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リメイクして再投稿中  作者: うるさいアシカ
二章 幸福と不幸
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06話  何かがおかしい

区切りが良かったので、新章に入ります!


 歩き始めて数時間、ずっと山は見えているのに一向に近づけないでいた。



「ツキ後ろ!」


 戦い方を教えながらとはいえ、この状況はまずい。

 短めの脚に小さく幅広な頭部、そして鋭く発達した牙を持つ魔物。

 ツキいわく恐狼(ダイアウルフ)という魔物の大群に、俺たちは囲まれていた。


 俊敏性に特化したこの狼たちに影の手(シャドウハンド)を使っても(かわ)されてしまう。

 まだ魔力のコントロールができていないのが原因だろう。


 恐狼(ダイアウルフ)がツキの後頭部めがけて飛びかかる。

 俺は飛びかかる恐狼の尻尾を掴み、地面に叩きつけた。


「視野を広く持って! 死角を作っちゃダメ」

「はい!」


 これはツキの特訓でもあり、俺の特訓でもある。

 今後、魔力の制御ができないと絶対苦労する。

 かと言って、この数じゃ訓練にもならない。


「ツキ、伏せて!」

 ツキは頭をかかえるように地面に伏せる。


「黒炎」


 なぜか真赤な炎は出せないけど、それも今後の課題かな。

 俺を中心に赤黒い炎が波打ち、波紋のように広がり周りの恐狼(ダイアウルフ)を一掃した。

 恐狼を倒したのを確認して、俺はツキに話しかけた。


「ツキの風魔法があれば、普通はできない動きもできると思うんだけど、どう?」

「んー、小さな風くらいしか今は出せないんですよね」

 やっぱり近道はないのかぁ。


「まぁ地道に頑張ろうな」

「はい!」

 ツキは努力家だし、大丈夫だろう。


「とりあえず、今日中にあの山の(ふもと)まで行って野営するぞ」

「行きましょー!」


 なんか最初の印象とだいぶ変わったな。

 これが素なのか?

 ツキは元気よく右手を上げ、「おー!」という掛け声で歩き始めた。




 途中、群れからはぐれて単体でいた恐狼(ダイアウルフ)や幼虫型の魔物ワームなどを、ツキがなんとか倒しつつ山の麓までたどり着いた。


 肉体的疲れは俺には生じない。

 しかし、精神面は別だ。


 元の世界では、学校以外は自室からは出ずアニメ、ゲーム三昧だった俺には難がある。

 インドア派な俺に登山、ましてや山越えとか心が折れそうになる。

 ツキがいるから格好つけているだけなのだ。


 ああああぁぁぁぁっ……、もう歩きたくない! 


「そういえばなんでルキ様はリンピールに向かっているんですか?」

 不意を突かれビクッとしたが、誤魔化すように答える。


「え、えーっとね。俺は魔人だけど冒険者になりたいんだよ。でも、王都はあれだろ? だから知人に教えてもらった、亜人差別があまりないリンピールに行こうかと思ってね」

「僕も、なれますかね?」

「リンピールは最弱の街らしいから、大丈夫だと思うよ? まぁ俺は、なんか突っかかってきたらやり返すけどね。もちろんツキのことは守るし、獣人だからできないとか言いだしたらギルドを潰す勢いで暴れてやるよ」


 俺は笑いながら返答した。

 そしてツキは、頰を淡い桃色に染めてモジモジしていた。


 あれ?

 なんか俺変なこと言ったっけ。

 ちょっと、格好つけすぎ……た?



「…………信じてますからね」



 ツキは何かボソッと呟いたが、俺は聞き取れなかった。


「え、なんて言ったの?」

「何も言ってません!」


 ツキはそそくさと野営の準備を始めていた。

 胸のモヤモヤが残ったまま、俺も作業をし始める。

 どうやら今日のご飯はツキが作ってくれるらしい。


 俺の担当は寝床と火の準備だ。

 木を切り倒し火を中心に丸太をベンチのように置く。

 寝床はさっき倒して剥いでおいた恐狼(ダイアウルフ)の毛皮を敷き完成だ。


 即席とはいえ、もふもふな毛皮でかなり寝心地がいい。

 その頃ちょうど食材を取り終わったツキが帰ってきた。


「すごいです、ルキ様。もうできたんですね!」

「まぁ簡易なものだけどね」

「今からご飯作るので、しばらく待っててくださいね」

「うん」


「なんか夫婦みたいですね」

「うん……うん?」


 突然ツキが変なことを言い出した。

 照れているのか、両手で頰を抑えている。

 小さな尻尾もフリフリしていた。


「あのー、ツキ? 一様俺はこんなんでも女だぞ。それに自分で言うのもあれなんだけどさ、まだまだ子供のちんちくりんだし」

「僕も……私もまだちんちくりんですし、愛に性別とか関係ないですよ!」



 ん? おかしい。何かがおかしい。



 俺が首を傾け考えているのを見たツキは、

「冗談ですよぉ。本気にしないでください」

 とか言ってきた。


 まだまだモヤモヤするが、ツキの冗談案が一番しっくりきたからそういうことにする。


 そうこうしている間にご飯ができた。

 手足がある変わったキノコと顔のある山菜のスープとツノの生えた川魚の炭火焼が今日の献立だ。

 不思議な食材たちだが、どれも文句なしの美味しさだ。


「料理うまいんだね。俺なんて焼くか揚げるかの二択なのに」

「家でよくお母さんの手伝いしていたので」


 やっぱツキはいい子だった。

 それに比べて俺は、おばさんに迷惑かけてばっかりだった……。

 ご飯を食べ終えた俺たちは、少し雑談をした後眠りについた。






 翌朝、俺はツキの料理する音で目を覚ました。


「おはようございます、ルキ様!」

「うん、おは……よ……う!?」

 あれ、寝ぼけているのか?

 まだ冷めない目をゴシゴシとこする。


「なぁツキ。お前ちょっと、というかかなり大きくなっているような……」

「まぁ、確かに少し大きくなりましたけど」

「いやいや、え? ……少しじゃないじゃん!」

「言ったじゃないですか。獣人は幼い頃に鍛えると、身体の成長も早まるって」


 いやまぁ確かに言ってたけど……。

 あれだろ、国家騎士団にどうたらこうたらの時の。


 俺とひと回りかふた回りくらいしか変わらなかったツキは、一日で二十センチ程高くなっていた。

 常識的に考えても、一晩で小学生低学年の子がこんなに成長するなんて、早すぎる。

 短かった黒髪は肩下まで伸びており、外見はクール系な美少女になっていた。


「こんなに早いもののか? 早すぎない?」

「確かに早いかもです。でも昨日たくさん戦いましたし、恐狼(ダイアウルフ)に囲まれるくらいのピンチにはなりましたしね」

「いやでも……」


「獣人にとって成長のトリガーは睡眠なんですよ。個体差はあるんですけど、いっぱい訓練して寝るとその分ステータスに反映されるんです。ちなみに、寝る子は育つっていう言葉は私たちが関係しているんですよ」


 個体差で埋まるレベルの話ではないけど、納得するしかない……のか?

 なんかあの幼いツキを見れないというのは、少し悲しいけど。


「そんなことよりも朝ごはんにしましょ!」

「あー、うん。ごめんごめん」


 俺は現実を受け止め、食を進めた。











 [スキル]

   状態異常無効

   斬撃無効

   打撃無効

   精神感応(テレパシー)


 [魔法]

   影の手(シャドウハンド)

   黒炎


 [仲間]

   ルキ・ガリエル

 種族:魔人?

 性別:♀

 属性:火、闇


   ツキ・サーク

 種族:熊耳の獣人

 性別:♀

 属性:風


ツキちゃんはこれから少しずつ、女の子っぽくなる予定です。



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