6・貴族の義務からは逃げれなかった
次男だから貴族の義務は無いだろうと思っていた時期がありました。
誰だよ、次男は楽だとか言った奴は…、僕じゃないかっ!!
「ハイ、背中を丸めない! ハイ、顎を引いてそこでターン!」
「……………」
「ハイ、顔此方に! ハイ、腕が下がっています! ハイ、また背筋が丸まってますよ! ハイ、ハイ、ハイ!!」
「…………………っ!」
何をしているかだって? ダンスの練習ですよ。
足がつりそう。
6歳になった僕は父様から「そろそろ良いだろう」と言われ、ダンスの練習と剣術、馬術を習い始めていた。
剣術は楽しい、剣を持つのって男の夢だよね。 馬も格好良いよね、乗るの楽しいしロマンだよね。
だけどダンスは…、音感が無いのかコツが掴めずにいた。
そろそろ背筋もつりそうになってきた。
「ハイ、今日は此処までです。 アイザック様お疲れ様です。」
「はぁ、はぁ、………ふ~!」
終わったー。 生まれたての小鹿の様に両足がガクガクプルプルしてる。
「アディー兄様、お疲れ様ー。」
ナターシャがトテトテと濡れタオルを持ってきてくれた。
受けとると誉めて貰いたそうにフニャッと笑う。
我が妹天使!!
「有り難うナターシャ、ナターシャの顔を見たらお兄ちゃん元気出たよ」
「うんっ!」
ナターシャの頭をクリクリと撫でると満足そうに再び笑う。
そんな兄妹のやり取りを見ていたダンスの先生がパンッ、と手を叩く。
「アイザック様、元気が戻られたのでしたら最後にもう一回通しで踊ってみましょうか?」
先生は笑顔で鬼の様な事を言った。
まだ足がプルプルしてるんですが…、踊るの?
「アディー兄様、頑張って下さい!」
ふっ、ナターシャに応援されたら頑張らない訳にはいかない。
口は災いの元、地球の昔の人は上手い事を言ったものだ。