5・初めて見る魔法
夕食を久しぶりの家族全員で食べる。
たっぷり野菜の羊のシチューにパン、サラダ、デザートにカットフルーツ。
早く食べて魔法を見せてもらいたい。
パクパクと口に入れるも5歳児、入る量は限られてるので咀嚼が出来ずに暫くモグモグして手が止まる。
羊肉め、この、この!
噛みきれん…顎の力弱ぇー。
「アディー、もっとゆっくり食べなさい」
小動物の様に頬をパンパンにさせてたら母様に注意された。
ちょっと頬張り過ぎた、自分でも反省。
ングングして苦しいのでヤギのミルクで流し込む。
あ…、胃に負担が…。
またしても羊肉が…、胃にズドンと来た。
羊ー、羊肉めー!!
薬が貴重なこの世界で早食いで胃が痛いから胃薬下さいなんて言えないし簡単には貰えない。
医者が先に来て寝ろや休めの大騒ぎになる。
うん、ゆっくり食べよう、早食い駄目、絶対。
「母様、食後にあに…兄様の魔法を見せて頂きたいのですが良いですか?」
「ナターシャも、ナターシャも見たい!!」
ヤバイまた兄貴って言いそうになった。
慣れないなぁー、様呼び。
取り敢えず笑って誤魔化しておこう。
「アディーは本当に魔法が好きなのね、少しだけなら良いわよ。
ねぇ、あなた」
「そうだな、いずれアディーも学園に入るのだし、何処の学科を選んでも良いのだが…そろそろ魔法適性を見ておくのも良いかもかもしれないな」
おお、話がいい方向に転んだぞ、魔法適性をついに見てもらえるのか!
神様から貰ったから適性はバッチリクリアだ!
多分、きっと大丈夫なはず。 ステータス見れないしまだチートのチの字程の出来事も無いけどね、信じてます神様!
「御馳走様です、母様、父様、兄様、魔法見せて下さい!」
「落ち着きなさいアディー、ちゃんと後で見せて上げるから待ちなさい。
ほらミルクがまだ残っているわよ」
頑張って食べた、これでもかって位噛んで頑張った。
だが残念、みんなはまだ食べている。
頑張り損だ、しょぼーん。
「では、ロキシュに魔法を見せて貰おうか?」
庭に面したサロンでナターシャを膝に乗せた父様が言う。
やった、魔法だ! 初魔法!
略してひゃっほう!
いや、うん。 “ほう”しかかってません、略せてもいません。
テンション上がり過ぎだ俺、落ち着け俺。
「では、初級の水魔法を行きます」
兄が手のひらを上にして目を閉じる。
集中してるんだろうな。
兄の手のひらの上、10cm位の位置に30cm位の水の球が現れる。
水の球はくるくると渦巻きながら留まっている。
うわー、スゲー何もない所から水球出たよ!
これが魔法かー!
「兄様凄い、凄い!」
「すごいー!」
いや、凄いしか出ない。
ナターシャも凄いとはしゃいでるし!
見ただけじゃ魔力の流れとか仕組みとか解らないし!
えあー、チートどこ行った?
ラノベならこれで魔法の仕組み簡単に解って直ぐに真似できるとかじゃないの?