人間の死を望んでいる。それはたった今機人(マグナ)の四災が話してくれた事象が根本にあるからだ。


 定命の感覚では死は終わりを指すが、彼らにとってはそうではない。だから殊更にそれを望む。

 けれど、四災の思惑通りに事は運ばなかった。


「いくら不死性を持っていると言われても、死の恐怖までは拭えるものではない。私も含め、無人の奴はそれを理解していなかった。人間はみな、ことごとく死にたくないと死を恐れたのだ」

「それ、当たり前だと思うけど……死にたい人なんて誰もいない」


 四災は当たり前の事を言う。

 しかしこの認識の差異が、今のこの状況へと繋がったのだ。


「奴はどうすれば死に導けるか考えた。結果、彼らが死を恐れないように原因を潰すことを選んだ。人間が満足するまで彼らの望みを叶える事こそが、一番だと考えたのだ。そして、そこまでは良かった」


 ――人間の望みを叶える。

 四災にとって、それはちっぽけなことだった。彼ら定命が何を望んでも、脅威にはならないと考えたのだ。

 けれど、彼らは人間のことを理解出来ていなかった。


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