表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/101

97話  緑黄色の月とエレベーター

「あ、あの、魔王(おじいちゃん)?」

「ん、なんだい?」

「あのさ、今どこに行こうとしているの?」

 俺は魔王(おじいちゃん)のマントをクイクイッと引っ張りながら尋ねた。


「あぁ、言い忘れていたな。よく聞きなさいルキちゃん。俺はルキちゃんの仲間を確かめると言ったな?」

「うん」

「しかしだな、それだけが目的ではない。俺の部下、今後ルキちゃんに尽くすかもしれない八人の幹部らと親睦(しんぼく)を深めてもらいたいんだ」

「う、うん」

「今向かっているのは、その親睦を深めるための会場だ」


 そう言うと魔王(おじいちゃん)は進行方向である上へと向き直った。

 魔王はソワソワしているような、落ち着きのない様子で顔の筋肉を少し緩め笑みを漏らした。




「……ねぇ、ブティー」

「なんじゃ?」


 俺は後ろへ振り返り、ブティーを視界に入れた。

 しかし、その視線は瞬時にブティーの後方にいる眷属(けんぞく)たちに向けられた。


 俺の目に映った眷属たちは必死な形相でフラフラと上下に飛びながら、ディールを持ち上げている。

 そんな眷属たちを見ながら、俺は薄々思っていたことを口にした。


「眷属に運搬は不向きじゃない?」

「そ、そうかの?」


 うん、そうだと思う。

 前々から思っていたし、実際乗ってみた経験も含めて思うけど。

 見ていてかわいそうになるよ。

 眷属、ブティーの影から現れているコウモリたちは息を切らしながら、自分の何倍もある石化したディールを持ち上げているのだ。


「……お、俺がやっぱり持つよ」

「大丈夫じゃぞ、妾に任せるのじゃ」

「いや、任せるって……。持っているのは眷属たちじゃ」

「眷属は妾の影じゃ、すなわち妾が持っておるのじゃよ?」

 そう言い切るブティーを横目に、俺は再び眷属たちを見た。



「「ハァッ、ハァッ、ハァッ」」



 つぶらな瞳で辛そうにディールを持ち運ぶ眷属。

 その小さな口から、小刻みに小さく呼吸の乱れが漏れていた。


「やっぱり……」

「ルキよ! 妾を信じられないのか?」

 ブティーは眷属たちを手で差しながら、俺の目をまっすぐ見ていた。


 しかし、

「いや、そう言うことじゃないんだけどさ」

 俺は、そのブティーが差していた眷属たちをゆっくりと指差す。


「妾が大丈夫と言えば大丈夫なのじゃ」

「そ、そういうもんなの?」

「うむ、そういうもんなのじゃ」


 ブティーは腕を組み、俺が納得したと勘違いしたのかコクコクと首を上下させた。

 するとブティーは何かを思い出したかのように手を打ち、俺に話しかけた。


「そう言えば、何が聞きたかったのじゃ?」

「あぁ、うん。魔王(おじいちゃん)は親睦を深めるって言っていたじゃん?」

「そうじゃな」


「無理くね?」

 俺は真顔で言った。

 周囲で寝ているツキたち、固まったディールとレヴィーラを見るまでもなく言った。


 すると、

「ルキよ……」

 ブティーは俺に『何を今更』みたいな呆れた視線を向け、小さく嘆息した。


 当のブティーは、早い段階で気づいていたのだろうか。

 そう言えば、ブティーからの反論や意見なんてしばらく聞いていなかったような気も……。


 ブティーはチラッと魔王(おじいちゃん)の様子を伺った後、俺を小さくて招いた。

 そして、耳元に口を近づけ、

「ルキ、心してかかるのじゃよ?」

「……何を?」



「ルキちゃん、もう着くぞ」



「えっ、あ、はい!」

 俺は急に声をかけられ、急いで振り向いた。


 別にやましいことも、悪いこともしてはいない。

 しかし、鼓膜に早まる鼓動の音が響くのを感じた。

 俺は一つ深呼吸をして、魔王(おじいちゃん)の横に立った。


 いつの間にか天井が開閉されており、上方から差し込む月明かりが目に入る。

 しかし、今宵(こよい)の月明かりはいつもとは少し違っていた。

 夜空にあったのは馴染みのある青白い月ではなく、緑黄色に近い蛍光色の月だった。


「お、魔王(おじいちゃん)。なんで月が緑色なの?」

「ん? 何を聞いているんだ? あの月は元から緑色だぞ?」

「……へー」

 緑色の月? 『あの月』ってことは、まだ他にも月はあるのだろうか?

 どっちにしろ、頭上にある月は正直不気味だった。



 ガチャンッ



 魔王の間の上昇が終わったのか、地震のような揺れがおさまった。

「準備はいいな?」

「うん」

 魔王(おじいちゃん)は俺の頭に一度ポンっと手を乗っけると、そのまま大きな扉の方に体を向けた。


「ブティール」

「……な、なんじゃ」

「お前のことをまだ信じたわけではない。俺の愛孫ルキちゃんにもし危害を加えようものなら、ただじゃ済まさんからな」

「主と違ってルキは妾の仲間じゃ」

「フッ……」


 俺はそんな会話を後ろから聞いていた。

 ブティーが仲間だと言ってくれたことに対して、頰が若干色付く。




「では、始めようか。親睦会(パーティー)を!」


 魔王(おじいちゃん)は片手を扉の前に突き出し、何かを詠唱し始めた。

 すると同時に、大きな扉は重い音を立てながらゆっくりと開いた。












 [スキル]

   状態異常無効

   斬撃無効

   打撃無効

   精神感応(テレパシー)

   超速再生

   暗視


 [魔法]

   影の手(シャドウハンド)

   黒炎

   アキュエラー

   フリーズ

   回復(ヒール)

   サモン


 [仲間] ※公開可能情報

   ルキ・ガリエル

 種族:魔人?

 性別:♀

 属性:火、闇


   ツキ・サーク

 種族:熊耳の獣人

 性別:♀

 属性:風


   ゴー

 種族:ゴブリン (アルビノ)

 性別:♂

 属性:???


   カメ吉

 種族:幻神獣 (ユグドラシル)

 性別:両性

 属性:???


   ブティール・メイデン

 種族:真・(トゥルー・)吸血鬼(ヴァンパイア)

 性別:♀

 属性:闇


   ディール・クミルドフ

 種族:悪魔

 性別:無性

 属性:闇・無


   サーガラ

 種族:龍人(ドラゴニュート)

 性別:♀

 属性:???

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう勝手にランキング
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ