Scene 1-2:非常識男、此処に在り
展開が早い気がしないでもない…。
今回メインの一人が登場、アークがはっちゃけます(^_^;)
それでは、本文へどうぞ。
‐ACT2‐
鬱蒼とした森を抜け、“ヘヴンズルータ”に辿り着いた二人。
記憶喪失であるアークは当然、この町のことは知らない。故に、ウェンディアが目的の宿に誘導している。
「へぇー、結構栄えてんな、この町。」
「まあ、この大陸じゃあそこそこ栄えてる方かもねぇ。」
ここで、少しこの世界の地理について触れてみよう。
この世界には3つの大陸が存在する。まず、彼らのいる比較的温暖な大陸“レーベ・サンライト”、その東にある四季が巡る大陸“ティエラ・オリエンタ”、そして北方に存在する最大の大陸“アルティマ・スーリ”。この3大陸が三角形を描くように存在するのだ。
“ヘヴンズルータ”は、大陸内では中間層と呼べるレベルに栄えた町だ。大陸の中心部と西側を結ぶ『交易の地』としての意味合いが強い、活気に溢れた町だ。当然の事ながら、地域の一般市民や大陸を渡り歩く行商人、そしてハンター達が多く利用する町でもある。
「さ、着いたよ。」
「ほえ?おお、普通だ。」
「…あんたは宿屋に何を求めてんだい?」
「うーん…、スリル?」
「安息の地に求めんな。」
記憶喪失といい、グリズリーの事と言い、やっぱこいつ(の頭)おかしいんじゃないんだろうか。
壁に硬貨で傷をつけようとするアークを引っ張りながら、そんなことを思ったウェンディアであった。
ウェンディアがとっていた宿の名は“憩いの広場”。読んで字の如く、長旅で疲れた体を癒すための憩いの場を目指して経営している。
見た目に風情があり、宿主のおばさんは親しみ易く、出される料理はボリュームたっぷり、さらには値段もとてもリーズナブルと、まさに『庶民の宿』を絵に描いたようである。
当然、アークの求めるスリルなんてものはない。
ウェンディアはアークの首根っこを掴んだまま、二階の一番奥の部屋へと向かっていく。
「今帰ったよ“ミント”。」
ウェンディアがドアを開けると、其処には一人の少女がいた。
青々と生い茂る木の葉のような深い緑の髪、視る者の心を癒すようなエメラルドの瞳、そして淡いピンクの花をあしらった可愛らしい髪飾りを着けている。
“ミント”と呼ばれた少女は、名前を呼んだ人物へ目を向け、微笑む。
「お疲れ様です、“ウェニー”。随分遅かったですね?」
「いや、まあちょっとねぇ…。」
「なあなあ、ウェニーって誰よ?」
「あたしのことだよ。」
「?ウェンディアじゃなかったっけ?」
「あんたをアークって呼んだのと同じ理由さ。」
「あ、あのぉ…。」
「?なんだい、ミント?」
「そちらの方は…?」
いきなりウェンディア…もといウェニーの背後から顔を出してきたアークに困惑したミントが、遠慮がちに彼女に尋ねた。
「ああ、コイツ?コイツはあたしが遅れた『最大要因』さ。
アークライトって名前で、何か記憶喪失らしいんだけどさ…ってアーク?」
ウェニーが紹介しようとしたら、なにやら真剣な表情でミントに近付いていくアーク。
彼女の目の前まで来ると、その両肩に手を乗せる。その行動にミントはビクッとする。
「………」
「…?」
無言で見つめるアーク。その綺麗な銀色の瞳で見つめられたミントは、若干頬を赤らめる。
そうして少しの間見つめ合い、彼が手を肩からその頬へと移し、そして…
ふにっ
ぐにょーーーーーーーーーーん
「イ、イタタタタタタタッ!!??」
…掴んでおもいっきり引っ張った。
「い、いきなり何するんですかぁっ!?」
「ウム!素晴らしいリアクションだ!合格!!」
「何にですかああぁぁぁっ!?」
出会って早々破天荒な行動を取ったアーク。それを呆然と見ていたウェニーは思った。
――面白い玩具見つけた子どもの瞳だ……。
斯くして、ミントとアークは出会ったのであった。
「さて、二人とも落ち着いたみたいだし、そろそろ昼飯にするかい?」
「goo(´▽`)b」
「うう…頬っぺた痛い…。」
結局、あの後十五分ほど遊ばれたミント。
初対面の人間にされることでは当然ない。
先程とは別の意味で頬が真っ赤である。
「んじゃ、此処の食堂で飯にするよ。」
「ほーい。」
「ちょ、引き摺らないでください!一人で歩けます!」
「ううん、ヤダ♪」
「離してくださあああぁぁぁい!!」
ウェニーは二人に先立って、ミントは嬉々とした表情のアークに引っ張られながら、宿の中にある食堂へと向かっていった。
ミント、不憫である。
「うーん、美味い上に量も多く、更には値段も安いときた。成人貧乏男性が泣いて喜ぶね。」
「貧乏である必要はないと思うけど、確かに美味いねぇ。」
「はい、美味しいです♪」
現在彼らは食堂で注文した料理を平らげている最中である。
一応、一皿で二人前ほどの量があるのだが、ウェニーは二皿、アークに至っては五皿平らげている。
そんな中、三分の一ほどの量を残し、ミントの手が止まる。
「なんだ、もう喰わないんか?」
「ええ、私にはちょっと量が多くて…。」
「じゃ、俺もらっていい?」
「はい、いいですよ。」
そういってアークはミントの残した料理を食べる…かと思いきや、何故かミントに向かって口を開いている。
「…え、ええと、アークさん?どういう意味なんでしょうか、それは?」
「あーん♪」
「今の何処にそんな流れがあったんですかぁ!?」
何故かミントに食べさせてもらおうとするアークと、顔を真っ赤にさせながら逃げようとするミント。
「アハハ…。何やってんだかねぇ(^_^;)」
そんな二人を見て、すぐに打ち解けたことに驚いたり、微笑ましく思ったり、ミントのリアクションが可笑しくてしょうがなかったり、色々感じるウェニーであった。
「ふい〜、喰った喰った♪」
「うう…。」
結局『あーん♪』をさせられてしまったミントは赤面。一方のアークはご満悦である。
「どうすっかね、このあとは。」
「そうですね…、うう…。」
「それなんだけどね、これからあんたのために買い物行こうと思うんだけど。」
「俺の?」「そ。今のあんたの格好じゃこの先不安だからね。」
「うむ、確かに。」
「あうう…。」
相変わらず立ち直れないミントを無視して会話を進める二人。
確かに、アークの『今の格好』では、旅人としてもハンターとしても不適切であろう。鎧や胸当ての類を何一つ着けておらず、やけに白いシャツ一枚。気候的には問題ないが、防御力は皆無である。
「次に魔物に襲われた時に攻撃を喰らわない保証はないからね。あんたに合う防具を探さなきゃね。」
「じゃあ、そういうことなら早速行くか!」
「はいはい。ほら、ミント。行くよ?」
「はい…はうう…。」
そんな訳で、三人は店の方へと向かっていくのであった。
「ところで、何でいきなりミントの頬つねったりしたんだい?」
「インスピ。」
「インスピ?」
「レーション。」
イコール直感。
「そうかい。じゃあしょうがないね。」
「うむ、しょうがない。」
「しょうがなくないでしょ!?」
つくづく不憫である。
はい、ミント登場。のっけから不憫です。
彼女にはこれからツッコミに熱心になってもらいます。アークのいじり対象、認定済(え
こんな駄文ですが、感想、評価、質問等求めちゃったりしてます。
是非に、是非によろしくお願いいたしますm(_ _)m
時間はあるが金がないorz
喜劇作家でした。