1・転移で既に詰んでいる。
自室で寝てたはずだが目が覚めれば白く霞みかかった何もない空間にいた。
多分、仰向けで倒れてた?
「なんだ、これ」
天地が解らないが浮遊感はなく、夢かと思おうとしても意識はハッキリとある。
試しに手をニギニギしてみる、うん、動く。
「知らない天井…とか言えたらアニメみたいなのにな」
これはアレか? ラノベとかでいう今流行りの異世界召喚?
いや、何処かのお城の魔方陣とかじゃないから異世界転移か?
神様が出てきてチートな能力とか付与されるのだろうか?
ワクテカが止まらない。
「あの……」
キターーーー!! 何もない空間に知らない声!
神様だよね、神様決定!!
掛けられた声に被さる様に心がはねた。
「誠に申し訳ありません、貴方は地球と言う世界から、私の管理するスティラと言う世界に召喚されて来ました所を干渉して神域に留まっていただいています」
これはチートだよな、チートの予感だよな?
召喚されたなら勇者なのか?
魔王と戦っちゃったりするのかな?
美人なお姫様が惚れてくれたりとか……、くぅー、興奮が止まらねぇ!
「あの、大変喜んでいるところで申し上げにくいのですが…、地球とスティラの時間軸が違いまして、魔方陣が起動してスティラに来た時点でお年が+50かかってしまって…」
「えっ?」
今、何て言ったの神様。
聞き間違いだと嬉しいなぁ…。
「肉体年齢、魂年齢共に67歳になってしまっているんです」
「えっ??」
「えーーー、じゃあ何か、今の俺って少年の心を持ったお爺ちゃん?」
ちょっ、想像するとイタイんですがっ!
なんで年取っちゃってるのよ?
普通若いままでしょ?
「あ、でも召喚した国があるのですよね?
俺の力が必要なのですよね?」
「……………………」
おっと、神様が沈黙してしまったぞ。
どゆこと?
説明プリーズ?
「スティラは魔法等で栄えた世界でして種族の多さも関係しているのですが、マナが多くて魔力溜まりもある分、地球より時間処理が遅いのです。
其方の世界の言葉で言うならば付加が多いのでOSの処理速度が遅い?」
微妙な例えで神様は説明してくれる
「ですので異世界召喚の魔方陣は全て廃棄したはずなのですが、偶然古代遺跡から発掘されて起動してしまいまして…」
「えっ??必要で呼ばれた訳でもないの?」
うそーん。
偶然、偶然とおっしゃいましたかこの神様。
さて、目的もなく、巻き込まれ召喚で67歳になってしまった少年の心を持ったお爺さんに何が出来ようか?
もしもチートもらえても活かせる自信がないよ。
恋愛もまだなのに賢者とか?
無理無理無理、地球に返して貰ったほうが良さそうだ。
「元の世界に帰ることってできます?」
「なんとも言えませんが元の世界に戻ったとしても+60年は加算されるかもしれません」
詰んだ、何これムリゲー?
使命も無い、若さもない、家に帰れば127歳、どうしろっていうのさ…。