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リメイクして再投稿中  作者: うるさいアシカ
一章 理想と現実
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05話  一人目の仲間

「僕も連れていってください!」



「…………え?」

 俺は間抜けな声を漏らした。


「僕も一緒に行きます!」

「ちょ、ちょっと待った。何を言っているのかわかっているの? 俺は魔人だし、さっきの戦闘見てなかったのか?」

「はい。僕も世界征服のお手伝いしたいです……。ダメ、ですか?」

「世界征服のお手伝いって……。なんてパワーワードな」


 耳が少し垂れ下がり見るからに声がしぼんでいく。

 俺は老婆の方へ振り向くと、微笑み頭をコクコクと頷いていた。


「連れて行ってやってください。あの子がわがままを言うところなんて、初めて見たもんですから」


 俺は再びツキの方へ振り向く。

 耳を完全にペタッと伏せてしまい、表情も徐々に沈んでいく。


「……一緒に来る?」

 もともと仲間は欲しかったし、獣人なら願ったり叶ったりだと自分に言い聞かせる。


「はい!」

 ツキはみるみる明るくなりニパァっと笑った。


 なんだこの子は、可愛すぎるだろ。

 この笑顔は、守りたい。


 中性的な整った顔立ち、男とは思えない透き通っているきめ細やかな白肌。

 黒髪と同じ色の瞳、俺よりも若干背が高く、プニッとしている頰を少し紅らめさせている。

 やばいなぁ…………。


「じゃあ、これからよろしくねツキ君! 俺の名前はルキ・ガリエルだ」

 俺はツキに握手を求めるかのように手を伸ばした。

 それに応えるかのように両手で俺の手を握り、ブンブンと上下させる。


「はい! よろしくお願いします、ルキ様。僕の名前はツキ・サーク、キリムの娘です」

「おう、そうか。キリムの……」



 ん?



「えーっと、ん? 聞き間違えていたらごめんね。キリムの、娘?」

「はい」

 子供っぽい笑顔を浮かべ、ツキは頷いた。


「母さんと弟まで助けていただき、感謝いっぱいです! ……どうか、なさいましたか」


 俺はポカンとしていた。

 助けたって、あの赤子と母親が? ということは、キリムの奥さんとお子さんで。

 ツキは女の子で……あれ?


「いや、確かにキリムの子ってことには驚いたんだけど。でも、あの双子の子にお兄ちゃんって……」

「はい、ご近所さんなんです。キリムは僕の村の村長でおばば様は長老です。そこにいるチーとルーは、おばば様のひ孫ですよ。薬草を摘みにおばば様たちが村を留守にした時に襲われて……」


 質問の意図に若干そぐわない返答が返ってきた。

 俺は老婆に助けを求めたが、ずっと微笑みながらコクコクしているだけだ。


「俺さっき世界征服とか言ったけど、冒険とか色々するんだよ? ツキのお母さんはいいって言ったの? 死ぬかもしれないんだよ? だいたい、俺のこと怖くないの」

「怖いんなんてとんでもないです。もちろん、覚悟はできていますよ!」


 ツキは目をキラキラさせ俺を見てきた。

 そんな目で見ないで。

 憧れのケモ耳っ娘が目の前に。

 うぅっ、理性が……。


「じゃ、じゃあ行こっか?」

「はい!」


 さっきまで男の子にしか見えなかったのに、なんでこんなにも意識してしまうのだろう。

 すごくモフモフしたい。

 これって俺が変なのか?

「いや、うん。まぁいいか」


 独り言のように呟き、俺とツキは双子と老婆に別れを告げ洞窟を出た。






 元々の目的地のリンピールに向けて、俺たちは旅を再開した。


「ねぇツキ、なんで一緒に来ようと思ったの?」

「おばば様に聞いたんですよ。僕を助けたのはルキ様だって。戦っている姿は怖かったけど、守るって言われて嬉しかったんです。でも、何も言わずにどっか行っちゃうから……」

「そっかぁ……。でも、みんなが怯えていたからなー」

 俺は右手を頭の後ろに回し照れながら返答した。


「でもさ、魔人だよ。怖くなかったの?」

「怖いなんて思いませんよ、ルキ様っ!」


 ツキは俺に抱きついてきた。

 なんかすごい照れる。



「やめ……離せっ……」



 嬉しかったが、いきなりのことで反射的に離せとか言ってしまった。

 くそ、免疫がないから……。

 ツキは軽く謝罪し、少し下を向きながら獣人について語り出した。



「獣人は分類上は人なんですよ。でも、耳や尻尾が獣と一緒だとかで魔物だと恐れられたりしていたんです。そんな時、獣人から王国騎士への入団試験に受かった子が出たんです。みんな誇りに思ったし、感謝もしました。これで僕たち獣人を見る世間体が変わると。そしてその少年はみるみる成長しました。入団時は十歳くらいの歳相応の少年だったのに、強くなるにつれ外見までもが屈強の戦士になっていったんです。そして王国騎士団のエースとまで言われるようになり、国王からの信頼も厚くなっていきました。でもそのことを良しと思っていなかった貴族出の男に裏切られ、罪を着せられてしまったんです。国家反逆罪です。もちろん少年には身に覚えはありませんでしたが、現国王のお父様は実際に殺されています。はめられたんでしょうね。少年の打ち首はもちろんのこと、一国の王が殺されたのです。その罪は種族全て、全ての獣人にも罪を着させられました。あとは想像通りです……」



 ツキは場の空気が重くなっていることに気づき、空気を一転するかのように話し出す。

「でも、でもですよ、もう怖くないですね! ルキ様がいますもん」

 そう言うと再び笑顔で抱きついてきた。


 気を使うようにあははっと笑っていたツキの後ろに手を回し、後頭部を優しく撫でた。

「……だな」


 ツキの目にはみるみる涙が溜まっていき、そして噴きだした。

「うわああああぁぁぁぁん」


 ツキはひたすら泣いた。

 泣き続けた。


 苦しかったのだろう。

 綺麗な顔をぐちゃぐちゃにして涙を流し続けた。

 俺は、獣人はみんな守ると再び心に誓った。




 ツキは一頻り泣き、泣き止んだと思ったら眠っていた。


「俺なんかより、よっぽど苦労したんだろうな……」

 俺は眠ったツキをその場に横にして、もう一度頭を撫でた。


「今日はここで野宿かな」

 今はまだコントロールはできていないけど、魔法を使える。

 ささっと火でも起こしてご飯でも狩ってくるか。


 俺は羽織っていたローブを毛布がわりにツキにかける。

「よしっと、また王猩々(キング・エイプ)でも出てくればいいんだけどな。あいつ美味(うま)かったし」

 手をパンパンとはたき、辺りをキョロキョロと見回した。


 まぁ、そう都合よくはいかないよな。

 角がクリスタルのような輝いてる鹿しかいなかった。

 俺は覚えたての影の手(シャドウハンド)を使い難なく鹿を仕留めた。




「……ん、ここは?」

「お、起きたね。大丈夫か?」

「……ルキ様? あ、大丈夫ですぅ」


 日が暮れ、星空が綺麗な夜になってからツキは目を覚ました。

 目をこすっているツキの姿に俺は頰を緩める。


「……あっ!」


 ツキは俺が調理している肉を見た途端に目の色を変え飛び上がった。

「ご飯!? 肉ーーーーっ!」

 最初ツキは大人っぽい子だなと思っていたが、まだまだ子供だなと思い、小動物でも見るかのように微笑む。


「んんっ……そういえば……んぐんぐっ……この……」

「食べるか喋るかどっちかにして! 何言っているのかわからないぞ」


 そう言うとツキは、でっかい骨つき肉を口いっぱいに詰め込んだ。

 小さな頰がパンパンに膨れ上がる。

 もう見ているだけで癒される。

 口に詰まった肉を飲み込むと、話を続けた。


「このローブってどうしたんですか? あんなに魔法を受けていたのに」

 膝にかかっているローブを持ち上げ、尋ねてきた。


「あぁ、村に来る前にでっかい真っ黒の猿の王猩々(キング・エイプ)って言う魔物に襲われてさ」

 肉を頬張りながら答えるも返事がない。

 目線だけツキの方に向けると口を開け、食べる手を止めていた。


「えっ!?」



 どうやらあの猿はここいらの森を縄張りにしている主のような魔物で、何人もの犠牲者を出していると有名らしい。


「さ、さすがルキ様ですねぇ」


 棒読みだ。

 しかもかなり目が泳いでいる。

 何もない空間を掴み、まるで肉を食べるかのように口をパクパクさせていた。


 どうやら王猩々(キング・エイプ)は、魔物にも関わらず魔人の集団も(ほふ)ったとの噂もあるらしい。

 まぁ、俺も一回屠られているけど……。


 俺は偽るのはやめて、ツキに本当のことを言った。

 もちろん異世界から来たことも。


 ツキは先程までの態度とは一変し、終始目をキラキラさせていた。

 今日だけでこの顔を何回見ただろうか。

 ツキにとって俺の話はワクワクの詰まった冒険もののような物語なのだろう。


「ルキ様ルキ様! 面白かったですよ。王都でそ、その裸とかよく思いつきましたね。でも、僕を子供だと思ってからかわないでくださいね。いくらなんでも、作り話だってことくらい気づきますよ!」


 やっぱり信じてもらえないかぁ。

 あれ、なんだろう。

 なんかすごく寂しい。




 しばらくたって、ツキは再び眠りについた。


 俺にも仲間ができた。

 憧れのケモ耳っ娘のツキ。


「これからよろしくね」

 寝ているツキの頭を撫でながら俺はボソッと呟いた。


 そういえばこいつの服、ボロボロだな。

 俺はこっちに来てから二度目の服作りを始めた。

 と言ってもこの鹿しか素材はない為、似たようなローブを作ることにした。


 頭部の部分がちょうどフードになるようにして、前脚の皮で首元を固定した。

 最後に装飾でクリスタルの角を砕き、満遍(まんべん)なく散らした。

 そしてツキの服を作り終えた俺も、隣で眠りについた。






 翌朝、ツキは俺が作ったローブを大喜びで受け取った。

 前足をスカーフのように首元で結び、フードを被る。


「ありがとうございます、ルキ様!」


 ぴょんぴょんと飛び跳ねるその愛くるしさに俺は見入っていた。

 やっぱり、着るよりも着せる側だな俺。


「どうですか?」

 くるっと回転をし、首を傾けてこちらを見ている。


 うん、可愛い。

 可愛いんだけど、そんな一言で終わらせていいのか?

 それは否だ。

 もっとしっかりと表現すべきだな。


「んーー! 似合っていないんですか?」

「あ、うん。可愛い可愛い」

 頰を膨らませ不満のありそうなツキに、俺は反射的に対応してしまった。


「なんか適当ですね、まぁいいですけど……」

 あれ、なんか言葉遣いちょっとゆるくなった?


「適当じゃないって! 可愛いの一言、そんな凡庸(ぼんよう)な言葉じゃ済ませちゃダメかなって……」

「……」

「ごめ、ごめんなさい。謝るから……無視しないで」


 ツキは俺の謝罪には耳を貸さず、もらったローブをじっくりと見ていた。



「それにしても、また貴重な魔物を倒しましたね。この鹿の角はとても高く取引されているんですよ?」

「そ、そうなんだ。でも俺は魔人だし、多分街に行っても換金なんてできないしさ……」

「僕たちもですよ。できないことはないですけど、相場の半額以下ですね」


 この世界は魔人とか関係なく亜人(デミ・ヒューマン)に厳しくないか?

 どうせ王道のエルフとドワーフは別なんだろうけど。


「あ、そういえばツキって戦闘経験とかってあったりするの?」

 俺は冒険するにあたって、逃れることのできない戦闘についてツキに尋ねた。


「ないですよ。村長の子、しかも女の子だからって禁止されていたんです。だから僕は、男の子っぽく振る舞うようになったんですよ」

 あー、なるほどね。

 だから僕っ子なのか。


「どんな武器使いたいとか、適正属性とかってわかる?」

「んーっとですね、武器とかはまだよくわからないんですけど、属性ならわかりますよ。風です!」

 顎に人差し指を置き、思い出すかのように述べた。


「風かぁ……。どのくらいできる?」

「全然できないです。まだFクラスのコントロールもできていません。だから、ルキ様に任せますよ」

「完全に俺のイメージで戦闘スタイル決めてもいいの?」

「はい! ルキ様が決めてくれた方が頑張れますし」

「そっか……」

 完全に偏見だが、熊の獣人は武器なんて使わずに、拳と蹴りだけで戦っているイメージがある。



「武闘家みたいな感じはどう?」

「ぶとうか? なんですかそれ」

「簡単に言うと、自分の体を武器にするんだよ。手だったり足だったりね」

 ツキは即決だった。




 俺は地球にいた頃、我流の近接格闘術(CQC)を考案しては良太に見せびらかしていた。

「お前いつそんなの使うんだよ」

「そ、そんなのとは失礼な! いつどこから狙われているかわからないんだぞ」

「またか……。誰にだよ、と言うかいい加減中二病卒業したら?」

「卒業? 馬鹿言うなよ。俺が卒業するときは死ぬ時だ!」




 そんなたわいもない会話を思い出した。

 まさか、本当に近接格闘術(CQC)が必要になるとはな。

 良太もビックリだろうな。


 俺は物理的に不可能な動き、しかし魔法を行使すればできるかもしれない近接格闘術(CQC)を一通り教えた。


「まぁ、結局は自分に合った戦い方でいいからね」

 あまりピンときていないツキに伝え、俺たちはリンピールに向けて歩き始めた。











 [スキル]

   状態異常無効

   斬撃無効

   打撃無効

   精神感応(テレパシー)


 [魔法]

   影の手(シャドウハンド)

   黒炎


 [仲間]

   ルキ・ガリエル

 種族:魔人?

 性別:♀

 属性:火、闇


   ツキ・サーク

 種族:熊耳の獣人

 性別:♀

 属性:風


ボクっ娘ツキちゃん、ここに誕生しました。


次回は新章です

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