98話 個性
魔王の間の大きな扉はゆっくりと、重い音を立てながら魔王の力で開いた。
俺たちは魔王の後をついて行くよくにして外に出る。
緑黄色に光る月の周囲は若干、緑色に色付いた満点の星空が広がる夜空。
屋根がないのに周囲を囲む大きく太い円柱。
どこか、パルテノン神殿のような雰囲気が扉の外にはあった。
そしてその空間の中心部には、真っ白なテーブルクロスで着飾れた大きな長机が鎮座していた。
そのテーブルの手前で立ち並ぶ数人の人影。
その中の一人、小柄な女の子が両手を頭の後ろに組むような姿勢で口を開く。
「やっと来たねー」
「来ちゃったよー来ちゃったよー、アハハッ」
チョーカーをつけた二人の子供。
そのうちの一人が俺に絡みついたまま固まっているレヴィーラを指差し、
「あれぇ、レヴィーラ何してるの?」
「魔王さんに叱られたんじゃない」
「また何かしたの? そろそろ学びなよー」
「ガキ共、少しは黙ってろ」
二人を仲裁に入る魔人が出る。
多頭種なのか二つの蛇のように伸びた顔、対照的にゴツゴツした体に先端が三叉に分かれている尻尾、低くかっこいい声の魔人が見下すようにふたりを見ていた。
それに対して、
「えっ、僕たちガキじゃないよね、お姉ちゃん」
「そうだそうだ、私たちはガキじゃないぞー!」
と、明らかに子供みたいな見た目で反論した。
っていうか、やっぱり姉弟だったのか。
似過ぎだし、納得はいくが……。
俺はもう一方の魔人を見た。
「……黙れ」
多頭種のイケボ魔人は面倒臭そうな表情で、頭を抱えていた。
そんなことは気にもせず、煽るようにニマニマしながら二人は続ける。
「僕79歳」
「私も79歳。あれぇ、りっすんって何歳だっけ?」
「次”りっすん”って言ったらお前らを殺す」
「きゃー」
「こわいねーお姉ちゃん」
「で、何歳なのぉ?」
「ッ……」
”りっすん”と呼ばれた魔人は悔しそうに歯軋りをした。
年下だったのか……。
力関係どうなってるんだか。
俺は少し、りっすんに情が湧いた。
でも、そんなことより……。
「お前……たち…………静かに……しろ」
「はーい」
「お姉ちゃん素直だねー」
「そうでしょー、アハハッ」
「うん、アハハッ」
俺は久しぶりに再開した脳食いのオルガーを視界に入れた。
相変わらず、不気味なタコ頭。
怒っているのか、その頭が激しく色や模様を変えている。
「すまない、オルガー殿」
「どうでも……いい。魔王……様の……前だ」
最後に会った時、オルガーは普通に喋っていたが今はものすごくスローペースだった。
俺がオルガーに疑心と警戒な視線を送っていると、
「お前ら、俺の愛孫が来たと言うのにいつまで喋っているつもりだ」
魔王が眉間にシワを寄せ怒鳴った。
その声には魔王にふさわしい迫力があり、内臓が声の振動で震えた。
「申し訳……ござい……ません」
「オルガー、隠しているつもりらしいがお前が普通に話せることは知っている。普通に喋れ」
「……すいませんでした。無礼を詫びます」
オルガーは持っていた杖を地面に倒し、深く頭を下げた。
続けて魔王はチョーカーをつけた子供たちを見る。
「ケニー、クーナ」
「なんですか、魔王さん」
「なーに?」
オルガーとは対照的に、軽く返事をする二人。
しかし、魔王はそのことではなく、
「年の話はやめろ。そもそも、お前たちアンデッドに年齢という概念はないだろ」
「えー」
「だってガキじゃないもん」
「いいからやめろ」
「「はーい」」
二人はふに落ちない感じの返事をした。
これが、魔王軍幹部。
俺の仲間たちと引けを取らないレベルで変人が多いな……。
そんなことを思いながら、俺はすぐ後ろに立っているブティーと寝ている仲間たちを見た。
そして思った。
それはないか、と。
「それじゃ、こっちにきなさい」
「あっ、はい……」
魔王は、さっきまでの表情が嘘だったみたいに微笑み俺を手招いた。
そして、
「騒がしくして悪かったな」
「いや別に……」
また謝罪した。
ここに来るまで完全に忘れていたけど、オルガーってそういえば魔王軍だった。
なんとなくだけど、俺を見ている気がする。
会いたくないし、こいつがやったことは許せない。
けど……。
怖い。
怖いんだけど!
あの時はなんともなかったのに、なんで?
何をするわけでもなく、何を言うわけでもなく、ただ俺をじっと見ているのはなんで。
俺は無言の圧力というのを肌身で感じた。
「お前たち、席につけ」
魔王は上座に座ると、幹部たちに指示を出した。
幹部らはそれに従い、長机の反対側へと回り腰を下ろす。
「ルキちゃんも座っていいぞ」
「あっ、はい」
俺たちは幹部たちと向かい合うようにして座る。
と言っても、座れるのは俺とブティーだけだ。
他の寝ているやつはブティーの眷属が姿を変えたベッドに横にした。
ところで、八人って言っていたのに八人いないのはどういうことなんだろう……。
[スキル]
状態異常無効
斬撃無効
打撃無効
精神感応
超速再生
暗視
[魔法]
影の手
黒炎
アキュエラー
フリーズ
回復
サモン
[仲間] ※公開可能情報
ルキ・ガリエル
種族:魔人?
性別:♀
属性:火、闇
ツキ・サーク
種族:熊耳の獣人
性別:♀
属性:風
ゴー
種族:ゴブリン (アルビノ)
性別:♂
属性:???
カメ吉
種族:幻神獣 (ユグドラシル)
性別:両性
属性:???
ブティール・メイデン
種族:真・吸血鬼
性別:♀
属性:闇
ディール・クミルドフ
種族:悪魔
性別:無性
属性:闇・無
サーガラ
種族:龍人
性別:♀
属性:???