はじまりの日のこと(柊木あずさ 編 ①)
「痛ったぁ。」
目覚めると同時に、頭に響く鈍い痛みに声を上げてしまった。
何なの、この痛みは。不条理な痛みに不快感も覚えたが、しばらくすると痛みも引いてきたので、ようやくベッドから起き上がることにした。
というか、いつの間にか寝てしまっていたのか。
その前の記憶がおぼろげだ。
確か、私が訪ねてきたって「高梨優稀」の妹に言われて、外に出ようと思ったら急に頭が痛くなってきて。
その後はあんまり覚えてないや。多分そこで気絶したのかな。
そんな風に色々と考える余裕が出てきたところで、ようやく違和感に気づいた。
ここ、どこ!?
えっ・・・病院?
白を基調とした天井や壁、白いベッドに、ベッドを囲むレースのカーテン。
どう見ても病院のそれだ。
何で私、病院にいるの?どこか体が・・・!?
戻ってる!?元の体に戻ってる!「高梨優稀」じゃなくなってる!
どういうこと!?えっ?最初から夢だったのかな?
・・・今、何日の何時なんだろ?スマホは・・・無いか。
誰か話せる人いないかな?
周りの人は寝ているようだったし、病室で他の人に声を掛けるのもアレだったので、ナースコールを押して、看護士さんを呼ぶことにした。
「柊木さん、気づかれましたか?先生呼んできますので、ちょっと待っててくださいね。」
「あの!!」
「どうされました?」
「今、いつですか?」
「えっ・・・?」
「今、何日の何時ですか?」
「今は2月10日の21時を過ぎたところです。まだ柊木さんが運ばれてきてから6時間ぐらいしか経ってないから安心してね。」
そう言うと、看護士さんは病室から出て行った。
2月10日の21時、私が運ばれてから6時間ぐらいってことはここに来たのは15時くらいってことか。
私の記憶の最後ぐらいの時間と一緒だけど・・・その時はまだ私、「高梨優稀」の体の時だったはず。
それを考えると、そのタイミングで体が元に戻ったのかもしれない。
でも、やっぱりただの夢って可能性も無くはない。
あぁ、早くお母さんに会って今日のこと話したい。
看護士さん、お母さんに連絡してくれたんだろうか。それとも、今日はさすがに来ないかな。
薄暗い光の中、特になにをすることもないので、ただじっと待っていると、病室のドアが開いてさっきの看護士さんが先生を連れて入ってきた。
「柊木さん、気分はどう?どこか痛いところとかない?」
「目覚めた時は頭が痛かったけど、今は大丈夫です。」
「自分の名前と年齢は言える?」
「柊木あずさ、15歳です。」
「今日は何日か分かる?」
「あっ、さっき看護士さんに聞いたので。2月10日です。」
「そうだったんだ。でもちゃんと日にちを意識出来てるってことだね。」
「あの・・・お母さんに連絡は?」
「ご家族の方には一応目覚めたこと連絡していますが、今日はもう遅いので明日朝来てもらうよう伝えてます。なので、今日一日は入院してもらって、明日問題無いようだったら、退院ということにしましょう。」
「そうですか・・・分かりました。」
「何かあったら、遠慮なくナースコール押してくださいね。」
「はい、ありがとうございます。」
そう言うと、先生と看護士さんは病室から出て行った。
確かめたいこといっぱいあるけど、今日はもうどうしようもないかぁ。
誠秀の受験、どうしたんだろ?行ったのかな?記憶に無いけど。
何でよりによってこんな大事な日に訳分かんないことになってんだろ。
神様、お願い。無意識でも何でもいいからちゃんと受験してることにしててください。
結局、その日は朝方近くまで寝ることは出来なかった。




