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変人との共同作業

 隣の赤岸に違和感を覚える中、周りのクラスメイト達は次々正解に辿り着いて着席していく。


 俺は行き詰まっていた。

 教科書を見てもわからないし、仲のいい友達もそんなにいないから聞くこともできない。

 隣の人もあれ以降ぼーっとしてるだけだし。


 はぁ、どうしたものか。

 こうしている間にもあれよかれよと皆座っていく。

 残り立っているのはほんの数ペアだけだ。

 仕方ない。

 運にかけるしかないな。

 まぁ俺の出席番号は四番で、今日は十日だし大丈夫だろう。

 当てられることはなさそうだ。

 しかし、そんなことを思っていると、


「よし、じゃあ今日は六月十日だな。十引く六で四番だ! 海瀬、お前のペアが発表しろ」

「えぇ……」


 なんでだよ。

 なんでそんな回りくどい計算したんだよ。

 単純に十日だから十番でよかったじゃん。

 万事休す。

 もうどうしようもなくなった。

 隣の赤岸だって頼れないし……


「さぁ、行こっか」

「は?」

「当てられたから書きに行こうよ」

「は?」


 赤岸は当然のように俺を促す。

 しかし、俺は頭が追いつかない。

 だってこの人、さっきまでぼーっとしてたよね?


「え、でもわからないから」

「いやいや、わかるよ」

「は? お前寝てたじゃん」

「いや、寝ててもわかるよこのくらい」


 赤岸はそう言うと、威張って言った。


「私前回のテスト。学年三位でした」

「はぁ!?」


 嘘だ……

 あんなに毎日寝てるのに、それで学年三位だと?


「ははは、嘘つくなよ。そんなジョークに俺は騙されないよ?」

「ジョークじゃないよん。ちなみに生物は九十八点だったんだよぉん☆」


 九十八点って、俺の点数の三倍……いや、よしておこう。

 これ以上考えると心が折れそうだ。

 毎日授業を真面目に受けて、テスト前にはそこそこに勉強している俺より、赤岸の方が成績がいいなんて受け入れられない。


「教えてあげるから大船に乗ったつもりでドーンと構えといてよ」

「お、おう」


 なんだ。

 頼りになるじゃないか。

 ただの頭のおかしい奴かと思ってたわ。

 ごめんな赤岸。

 見直したよ。


 そして俺たちは黒板前に立つ。


「よし、じゃあ教えてくれ」


 しかし、俺がそう言うと、赤岸は目をまん丸に見開いた。


「え、なんの話?」

「ぶん殴るぞ」


 初めて女を殴りたいと思った。


「えー、怖い人話しかけないで〜」

「そういう茶番はいらないから!」

「きゃっ! 怒鳴ったら怖いよぅ」

「急に可愛こぶるんじゃねえ!」

「ふぇぇん」


 なんだこいつ。

 心底面倒くせえ!

 話が進まんし、クラスの注目浴びてる中で変なことするのは本当に勘弁してほしい。


「お願いします赤岸さん。どうか俺に答えを教えてください」

「急に下手に出てきたねー」


 仕方ない。

 ここで意地張ってる場合じゃないんだ。

 ただでさえ青波の件で目をつけられてんのに、これ以上存在感を発揮したくない。

 だが赤岸はヘラヘラ笑う。


「へい兄ちゃん! 教えて欲しかったら金のありかを吐くんだ」


 なんだか、赤岸が急によく分からないチンピラキャラに変身したが、とりあえずここはノっておこう。


「お、俺のバッグの中の財布に五千円入ってる」

「足りないねぇ。息子を返して欲しかったら、もう一万は寄こしやがれ!」


 む、息子? なんの話だ。

 でももういいや。

 どうにでもなれ。

 最優先はこいつの機嫌をとって、答えを教えてもらうことだ。


「じ、実はロッカーの中に予備で一万円入ってるぞ!」

「そうか! そりゃあいいな。貴様のような薄汚い庶民の金なんざたかりたくねぇが、許してやらぁ」

「おい、薄汚い庶民ってなんだ」


 やっぱりダメだ。

 これ以上は付き合えん。

 クラス中の視線が怖い。

 というか、何故か青波からの視線がやけに鋭いんだが。


「早くしてくれるかね? 授業中なんだから」

「す、すみません」


 とうとう先生にまで注意される。

 すると赤岸は満足したように、


「えと、動物の方が簡単だから、そっち書いてねー」

「お、おう?」

「えーっと、ミトコンドリアは……」

「急に素に戻るのやめてくれよ」



 ---



 俺はあれから、なんとかまともになった赤岸のおかげで解答することができた。

 そして、無事に授業を終えたのだが。


「うーん、なんか俺。最近柄にもないことばっかしてる気がするんだけど……」


 ぽつり、独り言を呟いた。

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