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【マルチエンド】追放勇者は孤独の道を征く  作者: 空夜キイチ
第二部:白麗の変革者 第七章
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灯台下暗し

 

 まずは、双方が知り得ている情報のすり合わせ。


 フィノが四災へと提示した情報は、現在世界がどうなっているのか。彼もそれを知りたがっていたし、フィノにはこれくらいしか提供できるものがない。


 事前に得ていた情報通り、彼ら四災は魔法について何も知らなかった。

 あの匣も彼は珍しそうに眺めていたし、こんな大穴の底にずっといるのだ。知らないのも無理はない。


 始めに魔法について、掻い摘まんで説明すると四災は急に黙り込んでしまった。


「なるほど、女神とやらも随分と粋な計らいをする」

「……どういうこと?」

「我らは定命がどうなろうとどうでもいい。滅びたのならばまた創り直せば良い話。だがあれはそれに固執しているようだ。こんな回りくどいことをしているのだからな。仮にも神と名乗る者ならば俗物的な思慮など捨て去れば良いものを……」


 ぶつぶつと独り言を話す四災の言っている事を、フィノは半分も理解出来なかった。彼が何に気づいたのか。それを明かさぬまま、ひとしきり文句を言った後、彼はフィノに話の続きを催促した。


 四災の話は気になる所ではあるが……今は関係ないことだと判断して、フィノは中断していた話を再開する。


 絶えず湧き出てくる瘴気による被害にみなが困っている。

 そのことを訴えると、黙ってその話を聞いていた四災は可笑しそうに笑った。


「ふっ、被害者気取りとは道化もいいところだ。元々はお前たちが蒔いた種。それで泣き付かれてもわざわざ助けてやる者など、我らのなかには……ああ、ひとりいたな」


 一人で頷いている四災は、しばらくしてフィノにこんなことを告げた。


「喜ぶといい。お前の言うログワイドとやらが相見えた四災、あれに頼み込めばこの状況は容易に打開できるはずだ」

「ほ、ほんと!?」

「ああ、だが……一筋縄ではいかないだろう」


 喜びも束の間、彼の言葉にフィノは肩を落とす。けれど、四災の彼がそういうのならば信憑性は増す。

 実際にそういう存在がいると確証が持てることは、何よりも大事なことなのだ。


 なんせフィノが知るすべては二千年前の話である。マモンのお墨付きもあるけれど、彼だって万能ではない。記憶違いやそもそもそんなものはなかったなんてことも有り得る。

 今ここでしっかりと念押ししてもらえたことは、フィノが費やしてきた十年間が無駄では無かったことの証明でもあるのだ。


「まず気をつけなければならないのは……奴はとても性格が悪い。我らや他の者たちよりもだ。いや、性格というよりも変わり者であると言った方が分かり易いか」


 四災の彼らは物事の考え方が、フィノを含めた定命の者たちとはかなり違っている。その内の一人である森人の四災が、変わり者であるというのだ。推して知るべし、といったところだろう。


「その人の居場所、わかる?」

「わかると言いたいところだが……遙か昔のことだ。正確な位置までは掴めない。だが一つだけ言えることは、奴に会いたいのならば大穴の底に行くことだ」


 さも当然というように、彼は告げる。その言葉の意味をフィノはすぐには理解出来なかった。


「そ、それって……どういうこと?」

「言葉通りの意味だ。大地に穿たれた大穴の底に向かえ。最奥に辿り着けたのならば、奴に会えるはずだ」

「ま、まって! それって四つあって、つまり……どこに」

「どこでもいい」


 四災はフィノの質問に、ひどく簡潔に答えた。

 それがさらに状況をややこしくさせる。


「ど、どこでもいいって……ここが穴の底じゃないの!?」

「その認識は正解であって正解ではない。確かに我らはこうして大穴の底に封じられているが、この穴は一つの場所に繋がっている。今回お前がここに立ち入れたのは、我らが招いたからだ」

「うう……意味がわからない」


 突拍子もない話の連続で、既にフィノの頭の容量はいっぱいいっぱいだった。そのうえ、四災はさらに話を複雑にする。


「だが、お前では底には辿り着けない。この方法で辿り着けるのは奴の眷属のみ。交ざりものとはいえ、お前だけでは永遠に暗闇を落ちていくだけだ」

「じゃあどうすれば……」

「奴がいる場所を探し当てろ。四つのうち、一つがそれだ」


 ……ということは、残り二つの大穴のうち片方が当たりというわけだ。今度は非常にわかりやすい。

 惜しむらくはこの四災がその当たりの場所を知らないということだ。こればっかりはフィノがなんとかして探り当てるしかない。

 とはいえ、二分の一である。どうにでもなりそうだ。


 意気込んでいるフィノを余所に、四災は話を続ける。


「だが、無策で奴に会うのはやめたほうがいい」

「ん、どうして?」

「変わり者だと言っただろう」


 彼は言外にまともに話が通じる相手ではない、と言っているのだ。だからこそ、相手を知っておくべきだとフィノに助言をする。


「奴の事を一番良く知っているのは……残りの片割れ。まずはそれに会いに行け」

機人(マグナ)の四災のひと?」

「そうだ。我らの次には話が通じる相手だと思ってくれていい」


 そこは安心して良いと彼は言う。

 でも総じて上位者である四災は、どれもが常識では測れないほどにぶっ飛んでいる。過度な期待はよしておこう。


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