2・妥協という名の転生
何もない空間に老人のような、女性のような、男性のような、あどけない子供のような多方向から聞こえる不思議な声。
神様に性別とかないのかもしれない、ふとそんな風に思う。
もしかしたら音ですらなく心に直接響いてるのかもしれない言葉。
「此方の管理不行き届きで召喚されてしまった貴方を神域にお連れしたのは、実は転生をお勧めしてみようと思いまして…、流石に無責任に魔方陣には送れませんでした。
地球の神からも色々と頂いてるのでお渡ししたい加護も御座いますし…」
「転生? 転生、出来るんですか?」
「はい、私からも少しばかり加護をお贈りしたいと思います、珍しいスキルも出来るだけ頑張らせていただきます。
いかがでしょうか?」
「喜んでーー!!喜んで頂きます!」
やったー、チートキターーー!!
待ち望んだ声に小躍りしてしまった、恥ずかしい。
今の俺、お爺ちゃんだよ?
飛び跳ねてガッツポーズとかしてたよ。
「ふっふっふっ、出自とか容姿とか性別とか選べるんですか?
魔法も使えますよね?」
「容姿は無理ですね、あれは両親から受け継ぐ血の不確定要素が入るので…、性別も今の貴方が男性ですので女性で転生ですと肉体とズレがあるかと思います。
ある程度出自は選べます。
魔法も使えます、何を望みますか?
精神に根付いたエレメンタル魔法、肉体に根付いた強化や生活魔法、魂に根付いた固有魔法とあります。
私や地球の神から与えられるの加護は別口ですね」
別口って何かのセールスみたいな勧め方だなぁ~。
性別、容姿は確かに無理かぁ~、魔法っ子美少女とか、彫りの深い異世界美男子に憧れたんだけどなぁ、残念だ。
魔法は何にしようかな?
「属性魔法で全属性持ちって可能ですか?」
「火、水、風、土、光、闇、空間のエレメンタル魔法となりますが可能ですよ。
ただ、火と水、風と土、光と闇など反発し合う魔法は覚えるのに少し時間がかかると思います
肉体魔法は魔法適性のない方でも生活に使うぐらいは使用できるようになっています」
「お願いします!!」
他に何かないかなぁ~、ラノベでは散々読んだのに、いざ当事者になると何も浮かばないもんなんだな。
顎に手を当ててウロウロ歩き回る。
「転生するにはまだ貴方の存在が此方の世界に馴染んでいないのでゆっくり決めて頂いて大丈夫です」
「有り難う御座います、そうさせて頂きます!」
期待一杯、目を輝かせた少年の心を持ったお爺ちゃんはくしゃりと笑った。
自分じゃ自覚ないけどシワ一杯。