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【マルチエンド】追放勇者は孤独の道を征く  作者: 空夜キイチ
第二部:白麗の変革者 第八章
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怪物の存在意義

 

 彼の生みの親であるログワイドは、マモンに多くを語らなかった。そして、その大半の言葉は都合の良い嘘ばかりだったのだ。


 心無い怪物であると言ったのも。彼が短命だった理由も。

 そして、マモンがこの世界に在る意味さえも。


 どれを取っても、ログワイドが語ったものと真実は真逆であったのだ。


 どうしてそんなことをしたのか。いくら考えてもマモンにはログワイドの意図を汲み取ることは出来なかった。

 生みの親と言っても、マモンは彼のことを全て知り尽くしているわけではない。むしろ知らない事の方が多い。


 それでも、ログワイドがマモンの事を想っていないかと言われれば……きっと、そうではないのだろう。

 彼の吐いた嘘は、裏を返せばマモンの為とも言えるのだ。


 これより続く苦痛を少しでも和らげるため。自身を責めてしまわないように。

 そして、自らのエゴで生み出してしまったマモンの事を、ログワイドは案じていた。死ぬ事の出来ないマモンを想って、彼はあの石版に最期の願いを託したのだ。



 フィノから真実を知らされて、マモンはその結論に至った。それでも、気持ちの整理がつかないのは、彼の存在意義が根本から崩れてしまったからだ。


 今まで、自分が何の為に存在しているのか。マモンはさほど気にしたことがなかった。与えられた役目があったし、それがなければ世界は存続しないことは解りきっていたからだ。

 だから、疑問も持たずにそれが正しいことだと信じ続けていた。


 その呪縛が解けてしまったのは、自らを理解しようと歩み寄ってくれた人がいたからである。

 アリアンネのおかげで、マモンの世界は瞬く間に変化していった。彼女との旅はマモンにとって驚きの連続だったのだ。感じるもの全てが新鮮で――しかし、例えそれが過ちだったとしても、マモンにはかけがえのないものだった。


 しかし、それをきっかけにマモンは人知れず苦悩することになる。


 生み出されてより、二千年の間。沢山の人の死を間近で見てきた。マモンが存在しなければ彼らは寿命を全うできただろう。少なくとも、理不尽に死ぬ事はなかったはずだ。


 長い時を生きてきて、マモンが関わったことで失われたものはあまりにも多い。

 心無い怪物であれたならば、こんなことで苦心することすらなかっただろう。けれど、今のマモンにはどうでもいいことだと割り切ることは出来ない。


 彼の心境の変化……それはひとえに、彼の傍にいてくれた人々のおかげでもある。

 アリアンネやミア、フィノに……そして、ヨエル。彼女らのおかげで、今のマモンが在るのだ。



 少し前までのマモンならば、自責の念に駆られて死ぬ事ばかりを考えていた。二千年もの年月を生きたのだ。ここで消えたとしても後悔はない。そう思っていた。


 けれど、失いたくないと思える大事なものを見つけてしまったのだ。


 ヨエルはマモンのことを大事な家族だと言ってくれた。

 何も知らない無垢な少年は、心の底から信じ切っているのだ。その想いを無碍に出来るほど、マモンは冷徹ではいられない。


 心無い怪物でいられなくなったのならば、冷酷である必要も無いのだ。

 ならば意義のない存在証明など、棄ててしまえばいい。


『心が在るのならば、それに従えばいい』


 かつて語ってくれたその言葉を胸に、マモンはまだまだ手の掛かる、やんちゃな少年の為に生きようと決めた。


少し短いです。(o_ _)o

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