Scene 2-2:盗賊“リトルネロ”
今回はとりあえず闘わせてみました。
ウェニー
「あたし達、だいぶ空気じゃないかい?」
むさい漢の闘いに参加したいの?
ウェニー
「う…そ、それは遠慮するよ…。」
じゃあ、文句言わないの。
では、本文へどうぞ!
‐ACT5‐
「〈四聖〉だって…?」
「疑ってるんスか?でも、紛れもない事実ッスよ。
オレは“フレイム”の子孫ッス。そして、
フレイムの『形見』を扱える、唯一の人間ッス。」
そういって掲げたその銃は、持ち手に黒い蜥蜴を模した紋があり、銃身は鈍い紅色を放つ。
〈四聖〉。
かつてこの世を救ったとされる、四人の戦士。
【樹斬】フォレスト、【雷打】スパーク、【水牙】レイン、そして【炎穿】フレイム。
彼ら四人は、六千年前のこの世界を破滅から救ったという。
“リトルネロ”と名乗った少年は、その四聖の一人フレイムの子孫である、という。
「そういえば、サラマンダー家の子息が、最近忽然と姿を消した、という噂を聞いたことがあります。」
「しかし、何だってそんなヤツが盗賊なんかやってんだい。その家業とやらをやったらいいんじゃないのかい?」
「人には事情ってモンがあるんスよ。それをアンタらに教える筋合い無ぇッスよ!」
「ぐ、確かにそうだけどね…。」
どうやら彼は腹に何か一物抱えているようだ。
ふと、ここまで沈黙を保っていたアークが口を開く。
「あのさ、リトルちゃんよ。」
「誰が『リトルちゃん』ッスか!バカにしてるんスか!」
「おお、言って気付いた!名が体を表している!」「人が気にしてることをイジるなッス!それで苛められたことあるんスから!」
今日もアーク節は『舌』好調である。
「まあ、お前が何処の誰で、なんで盗賊やってるか、とかはぶっちゃけ『今日の朝食のメニューが何だったか』よりもどうでもいい。」
「なっ…(た、例えが微妙ッス)!」
「まず〈四聖〉とか知らんし、人の事情とか興味無いし、ちっちゃいから迫力無いし、それから…」
「ちっちゃい言うなッス!っていうか、まだ理由挙げるッスか!?」
「…ともかくだ。俺らはこの先に行きたい。お前は金目のモンを奪いたい。
なら、漢同士『真剣勝負』で決めようじゃねぇか。勝った方に従う。それで文句ねえだろ?」
「!…そういうからには、勝つ自信があるんスね?」
「もち。」
「…いいッスよ。その勝負、乗ったッス!」
二人の男が闘いの様相を示す。
ただそれだけで、周囲の空気が一変する。
ウェニー、ミントの二人は、これから始まろうとする『闘い』を感じ、戦慄する。
そして、二人の闘いが火蓋を切った。
「疾ッ!」
先に動きを見せたのはアーク。驚異的なスピードで、リトルとの距離を縮めていく。
リトルは左側の一丁を更に取り出し、二丁の銃から『魔力の塊』を撃ち出す。
通常の実弾銃よりも速いテンポで撃ち出される弾を、アークは紙一重で避けていく。そのスピードは殆ど落ちていない。
リトルに近付くアーク。その右の拳に雷撃を纏わす。
「武雷拳!」
雷撃を纏った右の拳でストレートを放つ。
「甘いッスよ!」
そういったリトルは、驚異的なジャンプ力を伴ったバックステップでストレートを回避する。
そして左の一丁を取り、先程とは違う『魔力』を二丁の銃に込める。
「焔装、穿弾!!」
リトルが弾丸を放つ。炎を纏う弾丸は槍のように尖っており、二つの弾がアークへと向かう。
咄嗟に姿勢を低くし、それをかわす。
そして、再び右拳のストレートを放つ。雷撃は纏わせていない、普通のストレートだ。
リトルは左手の銃でその拳を防ぐ。二人の力は拮抗している。
「なかなか強ぇな、お前!」
「油断大敵ッスよ!!」
そういうとリトルは、右手の銃で先程の弾を放つ。
アークは右へのサイドステップによってその弾丸をかわす。刹那、リトルは残りの二丁を取り、左右それぞれの銃を『合身』させた。
「連魔装弾!」
左右とも二門となった銃口から、無数の弾丸が撃ち抜かれる。その全てが、炎を纏っている。
「おっとっとっと、よっ、はっ、ていやぁ。」
随分とやる気のない声を出しながら、時には避け、時には弾いて、その弾丸の雨を潜り抜けるアーク。
再び、二人の距離が開いてしまう。
「なかなかッスね…。じゃあ、これは避けられるッスか!?」
そういったリトルは、今までよりもはるかに多く魔力を込める。その力の大きさに、周りの木々が震えるほどだ。
そして、二丁の銃を構える。
「大爆火焔、双破!!」
銃口より、路の八割を埋め尽くす二つの炎弾が放たれる。高速で迫る弾丸を避けることは難しい。
するとアークは、その弾丸の正面に立ち、鷲掴むような形をした右手を構える。
そして、その右手に魔力を込める。そして…
「紫雷咆!!」
…紫の雷撃を弾丸に向かって放った。その威力は、町でチンピラ相手に放ったものとは段違いである。
ドオオオオオォォォォォンッッ!!!!
凄まじい轟音とともに、周囲に爆風が広がる。その勢いは激しく、細い木々達は薙ぎ倒されていく。
緊張の中闘いを見守っていた二人も、吹き飛ばされないよう足に力を込めて踏ん張る。
暫くすると、周囲を覆う煙が晴れていく。
「…アンタ、無茶苦茶ッスね。『あれ』を相殺しきるなんて、考えてもなかったッスよ。」
「まあ、攻撃は最大の防御、つーとこだな。
あと、『相殺』じゃなくて、『俺の勝ち』。」
「へ?」
バチッ!
「ッ!?」
バタン!
軽口を叩きあった二人だが、突如リトルが感電。地面に倒れた。
これには、二人も目が点である。
「い、今何が起きたんですか…?」
「ん。あいつの銃にちょこっとだけ帯電させて、『通電』させてみた♪」
「えぇ?」
「いや〜、魔力は外部コントロールも効くんだね〜。俺っち、発見。」
飄々(ひょうひょう)と言ってのけるアークだが、これはかなりの高等技術なのだ。
『魔力』をそのままエネルギーの塊で使う者は少ない。それは、魔術の大元が術者の『イメージ』に依るものであるからだ。
自然界に存在する炎や水などの明確な『イメージ』は、魔術という曖昧な存在に、あるべき姿を形づくることができ、確固たるイメージが、魔術の威力を高めるのだ。
故に、明瞭なイメージの付随しない『魔力』だけでは、魔術は強くならない。
では、なぜアークが行ったことが高度なのか?
先述の通り、明瞭確固たるイメージは魔術を強くする。同時に、イメージがはっきりとしていれば、それは自然界の『法則』にも従うのだ。
一度外に放たれたそれが、法則を無視して術者の意志で動くなど、あり得ないのである。
しかし、彼は銃に帯電させた雷撃を、『自分の意志で』リトルに感電させたのだ。最早彼に世の中の常識は通用しないようだ。
そうとは知らぬアークは、さらっと続ける。
「でさー、コイツどうする?放っとく?それとも、目ェ覚ますまで待つ?」
「…ハァ。あんたがしたいようにすればいいだろ?あんたの為に、あたし達は街目指してんだ。退くも進むもあんた次第だよ。」
「うしっ、じゃあ手縛って木に吊るして雨乞いでもするかー。」
「「いや、意味分かんないですけど、特に最後!?」」
アーク、いつ何時もブレがない。
「う……ん…。」
「お、気が付いた。」
「うん?……!」
あれから約一時間半経った時、リトルは漸く目を覚ました。彼の手は『一応、起き抜けに反抗されても困るし』という理由で、後手に縛ってある。
「…何で助けたんスか?」
リトルは尋ねた。
当然である。自分は盗賊で、しかも目の前の三人を襲おうとしたのだ。普通はそのまま出す所に出しそうなものである。
しかし、彼らはそうしなかった上に、自分の介抱までしてくれたのだ。
真意を掴むために、リトルは理由を訊いたのだ。
「何で、って言われるとまあ、ミントの次にイジりがいがありそうだしー。」
「そんな理由ッスか!?」
「ていうか、それさりげなく私がイジりがいがあるって言ってますよね!?」
「うん!!」
「満面の笑みで肯定しないでください!!」
話がスムーズに進まない。原因はまあ、アークの言動のせいだろう。
「まあ、冗談は置いといて。」
「冗談ッスか!?」
「うん、冗談。で、一番の理由はさっき言ってた『事情』ってのが気になってね。」
「何で気になるんスか?盗賊の言うことなんだから、ほっときゃいいじゃないッスか。」
「それだけどさ、お前盗賊って感じしないんだよね。家も、なんか有名っぽいじゃん、話聞いてると。」
「それはあたしも思った。なんかさっきの闘いは『試合』には見えたけど『死合』には見えなかったし。」
「…気付かれてたッスか。」
「どういうことです?」
「要するに、ホントに盗賊なんだったら、さっさと俺ら殺してズラかりゃいいじゃん、って話。」
そう。
リトルはあれだけの力を持っていながら、そのまま金品を強奪しようとはしていない。
何かしらの事情によって、『仕方なく』やってるようにアークは感じたのだ。
「…しょうがねぇッスね、話すッスよ。敗者は勝者の言うことを聞くモンッスよね。」
そう言って、彼は『事情』を語り始めた…。
ヤッベー、中途半端ー!
しかも、次の内容あんま考えてねー!
まあいっかー♪
ミント
「ちゃんと考えてください!」
まあ、頑張るけど。
こんな拙い小説ですが、感想なり、意見なりくださると尻尾ブンブンします。
ウェニー
「犬かよ。」
インフルが迫っても休講しない大学に尊敬すら抱いちゃう、喜劇作家でしたm(_ _)m