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【マルチエンド】追放勇者は孤独の道を征く  作者: 空夜キイチ
第二部:白麗の変革者 第六章
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アジト潜入

サブタイトル、変更しました。

 フィノはこの男たちを、最近話題の人攫いだと予想していた。開口一番、ハーフエルフかと問い質してくるのだ。その可能性は高い。

 そして彼らはフィノを見て二匹目、と零した。きっと他に誰かしら被害に遭ってるのだと考えたのだ。

 だったら助けてやるべきだ。


 師匠であるユルグは人助けをしたがらなかったが、弟子であるフィノも同じ考えとは限らない。

 アリアンネのように誰彼構わず助けようとは思っていないが……それでも困っている人がいるなら出来るだけ力になってやりたい。


「攫ってきた人、どこにいるの?」


 口を利けそうな片腕男に詰め寄ると、彼はフィノを恨みがましく見つめた。


「ぐっ……だっ、だれがお前におしえるかよ!」

「左腕も落とす?」

「うっ、わ、わかった! はなす、話すから!!」


 剣を抜いて脅すと、男はあっさりと口を割った。

 男の話によると、近くの森の中にアジトがあるらしい。そこに攫ってきた人を監禁していると。

 どうしてそんなことをするのか、尋ねると男は当然のように言った。


「人身売買だ。ハーフエルフは金になるからな。羽振りの良いお得意様がいるんだ」

「それって……」

「まったく、アルヴァフ様々だよ」


 男は愉快そうに笑った。その笑い声にフィノは苦い顔をする。

 どうやらフィノの予想通りの展開らしい。


 ハーフエルフの小国、アルヴァフは重大な問題を抱えているのだ。それを解決するために今回、フィノが呼ばれたわけだが……事態は思ったよりも深刻らしい。



 一先ず、今は被害者を救出するのが先である。後の問題は追々考えればいい。


「ヨエル、着いてきて」

「どこいくの?」


 マモンを抱きしめながらフィノの後ろを着いてくるヨエル。彼の質問にフィノは答える。


「あの人たちのアジト。攫われてきた人がいるから助けに行く」

「あ、危なくない?」

「私一人なら大丈夫。ヨエルはマモンと隠れてて」


 森の小道を行きながら、フィノはヨエルに言いつける。彼はそれに、不安を顔に貼り付けながら頷いた。


 ふと前を見据えると、アジトらしき拠点が見えてくる。

 森の中にある岩のアーチの下に作られた、天然の要塞だ。けれど規模はそれほど大きくはない。探索にはそれほど時間は掛からないだろう。


『ふぁ……そろそろ眠くなってきた。あまり掛けられる時間はないぞ』

「任せて!」


 マモンの忠告にフィノは勇ましく返事をすると、早速準備に取りかかった。

 といっても、荷物になる背嚢ヨエルに預けてカンテラを腰に括るといった簡単なものだ。

 諸々の準備をしてアジトの中へと向かっていった。




 ===




 薄暗いアジトの中を、カンテラの明かりだけで進む。

 予想通り、アジトの中はそれほど広くはない。人攫い一味も、アジトの入り口にいた見張りの男だけらしい。どうやら小規模な一団みたいだ。


 突然の襲撃者に上手く対応出来ずに、見張りの男はあっという間にフィノにのされて床に転がった。

 意識を無くした男を縛り上げて、フィノは再びアジト内を探索する。


 人攫い一味の目的は、金になるハーフエルフを捕らえてアルヴァフへと売りつけることである。フィノがコテンパンにした男の台詞からそう判断した。


 アルヴァフの国民はハーフエルフのみだ。他の種族、人間やエルフも住んではいるが、彼らも自由に国に籍を置けるというわけではない。

 国主の許可を得て、初めて国民として認められる。多種族には色々と制約も多い国なのだ。


 今まで虐げられてきたハーフエルフが、自国では多種族を排斥するというのは聞いていて悲しくなる。

 しかしこの政策は、国主……レルフの一存で定めたものではないのだ。

 彼はハーフエルフの、同族の為に国を興した。それに付け入って悪さをする輩は少なからずいる。その悪政者に良いようにされているのが、アルヴァフの現状である。


 それらのしわ寄せでこんな事態に陥っているのだ。

 弱者であるハーフエルフの為の国なのに、それのせいで被害に遭う同族が居るのは何とも皮肉な話である。

 しかし、この問題の根底はかなり根深いものだ。一朝一夕で解決出来るものではない。レルフもそれを嘆いていて、フィノに協力を要請したわけだ。



 アジトの中を探索していたフィノは牢を発見した。

 その中には、予想した通り男たちに捕らえられたであろうハーフエルフの少女が蹲っている。見たところ、歳はヨエルと同じくらいだ。


「大丈夫?」

「だ、だれ?」

「助けにきたよ」


 怯えた少女を安心させるように笑みを浮かべて、フィノは牢の施錠を解く。手を差し出すと、少女は恐る恐る掴んでくれた。

 ボロの衣服を纏った少女に、外套を着せてやる。すると彼女は、ぼんやりとした眼差しでフィノを見つめた後――


「お姫様が助けに来てくれたんだ!!」

「へ?」


 おかしなことを言い出した。


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